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スライムを狩る仕事です。  作者: 紅花翁草


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◆鹿屋玲子モノローグ◆


ホテルに帰った夜。静かになった部屋のベッドで――


 胸の奥が、まだ落ち着かなかった。


(……やばかった)


 彰斗の家。

 家族。

 妹さんの、あのまっすぐな目。


(面接って……なによ、それ)


 思い出すだけで、顔が熱くなる。


 勢いで来た。

 本当に、それだけだった。


 プリン作りも。

 お邪魔します、って言った時も。

 全部、気付いたらそこに居ただけで。


(なのに)


 “家族”の空気は、思っていたよりずっと柔らかくて。

 優しくて。

 逃げ場が、なかった。


 ――逃げ場、なんて。


 私は、何から逃げようとしてたんだろう。


(好き、なんだよね)


 最初から。


 強いところでもなくて。

 魔眼でもなくて。

 ハンターとして凄いから、でもない。


 ちゃんと話を聞いてくれる。

 変に距離を詰めない。

 でも、必要な時は、必ず前に出る。


(……ずるい)


 あんな風に、

 何でもない顔で、

 「もちろん」なんて言われたら。


 守るって。

 当たり前みたいに。

 ううん。あの時も守ってくれた。

 根拠のないただの感だけど……私はそれを信じている。


(ほんと……私、ああいうのに弱いんだって)


 今さら、気付いた。


 プリンを食べた時。

 日葵ちゃんが笑って、「おいしい」って言った瞬間。


 胸の奥が、ぎゅっとなった。


(認められた、って思っちゃった)


 誰に?

 妹さんに?

 それとも――


(“彰斗のそばに居てもいい”って)


 勝手に、そう受け取って。


 勝手に、嬉しくなって。


(重いよね)


 分かってる。

 まだ何も始まってない。


 同じチームで。

 同じ目標で。

 同じ場所に居るだけ。


 それだけなのに。


(でも)


 今日、確信した。


 私は――


 ただ一緒に戦えればいい、なんて思ってない。


 彰斗の帰る場所。

 安心する場所。

 “日常”の一部に、なりたい。


(欲張り、だなぁ……)


 でも。


 それを、嫌だとは思わなかった。


 逃げたいとも、思わなかった。


 むしろ――


(ちゃんと、好きでいたい)


 今は、まだ言わない。

 言えない。


 でも。


 この気持ちだけは、

 誤魔化さないでいよう。


 いつか。

 ちゃんと、向き合えるその日まで。


(……がんばろ)


 小さく息を吐いて、

 私は、ベッドのシーツに潜り込んだ。


 胸の奥の熱は、

 しばらく、消えそうになかった。



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