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◆多紀彰斗視点◆
今日も大谷さんから連絡を貰い、いつもの場所で僕は添島さん達と合流した。
……正直、皆の顔を見た瞬間、嫌な予感はしていた。
「多紀君、ちょっといいかな」
代表して声を掛けてきたのは添島さんだ。
その横で、鹿屋さんと一枝さんが、言葉を選ぶような表情をしている。
「スライムの森、また一人で行くの?」
「……心配で」
一枝さんが小さく付け足す。
僕が何か言う前に、後ろから大谷さんの声が入った。
「一応な、添島達から相談は受けた」
全員の視線が、僕と大谷さんを行き来する。
「ハンターは自己責任だ。止める権限は俺にはない。ただし――」
大谷さんは、腰のポーチから小さな革袋を取り出して、僕に差し出した。
「これだ」
中身を見て、思わず目を見開く。
「ホーリーポーション……?」
「これはお前が彼女達を思って頼んだ物だろ。だから今回は自分で渡せ。その気持ちと同じ位、彼女達はお前の事を心配している事を忘れるなよ」
一瞬、胸が熱くなった。
「……はい。そうですね」
「それでどうする?」
大谷さんはそう言って、視線を添島さん達に向ける。
全員が、僕の返事を待っている。
少しだけ考えてから、僕は口を開いた。
「一日で、ホーリーポーション100本分の魔石を集めたいんです」
「100でいいの?」
添島さんが意外そうに首を傾げる。
「はい。のんびりやっても二時間掛かりません。それに……」
僕は続ける。
「皆さんにベリー集めの負担を掛けたくないので」
一瞬の沈黙。
「……つまり、私達と一緒に行動する為に?」
「はい」
「午前中は多紀君と一緒にスライムの森。午後は、私達と一緒にゴブリンが出る草原でベリー集めって事でいいのかな?」
添島さんがまとめる。
「はい」
大谷さんが腕を組んで頷いた。
「合理的だな。無理もしてない」
「……本当に二時間で終わるの? ゴブリンとか出るようになったんだよね?」
鹿屋さんの心配の声。
「えっと……コボルトやゴブリンは皆さんに丸投げする事になりますけど、良いですか?」
僕の答えに、皆が苦笑した。
「それじゃあ、決まりですね」
添島さんが言った。
「今日は一日一緒に行動しましょう」
◆
スライムの森は、普段と変わらないように見えた。
木漏れ日の下、隠れるようにじっとしているスライム達。
それでも僕の魔眼は、違いをハッキリと視せている。
(これが、本来の森か……)
それでも、僕の作業は淡々と進んだ。
索敵、接近、魔核締め、回収。
その中で増えたのが、魔物の位置を添島さん達に伝える事。
「ここから1時の方向に200m程、ゴブリン3匹居ます。」
「了解!」
添島さんの応答を聞き終えると、僕はその周囲に点在するスライムへと走りだす。
◆
時間を確認すると、まだ一時間半。
「目標達成です。お疲れ様でした」
袋の中には、ちょうど100本分の魔核締めした魔石。
「ほんと……疲れたわよ。」
鹿屋さんがその場でへたり込む。
「玲子、汚れますよ。ほら、あそこまで頑張りましょう」
豊賀さんの言葉に、鹿屋さんが恨めしそうに少し遠い遺跡を見つめる。
スライムの森での昼食場所と言えば「あそこ」って決まっている場所。
「彰斗! おんぶして!」
鹿屋さんのその言葉に、僕はもちろん、添島さん達も目を丸くしていた。
「えっ……」
「なんでレベルの上がった私達より、彰斗の方が元気なのよ!」
僕のレベルがおかしな事になっているなんて言えない訳で……
「……それはたぶん、魔物討伐で精神的な疲労が大きいからかと思います」
「確かに多紀君の言う通りかも」
「あぁ」
添島さんと大豊さんが頷く。
僕の咄嗟の思い付きで、なんとか誤魔化せた。
「じゃ、そういう事でいいからおんぶ!」
おんぶは確定のようだった。
◆
「じゃあ、どうぞ」
しゃがんだままの鹿屋さんに背中を向けて腰を落とす。
「………………ありがと」
数秒の間の後に、背中に重みを感じて、僕は腕を回して鹿屋さんを支える。
「いくよ!」
「うん!」
「あっ……」
僕は思わず、妹の日葵と接している時の口調になってしまった。
「日葵ちゃんでしょ」
「はい」
「やっぱり、彰斗は優しいお兄ちゃんよね。それと、その敬語なんとかならない? ちょっと寂しいんだけど」
「僕はどうも……家族と思っている人以外には、色々と緊張してしまい、それで敬語になってしまいます」
「そっか。じゃあ仕方がないわね」
「すみません」
「いいのよ。それと、彰斗って呼び捨てだけど、それはいいの?」
「はい。普段から幼馴染にそう呼ばれているので」
「ふ~ん。それって女の子?」
「はい。」
「その子とは敬語?」
「いえ、小学校からの付き合いなので、普通に話しています」
「そっか……まずはそこからね」
「えっと?」
「独り言よ。きにしないで」
「はい。えっと、着きました」
「ありがと」
腰を落とすと、ピョンって感じで背中から離れた鹿屋さん。
振り向くと、嬉しそうな笑顔で添島さん達へと歩いていった。
玲子「おんぶしてもらった!」
恵美「見てたから知ってる」
遥「どんな感じだった?」
恵美・玲子・真名・弥生「えっ!?」
玲子「えっと……そうね。温かくて安心する感じかな」
遥「そっか。お兄ちゃんいたら、そんな感じなのかな?」
玲子「ううん。抱き枕」
遥・恵美・真名・弥生「えっ!?」




