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スライムを狩る仕事です。  作者: 紅花翁草


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◆多紀彰斗◆


集合場所に着いた僕は、まず添島さん達の服装に目を奪われた。

 これまでの中学校のジャージではなく、濃紺を基調に白いラインが入ったスポーツウェア。ギルドの売店で扱っている汎用品だ。


「……似合ってますね」


 思ったままを口にすると、添島さん達は一瞬きょとんとしてから、柔らかく笑った。


「ありがとう」

「新しいの、ちょっと気分変わるよね」


 その横で、鹿屋さんが腕を組んでこちらを見る。


「……それ、私が言わせてほしかったんだけど」

「え?」

「“似合ってるでしょ”って」


 少し拗ねたように言われて、どう返せばいいか分からず黙ると、今度は大豊さんが口を挟んだ。


「多紀君って、すぐ女の子褒めるよね。慣れてる感じ」

「そ、そんな事ないです」


 慌てる僕を見て、二人は顔を見合わせて小さく笑った。


「ねえ彰斗も同じのにしない。

 お揃い!」


「い、いや……それはさすがに恥ずかしいです」


 話題を変えるように、僕は皆の装備に目を向けた。


「武器も……新しくしたんですね」


 添島さん達が頷く。


 大豊さんは初心者専用シリーズの大剣。

 添島さんは同じシリーズの長槍。

 一枝さんは取り回しの良さを重視した短槍。


 僕が買ったレイピアと同じラインで揃えた装備だ。


 そして――


「これ、前に借りてたのと同じやつよ」


 鹿屋さんが手にしているのは、合宿中に使っていたミスリル製のタクト。

 豊賀さんの盾も、以前と同じポリカーボネート製だった。


「……買ったんですか?」

「うん。ローンだけどね」


 鹿屋さんはさらっと言い、豊賀さんも小さく頷く。


「月十二回払いです。無理のない範囲で」


 借り物だった装備を、自分のものとして選び直した二人。

 その事実が、僕には妙に重く、同時に頼もしく感じられた。


 ――もう、講習じゃない。

 彼女達は本当に、ハンターとして歩き始めている。

 巡回バスの停留所へ向かう道すがら、自然と話題はスライムの森に出現したダンジョンの事になった。


「朝、受付で言われたんだけど……」

 添島さんが切り出す。

「森の中央部に、正式なダンジョンが確認されたって」


「やっぱり、あれダンジョンだったんですね」

「彰斗は現場に居たんでしょ?」

 鹿屋さんが興味津々で身を乗り出す。


「はい。完全に入口がせり上がってきました」

「うわ……生で見たのか」

「ニュースでやってたやつだよね」


 一枝さんがスマホを取り出す仕草をするのを見て、豊賀さんが首を振った。


「今日は、もう配信が付いているみたいです」


 それを聞いて、僕は少し考える。


「……今日は、外周をメインにしませんか」

「外周?」

「ダンジョンが出来た直後ですし、入口のある遺跡周辺は人の気配が残っていると思います。なのでスライムは散ってるはずです」


 僕自身も、ダンジョンが出来てから森に入るのは今日が初めてだ。

 安全を優先するなら、無理に近づく理由もない。


「いいと思う」

 恵美さんが即答した。

「今日は様子見ね」


 全員が頷き、方針はすぐに決まった。





 巡回バスは、予想以上に混んでいた。


 座席はほぼ埋まり、通路に立つ人はいないものの、車内はぎっしりとした空気だ。

 全員が武器を携行しているため、立ち乗りは禁止されている。


(これ……狩り、出来るのかな)


 同じ事を考えているのか、添島さん達も少し不安そうな表情を浮かべていた。


 そんな中――


 鹿屋さんだけは、僕の隣に座ってご機嫌だった。


「今日は混んでるね」

「そうですね」

「様子見なんだから、今日は張り切らないでよね」


 小さく笑われて、返事に困る。


 大豊さんが前の席から振り返って、にやりとする。


「多紀君、緊張してる?」

「してません」

「声、固いよ」


 一枝さんと豊賀さんがくすっと笑う。


 この空気は、嫌いじゃない。





 スライムの森の停留所に到着すると、僕達の予想はすぐに確信へと変わった。


「……人、多いですね」

「ハンターというより……」

「見学者、だね」


 森の入口付近には、装備を整えたハンターだけでなく、軽装の人影も目立つ。というか、スーツ姿の人達も居る。

 明らかに討伐目的ではなさそうだった。


 視線の先――

 立ち入り規制用の簡易フェンスと、その向こうに見えるダンジョン入口。


 そして。


「……あ」


 不意に、誰かと目が合った。


 存在感が、離れた距離に居ても感じる集団。

 そして中心に立つ彼と、確実に視線が交差する。


 同時に、周囲がざわついた。


「東円寺だ」

「本物?」

「カメラ回ってるぞ」


 見れば、少し離れた場所に中継用のカメラとスタッフ。

 どうやら、生放送らしい。


「誰でしょう?」

 添島さんが苦笑する。


「なんか貫禄あるよね」

 鹿屋さんが肩を叩いてくる。


(やっぱり有名な人だったんだ……)


 僕は、無意識に腰のレイピアに手を添えた。


(……やる事は、変わらない)


 今日も、スライムを狩る。

 それだけだ。


 そう思いながら、僕は彼へと軽く頭を下げた。

シャニア「ほら! 彰斗も来たでしょ!」

イレーザ「……それは、いつもの狩場だからだと思います」

シャニア「でもほら! この男と話すみたいだし! 一緒に入るのよ!

     まあ、誰かと一緒ってのがあれだけど……」

イレーザ(ほんと……シャニアさんはどうして、こういうところだけ詰めが甘いんでしょうか?)

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