表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スライムを狩る仕事です。  作者: 紅花翁草


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/107

054


 予定通り、15時上がり。


 巡回バスに揺られながら、僕達はギルド本部のあるホームへと戻っていた。


「結局、今日だけで170個集まりましたね」


 自分でも少しだけ多いな、とは思ったけれど、口にすると皆の視線が集まる。


「東の草原でも狩ってたものね……」

「外周、当たりだったね」


 添島さんが小さく息を吐いて、肩の力を抜く。


「ロレの実、もう少し採っても良かったのでは?」


 一枝さんが、どこか自信ありげな笑みを浮かべた。


「私、頑張れます」


 その表情を見て、僕は首を横に振る。


「いえ。明日からもありますし、予定通りポーション作りは200個ペースでいきましょう」


 一瞬だけ、間が空く。


「それに……」


 言葉を続けながら、僕は考えていた事をそのまま口に出した。


「仮に僕が風邪を引いたり、用事で来られなくなった時の事を考えると、今持っている魔石は全部預けた方がいいですね」


「えっ……?」


 一枝さんが、目を丸くする。


 添島さんが、すぐにその場を収めた。


「そうしましょう。多紀君からの、信頼の証です。素直に受け取るところですよ」


「はい」

 僕も頷く。

「僕自身も、何かあった時に気にしなくて済みますから。お願いします」


 二人の言葉に、一枝さんは少し戸惑いながらも、最後には小さく頷いた。


 魔石を預け、僕は皆と別れる。


「それじゃ、すみません。お先に失礼します」


 メディカルセンターへ向かう添島さん達の背中を見送りながら、僕は一人、踵を返した。


 今日も、やる事は全部終わった。





 ケーキの箱を抱えて、神域管理室を訪れる。


 ダンジョンの件は僕から頼んだ事。

 だから、そのお礼。


「いらっしゃい、彰斗」


 イレーザさんが出迎え、シャニアさんはその後ろで軽く視線を向ける。


 いつもと同じ光景のはずなのに、今日は少し空気が違った。


 ふと視界に入ったモニター。

 普段なら気にも留めないはずなのに――


 そこには、ダンジョン内部を進む東円寺さん達の姿が映し出されていた。


「とりあえず、それを食べながらね」


 シャニアさんはそう言って、ケーキを受け取る。


 ……機嫌が、悪い?


 イレーザさんが小さく溜息を吐いたのを見て、確信する。


 テーブルにつき、ケーキを食べ始めたシャニアさんが、不意に口を開いた。


「どうして、彰斗はダンジョンに入ってないのよ」


「えっ?」


 思わず、言葉に詰まった。


「一番最初は、彰斗に遊んで欲しかった」


 その声は、拗ねているというより――

 どこか、悲しそうだった。


 そこで、ようやく気付く。


「あっ……すみません」


 慌てて、言葉を整える。


「僕、この世界だとまだ新人で、レベルも低い事になってますし、ランクも最低なので……入ると、多分怒られてしまいます」


 一瞬、シャニアさんが黙る。


「まあ、今回はシャニアさんがサプライズにしたのが原因ですし」

 イレーザさんが、淡々と話を引き取った。

「次からは、事前に彰斗へ連絡して発現させる、ですね」


「……分かったわよ」


 渋々、といった様子でシャニアさんが答える。


(……色々と、聞きたい。でも、聞くとなんか面倒事になる気がする)





 何気なく視線を向けたモニターには、地下とは思えないほど広大な空間が映し出されていた。


 天井は高く、石造りの柱が何本も立ち並ぶ。

 床一面には、踏み固められたような岩盤。


 ――その中央。


 人の何倍もある巨体が、ゆっくりと倒れ込む瞬間だった。


「……大きい」


 思わず、声が漏れる。


 映像に映っていたのは、ストーンジャイアント。

 全身が岩で出来たような魔物が、膝を折り、そのまま崩れ落ちていく。


 剣撃が効いた様子はない。

 魔法の光も、ほとんど見えない。


 代わりに映っているのは――


 巨人の関節部。

 膝、肘、首の付け根。


 そこを正確に叩き続ける前衛。

 大剣が、鈍い音を立てて叩き込まれる。


 次の瞬間、背後から放たれた魔法が、関節の内部にだけ爆ぜた。


「……魔法、反射してる?」


 腕に当たった光が、弾かれるように逸れる。

 でも、巨人の内部に入った分だけは、確実に効いている。


「魔法耐性が高いから、外殻は狙わない」

 イレーザさんが、淡々と説明する。

「内部破壊が基本ですね」


 岩の巨体が藻掻くように倒れたまま腕を振り回す。 

 それでも、東円寺さん達は攻撃の手を止めない。


 盾役が前に立ち、巨体の衝撃を受け止める。

 その背後から、別の前衛が踏み込み、同じように“深い位置”を狙う。


(……正面から倒してない)


 力押しじゃない。

 でも、手加減しているようにも見えない。


 効く場所を、知っている。

 そして、それを確実に実行している。


「あ…あの人、魔眼なんだ」


 沙耶さんの眼が紫色に光っていた。


 映像の端に、小さくテロップが流れる。


『《巨神遺構》一層・討伐進行中』


「……これで、一層なんだ」


 思わず、確認する。


「ええ」

 シャニアさんが、どこか誇らしげに頷いた。

「まだ入口付近よ」


(入口で、これ……)


 その先を想像しようとして、やめた。


 今の僕には、関係ない。


 でも――


 あの場所で戦っている人達と、

 同じ世界にいるんだ、という実感だけが、胸の奥に残った。


 ケーキを食べ終え、僕は立ち上がった。


「すみません。電車の時間があるので」


 モニターに映るダンジョンの映像に、つい目が行きそうになる。

 でも、それ以上は見ない。


 今の僕の居場所は、あそこじゃない。


「それでは、失礼します」


 管理室を後にして、地上へと出る直通バスの乗り場へと向かう。


 明日も、やる事は決まっている。


 スライムを狩る。

 魔石を集める。


 それだけだ。


南原柚月なんばらゆづき「紫苑! 硬い! 硬い! 硬い! これ無理ぃ!」

西条紫苑さいじょうしおん「撮影班が居ないからって急に騒がない! 東円寺さんところの魔眼が教えてくれたでしょ。魔核は胸の奥だから、諦めて関節破壊だって」

南原柚月「白律はくりつの所と蒼鴉そうあの所はデバフで動きを止めてるみたいよ。こっちもなにかない?」

西条紫苑「次来る時は、魔道の子達を連れてきて色々試すわよ。今日は最悪、倒せなくてもいいから」

南原柚月「そうね。今回はセオリー通りに、関節の破壊を徹底的に

     ここ!

     あっ! まって! 剣挟まった!」

西条紫苑「それ! それよ!」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ