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スライムを狩る仕事です。  作者: 紅花翁草


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◆大豊真名視点◆

 

 明日で、この合宿講習も終わる。


 部屋の中央では、玲子と遥が今日の討伐数ではしゃぎ、弥生は帳簿を丁寧にまとめている。

 恵美は、その様子を少し離れた場所から見守りながら、リーダーとして皆の空気を整えていた。


 ――いつもの光景だ。


 私は、その輪に入らず、壁に背を預けて彼女達を見ていた。


 今日の成果。

 コボルト15匹、ゴブリン24匹。

 過去最大。


 売り上げは27万5千円。

 一人5万5千円。


(中学生が稼ぐ額じゃないな)


 そう思うのに、不思議と実感が湧かない。

 それはきっと、この数字の“重さ”を、私達がまだ知らないからだ。


(だけど、彼は知っている)


 視線の先。

 今日も、誰よりも静かに、誰よりも先に前を歩いていた背中。


 多紀君。


 彼は、何も言わない。

 命令もしない。

 でも、気付けば私達は「正解の位置」に立たされている。


(魔眼の力だとしても、それをどう使うかは本人次第だ)


 魔物の密度が高い場所。

 囲まれない位置。

 逃げ道が確保できる地形。


 玲子達は、気付いていない。

 私も、最初は気付かなかった。


 でも――

 戦闘を重ねるほど、はっきり分かる。


(私達、導かれてる)


 スライム狩りの数を減らしたのも。

 午後から、完全に私達のペースに合わせてくれたのも。

 無償で用意されていたホーリーポーションも。

 私達がゴブリンと戦っている間、草原のスライムを狩っていたことも。


 全部。


(……全部、私達のためだ)


 私達は、恐怖という代償を払ってレベル24になった。

 数値だけ見れば、彼より“強い”。


 なのに。


(なんでだろうな)


 どうしても、勝っている気がしない。


 彼は独りでも大丈夫だと、自然に思える。

 それが、悔しいほどに。


 私は、ふと思い出す。


 この合宿に参加した理由。


 中学のバスケ部。

 恵美はキャプテンだった。


 六月の誕生日。

 覚醒。

 そして――公式戦への出場不可。


 世界中で決められたルール。

 覚醒者は、運動系の公式大会に出られない。


 それがどれだけ残酷かを、私は知っている。

 バスケが好きだったから。

 一緒にコートに立っていたから。


 だから言った。


「もし、私も覚醒者になったら、一緒にハンター講習受けよう」


 こんな呪いみたいなものに、負ける訳ないって。


 ハンターは、賛否両論の仕事。

 命と金を天秤にかける仕事だと言われている。


 だから、確かめたかった。


 私達の青春を奪った“ハンター”が、

 本当に呪いなのかどうか。


 結果は――


(皮肉な話だな)


 当たりを引いた。

 いや、引いてしまった。


 多紀彰斗という、規格外。


 女の子みたいな顔で。

 最初は「鍛えたい」なんて思っていたのに。


 共に戦った感触は、違った。


 背中を預けられる。

 前に立っても、後ろにいても、信頼できる。


(……隣に立ちたい、か)


 気付いた時には、そう思っていた。


 守られたいわけじゃない。

 置いていかれたくもない。


 同じ場所に立って、同じ景色を見たい。


 だから――


 私は、自然と口を開いていた。


「みんな……私達が、この講習に参加した目的、覚えてる?」


 視線が集まる。

 少しの沈黙。


 最初に口を開いたのは、玲子だった。


「……私は、続けるわよ」

「即答だね」

「だって……」


 視線を逸らしつつ、玲子は小さく付け足す。


「彰斗と、一緒にやりたいし」


 遥が、ふわっと微笑んだ。


「私も……かな。薬、作れるの、楽しいし」

「私もです」

 弥生が続く。

「皆さんと一緒なら、不安はありませんから」


 恵美は、少し遅れて口を開いた。


「……私も」

「理由は?」

「分かってるでしょ」


 強く、まっすぐな目。


「ここまで来て、引き返すつもりはない」


 私は、その答えを聞いて、胸の奥がすっと軽くなるのを感じた。


 そして―― 


 じゃあ、私は?


(決まってるだろ)


 答えは、最初から一つしかない。


 私はハンターになる。


 多紀君に出会ったから――だけじゃない。

 でも、彼の存在が、大きいのは否定しない。


 追いかけたい。

 並びたい。

 負けたくない。


 恋じゃない。

 依存でもない。


(戦友、だ)


 背中を預け合える関係。


 それでいい。


 それがいい。


 私は、静かに拳を握った。


 明日で、この合宿は終わる。


 でも――

 私達のハンターとしての道は、ここからだ。

イレーザ「リネア様、これが赤い魔石で作られたポーションです」

リネア「分かりました。私の方で調べてみます」

イレーザ「それと、シャニアさんがダンジョンを造る件のご報告は受けていますか?」

リネア「はい。それは嬉しそうに話してましたよ」

イレーザ「ホーリーポーションの方は私達で手配は出来ますが、神代文明の遺産の方については良いのですか?」

リネア「はい。シャニアの判断は間違っていません。これ以上の歪みを抑える為にも、あちら側にも守護者が必要でしょうからね」

イレーザ「シャニアさんに眷属を? ですか?」

リネア「あの子が気に入る者が現れると良いのですが……」

イレーザ「私のように、一から育てるという方法はダメなのですか?」

リネア「どうなんでしょうね~あなたの報告があったから、あのような方法を執りましたけど、今度聞いてみましょう」



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