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スライムを狩る仕事です。  作者: 紅花翁草


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 桑名駅までの直通バスを降り、電車に揺られながら、僕は今日一日の事をぼんやりと振り返っていた。


 ダンジョン。

 《巨神遺構》。


 モニター越しに見た巨人達の戦いは、正直、現実感が薄かった。

 桁の違う破壊力。

 硬さ。

 連携。


(……すごいな)


 それが率直な感想だった。

 悔しさよりも、怖さよりも、まず先に浮かんだのは「すごい」という言葉。


 でも、不思議と落ち込む事はなかった。


 今日の自分は、スライムを170体倒した。

 添島さん達と一緒に、無理なく、怪我なく。

 予定通りに終えて、予定通りに帰っている。


(やる事は、やった)


 それだけで、十分だった。


 東円寺さんに声を掛けられた事。

 沙耶さんに突っかかられた事。

 名前を覚えられた事。


(……ちょっと、面倒そうな人に目を付けられた気もするけど)


 それも、今は考えない事にする。


 僕は、ダンジョンに入る立場じゃない。

 経験が圧倒的に足りない。


 だから――

 スライムを狩る。


 それだけだ。


 添島さん達に魔石を全部預けた事も、後悔はしていない。

 信頼しているから。

 もし僕に何かあった時、皆が困らないように。


 自分の負担を減らすためでもあるけど、それ以上に――

 一緒に続けるための選択だった。


 電車が減速する。

 降車駅のアナウンスが流れた。


 今日も、無事に終わった。




◆添島恵美◆


 ホテルの部屋に入った瞬間、全員が一斉に息を吐いた。


「はぁ……」


 誰ともなく声が漏れる。

 それまで張っていた緊張が、ようやく解けた瞬間だった。


 ギルド提携のビジネスホテル。

 合宿中と同じ感じの部屋だけど、今日は少しだけ意味が違う。


 中学校のジャージでもなく、

 合宿講習でもなく、

 “これから”の拠点。


 私はベッドに腰を下ろしながら、今日の出来事を思い返していた。


 ダンジョン。

 東円寺パーティー。

 〈華燐〉の人達。



 あの場に立っていた人達は、明らかに別世界だった。


(……正直、怖かった)


 自分達が、急に小さくなった気がした。

 ここに居ていいのか、分からなくなる瞬間があった。


 でも――


「……多紀君、全然変わらなかったよね」


 ぽつりと、玲子が言った。


 その一言で、部屋の空気が変わる。


「確かに」

「慌てなかったですね」

「いつも通り、走ってました」


 真名と遥が頷く。


 そう。

 多紀君は、いつも通りだった。


 無理をしない。

 張り合わない。

 淡々と、前に進む。


(だから、崩れなかったんだ)


 あの場を見た後でも。

 圧倒されながらも。

 私達は、ちゃんと狩りが出来た。


「……魔石、全部預けられたの、重いよね」


 遥が小さく言う。


「でも」

 私は続けた。

「信頼されてるって事でしょ」


 全員が、静かに頷いた。


 しばらく沈黙が流れたあと、私は口を開く。


「……ちゃんと、話さないとだよね」


 何を、とは言わなかった。

 でも、全員分かっている。


 これからの事。

 学校の事。

 生活の事。


 タイミングは、まだ決めない。

 でも――

 近いうちに話す。


 それだけが、共有された。


「そういえば」

 真名が話題を変える。

「在宅授業の件、正式に進んでるみたい」


「タブレットで授業受けるんだよね」

「テストもライブ通話って」


「でもさ」

 玲子が笑う。

「テストの時は、うちに集まろ?」


 その一言に、空気が一気に和らぐ。


「泊まりで?」

「当然」

「中学生活、最後までちゃんとやろ」


 私は、その光景を見て思った。


 環境がどう変わっても。

 私達は、私達のままで進む。


 ホテルの窓から見える夜の街は、静かに光っていた。


彰斗「ただいまぁ」

日葵「おかえりぃ。お兄ちゃんテレビに出てたよ!」

彰斗「あぁ~。どんな感じで映ってた?」

日葵「ん~。オジサンと話している所。ちょっとだけ。声は聞こえなかった」

彰斗「そっか」

日葵「ハンターのタマゴにも気を掛ける英雄だって!」

彰斗「……そういうシーンに使われたのか。まあ、間違ってはいないか」


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