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スライムを狩る仕事です。  作者: 紅花翁草


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041

◆多紀彰斗視点◆


 今日も大谷さんから連絡を貰い、いつもの場所で僕は添島さん達と合流した。


 ……正直、皆の顔を見た瞬間、嫌な予感はしていた。


「多紀君、ちょっといいかな」


 代表して声を掛けてきたのは添島さんだ。

 その横で、鹿屋さんと一枝さんが、言葉を選ぶような表情をしている。


「スライムの森、また一人で行くの?」

「……心配で」


 一枝さんが小さく付け足す。


 僕が何か言う前に、後ろから大谷さんの声が入った。


「一応な、添島達から相談は受けた」


 全員の視線が、僕と大谷さんを行き来する。


「ハンターは自己責任だ。止める権限は俺にはない。ただし――」


 大谷さんは、腰のポーチから小さな革袋を取り出して、僕に差し出した。


「これだ」


 中身を見て、思わず目を見開く。


「ホーリーポーション……?」

「これはお前が彼女達を思って頼んだ物だろ。だから今回は自分で渡せ。その気持ちと同じ位、彼女達はお前の事を心配している事を忘れるなよ」


 一瞬、胸が熱くなった。


「……はい。そうですね」

「それでどうする?」


 大谷さんはそう言って、視線を添島さん達に向ける。


 全員が、僕の返事を待っている。


 少しだけ考えてから、僕は口を開いた。


「一日で、ホーリーポーション100本分の魔石を集めたいんです」

「100でいいの?」


 添島さんが意外そうに首を傾げる。


「はい。のんびりやっても二時間掛かりません。それに……」

 僕は続ける。

「皆さんにベリー集めの負担を掛けたくないので」


 一瞬の沈黙。


「……つまり、私達と一緒に行動する為に?」

「はい」 

「午前中は多紀君と一緒にスライムの森。午後は、私達と一緒にゴブリンが出る草原でベリー集めって事でいいのかな?」

 添島さんがまとめる。


「はい」


 大谷さんが腕を組んで頷いた。


「合理的だな。無理もしてない」

「……本当に二時間で終わるの? ゴブリンとか出るようになったんだよね?」

 鹿屋さんの心配の声。


「えっと……コボルトやゴブリンは皆さんに丸投げする事になりますけど、良いですか?」


 僕の答えに、皆が苦笑した。


「それじゃあ、決まりですね」

 添島さんが言った。

「今日は一日一緒に行動しましょう」




 スライムの森は、普段と変わらないように見えた。

 木漏れ日の下、隠れるようにじっとしているスライム達。


 それでも僕の魔眼は、違いをハッキリと視せている。


(これが、本来の森か……)


 それでも、僕の作業は淡々と進んだ。

 索敵、接近、魔核締め、回収。

 その中で増えたのが、魔物の位置を添島さん達に伝える事。


「ここから1時の方向に200m程、ゴブリン3匹居ます。」

「了解!」

 添島さんの応答を聞き終えると、僕はその周囲に点在するスライムへと走りだす。




 時間を確認すると、まだ一時間半。


「目標達成です。お疲れ様でした」


 袋の中には、ちょうど100本分の魔核締めした魔石。


「ほんと……疲れたわよ。」

 鹿屋さんがその場でへたり込む。

「玲子、汚れますよ。ほら、あそこまで頑張りましょう」

 豊賀さんの言葉に、鹿屋さんが恨めしそうに少し遠い遺跡を見つめる。


 スライムの森での昼食場所と言えば「あそこ」って決まっている場所。


「彰斗! おんぶして!」


 鹿屋さんのその言葉に、僕はもちろん、添島さん達も目を丸くしていた。


「えっ……」

「なんでレベルの上がった私達より、彰斗の方が元気なのよ!」


 僕のレベルがおかしな事になっているなんて言えない訳で……


「……それはたぶん、魔物討伐で精神的な疲労が大きいからかと思います」


「確かに多紀君の言う通りかも」

「あぁ」

 添島さんと大豊さんが頷く。


 僕の咄嗟の思い付きで、なんとか誤魔化せた。 


「じゃ、そういう事でいいからおんぶ!」


 おんぶは確定のようだった。




「じゃあ、どうぞ」

 しゃがんだままの鹿屋さんに背中を向けて腰を落とす。


「………………ありがと」


 数秒の間の後に、背中に重みを感じて、僕は腕を回して鹿屋さんを支える。


「いくよ!」

「うん!」

「あっ……」


 僕は思わず、妹の日葵と接している時の口調になってしまった。


「日葵ちゃんでしょ」

「はい」

「やっぱり、彰斗は優しいお兄ちゃんよね。それと、その敬語なんとかならない? ちょっと寂しいんだけど」

「僕はどうも……家族と思っている人以外には、色々と緊張してしまい、それで敬語になってしまいます」

「そっか。じゃあ仕方がないわね」

「すみません」

「いいのよ。それと、彰斗って呼び捨てだけど、それはいいの?」

「はい。普段から幼馴染にそう呼ばれているので」

「ふ~ん。それって女の子?」

「はい。」

「その子とは敬語?」

「いえ、小学校からの付き合いなので、普通に話しています」

「そっか……まずはそこからね」

「えっと?」

「独り言よ。きにしないで」

「はい。えっと、着きました」

「ありがと」


 腰を落とすと、ピョンって感じで背中から離れた鹿屋さん。

 振り向くと、嬉しそうな笑顔で添島さん達へと歩いていった。


玲子「おんぶしてもらった!」

恵美「見てたから知ってる」

遥「どんな感じだった?」

恵美・玲子・真名・弥生「えっ!?」

玲子「えっと……そうね。温かくて安心する感じかな」

遥「そっか。お兄ちゃんいたら、そんな感じなのかな?」

玲子「ううん。抱き枕」

遥・恵美・真名・弥生「えっ!?」

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