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スライムを狩る仕事です。  作者: 紅花翁草


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◆多紀彰斗◆


 正直なところ。


 有名な人に評価された、という事実は――

 素直に、嬉しかった。


 東円寺さん。

 名前を聞いても、正直ピンと来ていなかったけれど。

 周囲の反応を見れば、すごい人なのは分かる。


(そんな人が、スライム狩りを肯定してくれた)


 それだけで、十分だった。


 ただ。


(……面倒そうな人にも、認識された気はする)


 沙耶さんだったかな。

 視線が鋭かった。

 嫌悪というほどではないけれど、納得していない感じ。


 正直、関わりたくない。


(考えても仕方ないか)


 そう結論づけて、僕は頭を切り替えた。


 ――遅くなった。

 だから、狩りを始めないと。





 森に入ると、体が勝手に動き出す。


 走る。

 視線を走らせる。

 反応する。


 いつもと同じ。


 スライムを見つけ、斬る。

 魔石を回収し、次へ。


 背後から、足音が付いてくる。


 添島さん達だ。


 コボルト。

 ゴブリン。


 僕が前を走り、索敵を担当。

 遭遇戦の指示を出して皆に任せる。


 視線だけで、もう言葉がいらない。


(……あ)


 気付けば、さっきまでの出来事を考える余裕はなくなっていた。


 走って、狩って。

 走って、狩って。


 これが、僕達の日常になりつつある。





「やっぱり、外側にスライムが集まっていましたね」


 森の南側に抜けながら、集計を確認する。


「予定時間まで狩ってみたら……136個、溜まりました」


「たっ……溜まりましたじゃないわよ!」


 背後から、勢いよく衝撃。


「100個で区切んなさいよ!」


 鹿屋さんが、そのまま背中に飛びついてきた。

 反射的に、体勢を支える。


「えっと……その……」

「皆さん、元気そうだったので……」


「言い訳になってない!」


 とは言うものの、鹿屋さんの声に本気の怒りはない。


 おんぶしたまま歩き出す。


 今日は、遺跡で休憩できない。

 だから、このまま森の外へ出る。


「時間的にも、少し短かったですね」

 添島さんが冷静に言う。


「確かに」

 大豊さんが頷く。

「先週の最終日より、楽だな」


「昨日、レベルが一つ上がった影響でしょうか」

 豊賀さんが首を傾げる。


「一つで、そんなに変わるものなんですか?」


 そこで、ふと思い出した。


「あ……」


 口に出してから、説明する。


「キューブガーデン内の行動って、全てレベル補正が掛かりますよね」

「確かにそういう説明があったような……」


 少し考えて、言葉を選ぶ。


「僕に合わせて走っていた分、持久力とか瞬発力が、他より伸びてませんでしたか?」


 添島さん達が、顔を見合わせる。


「……そこまで、見てなかった」

「数値、確認してないな」


「じゃあ、今日の終わりに見てみましょう」

 添島さんが言って、全員が頷いた。





 森を抜け、南側の草原で休憩。


 鹿屋さんは、僕の隣に座る。



「さっきの……ダンジョン前で、何があったの?」

 昼食を摂りながら、添島さんが訊いてきた。


「えっと……」


 少しだけ、言葉を整理する。


「前に、ギルドのロビーで高圧的な勧誘を受けた事があって」

「その時に、東円寺さんが助けてくれたんです」

「名前を覚えられていて……」


 そして今日の事。


「青い魔石を供給するのも、立派なハンター業務だって」

「そう言ってもらいました」


「……なるほど」


 そのタイミングで、豊賀さんがスマホを差し出す。


「この人達ですよね」


 画面には、演説するパーティー。

 テロップ――『日本が誇る最強のパーティー』。


 その前には、5組のパーティーが並んでいた。


「あっ」

 添島さんが声を上げる。

「この人……〈華燐〉のリーダーとサブリーダー」


 他のみんなも気付き、感嘆の声が漏れる。


「すごいな……」


 今度は、僕が訊ねた。


「添島さんは、その人と知り合いなんですか?」


「少しだけね」

 そう言って、西条紫苑との出会いを話してくれる。


「そういう人達も、いるんですね。

 凄いなぁ……」


 自分でも、呑気だと思う。


 それを聞いて、みんなが少し力を抜いた。


「彰斗は……」

 鹿屋さんが、急に真剣な声になる。

「どこかのクランに、入ったりするの?」


「いえ」

 即答した。

「面倒なので、ソロです」

「あっ、でも……」


 慌てて付け足す。


「皆さんは、どこかに所属しても問題ありませんよ」


「そんな事しないわよ!」

 鹿屋さんが声を張る。

「……しないよね?」


「まあ」

 添島さんが笑う。

「高校を出てから考える事かな」

「それまでは、このメンバーで行きましょう」


 全員が、頷いた。


(……良かった)


 僕は、胸の奥でそう思った。


 今日も。

 明日も。


 スライムを狩る。

 一緒に走る。

 一緒に進む。



シャニア「彰斗が居ないなんてつまらないぃ~!」

イレーザ「……」

シャニア「あんたもそう思うでしょ! 神器使って欲しいでしょ!」

イレーザ「……」

シャニア「あ~もう~! 入口、一回閉めていい? あっ! 名案じゃない!」

イレーザ「リネア様」

シャニア「……はい」




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