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スライムを狩る仕事です。  作者: 紅花翁草


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 今日は狩りというより、収穫の日だった。


 スライムとも、ゴブリンとも一度も遭遇せず、僕達は黙々とロレの実を集めていく。

 毎日続けている作業だから、手順も役割分担もすっかり身体に染みついていた。


 ハイヒールポーションは、一日206本。

 6本は自分達用。

 残りの200本を、メディカルセンターの買取所へ。


 だから、今日もロレの実は206個が目標だ。


 収穫用の手提げ鞄は、40個も入れればほぼ一杯になる。

 見た目以上に重くなるから、添島さん達は一人40個ずつ。

 5人でちょうど200個。


 僕はというと、自分達の分を増やす代わりに――

 大豊さんと添島さんの2つの鞄を持って歩いていた。


「無理してない?」

「大丈夫ですよ。添島さんと大豊さんには護衛役がありますし」


 実際には、僕の魔眼で周囲の索敵は出来ている。

 いきなり襲われる事はまずない。

 それでも二人が前衛として歩くのは、訓練の意味もあった。


 リュックの中には、家族へのお土産用にマナベリーも少し。

 ハンターの日常の中に、そういう当たり前が出来た事に、今は少しだけ嬉しかった。




 収穫を終え、メディカルセンターへ向かう途中。

 ポケットの中で、スマホが震えた。


(大谷)『今日はどうしてる? もしハイヒールを作るなら連絡をくれ。話したい事がある』


 画面を見て、足を止める。

 添島さん達にも、そのままメッセージを見せた。


「何かあったんでしょうか」

「分かりませんが……」


 僕はすぐに返信する。


『在庫で持っていた魔石で、今から作るところでした』


 少ししてから、今度は着信音が鳴った。


「もしもし――はい……ええ……わかりました」


 通話を切って、皆を見る。


「大谷さんから、15分ほど待ってほしいと頼まれました」

「いいですよ」

「私達も、お世話になってますしね」


 誰も異を唱えなかった。




 メディカルセンターのロビーは、いつもと違っていた。


 行き交う人達の表情が、どこか険しい。

 歩く速度も早く、落ち着きがない。


(……空気が、重い)



 しばらくして、大谷さんが姿を現した。

 その隣には、見覚えのある女性がいる。


 ――銀鷹シルヴァーホークのギルドマスター。

 鷹森蓮奈さん。


 添島さん達は、ほぼ初対面だ。


「待たせたな」

「いえ」


 大谷さんは、挨拶もそこそこに本題に入った。


「今な、青ポーションの獲得合戦が始まってる」


 その言葉に、全員が息を呑んだ。


「本来は、仲間内で使う分以外をここに卸すのがルールだ。

 だが、それを破って高額で買い取ろうとする連中が出てきた。

 それに引っ張られて、ここの専属薬師達も青い魔石を高値で買い集め始めてる」


 鷹森さんが、淡々と続ける。


「今、青のポーション系は5倍から10倍。

 魔石も、最大で5倍ね」


 思わず、皆で顔を見合わせる。


 その人達に売れば、大儲け出来る。

 でも、それは明確なルール違反だ。


 短い沈黙。


 その空気を切ったのは、鷹森さんだった。


「だから、私が来たのよ」

「うちで買い取るわ」


「……でも、それって」

 僕が言いかけた言葉を、彼女は遮る。


「薬師の子だけ、うちのギルドに入ればいいのよ。

 もちろん、数日後にこの騒動が収まったら抜ける前提でね。

 この時期に薬師だけが一時的に所属して、その後に脱退した――そういう形なら、対外的にも面倒が少ない」


「もう、他のギルドはそうしてる」

 大谷さんが付け加える。


 添島さん達で、小さく相談する。

 条件。

 リスク。

 今後の事。


 ――悪くない話だった。


「……お願いします」

 添島さんが、代表して答える。




 その日の成果に僕達は言葉を無くす。

 ハイヒールポーション200本。

 売り上げ、500万円。


 取り分は、

 僕が300万円。

 添島さん達で200万円。


 数字だけ見れば、大きな成果だ。


 でも、胸の奥には――

 これは違う。

 誇れる収入じゃない。

 そう語る自分が確かにいた。


◆統括指令室◆

安藤総司令「各所の問題への対策案。概ね同じ方向性になっていますね」

事務局長「それで、どの案を採用されますか?」

安藤総司令「フィールドの問題としてはこれで良いでしょう。よく考察されています。ポーションに関してはこれで。具体的な数字。しかも現状最適な解答だとおもいます」

事務局長「判りました。では発表します」

オペレーター一同 (ボーナス来い!)


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