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スライムを狩る仕事です。  作者: 紅花翁草


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 僕が選んだのは、ロレのムースケーキ。


「それでは、私はこれを」


 イレーザさんが選んだのは、チョコムースと苺のムースが重なったケーキ。


 僕の前にケーキを並べ、自分の分も整える。

 そしてシャニアさんが用意したポットから、静かにカップへと紅茶を注いだ。


 その全ての仕草が滑らかで、見惚れてしまう程だった。


「いっただきまーす!」


 シャニアさんの嬉しそうな声で、僕の思考が戻る。


(色々聞きたい事を忘れるところだった……)


 僕は、微笑むイレーザさんが一つ目のケーキを完食したタイミングで話を切り出す。


「イレーザさん、神器のおかけで、友人を助ける事が出来ました。ありがとうございます」

「役に立てたなら、幸いでしたね。」

「はい。それで、話は変わるのですが、僕が、守護者として活動しなくても大丈夫なのですか?」


 神器を貰っておいて、何もしないというのは、やっぱり僕には無理な話で……


「この世界、貴方達がキューブガーデンと呼んでいる空間は、私達の世界の一部を切り離し、貴方達の世界と繋がる部分にしているのは覚えていますね」

「はい。次元の歪が生まれて、魔素が地球側に流れ込まないようにする、防波堤で、プールで、回収する場所ですよね」

「その通りです。魔素が集まり魔物になる。そして討伐する事で魔素と、無害な魔石に変えているのが、私達の世界の理」


(ほんと、ファンタジーな世界だよな)


「これは制御できない自然の摂理になっています。そして、自然の摂理だけでは回収する速度が足りない為、人工的にダンジョンを造った。ここまでは伝えましたね」

「はい」

「ではなぜ、このような設備が必要なのか? それを今から話しますね。」




 大量の魔素が噴出して次元の歪が生まれたのか? 次元の歪が生まれて、魔素が大量に噴出しているのか? 原因が判らないけど、このままだと、女神リネア様の星の魔素が無くなり、命ある物が死滅する運命。そして地球側に魔素が溜まると、地球その物が崩壊する恐れがある。それが13年前に出来たキューブガーデンの真相だった。

 でも、予想外の事象がキューブガーデン内で発生。


 その一つ目が、女神リネア側の戦力が使えない。

 つまり、向こう側で活躍している守護者を充てに出来ない。

 じゃあ、イレーザさん達は?

 女神の使徒は魔素の塊。使徒が魔力を使えば魔素をばらまくのと同じ。ペチペチ物理は効率が悪い。なので最終手段

 だから、地球側に覚醒者という戦力を与えた。



 そして2つ目が、魔物が不完全で生まれる。

 これが、体内が粘土のような物質になってる事と、本来は青い魔石が赤い魔石に変わってしまった事に繋がる。

 赤い魔石は、青い魔石同様の『魔素の完全な安定状態』だったので浄化作用に支障無し、となったので、これに関してはそれほど問題にはなっていない。



「ですので、キューブガーデン内で、守護者と同じように、魔素の多い魔物。レベルが高い魔物を倒してくれれば、問題ありませんよ。私が私達の世界へ来て欲しいと言ったのは、せっかくなので見て欲しいと思ったからですね。こちら側に来れるのは眷属になった者だけなので」


 優しく微笑むイレーザさんに、僕の気持ちが揺れ動く。


「落ち着いたら、僕の生活が落ち着いたら、見に行きたいです。その……魔物討伐とかではなくて」

「えぇ、時間は永遠と思える程にありますから、期待していますよ。」


 何かおかしな単語が聞こえた……


「時間が永遠?」

「はい。女神の使徒に選ばれた眷属は、その時点で不老になります」

「不老?! えっ! どうしてですか?」

「はい。使徒の眷属は一人だけ。その者が数十年の寿命で死んでしまっては、元も子もありません。」

「……確かにそうですね。でもそれだと、僕が異常者だといずれバレてしまいませんか?」

「あっ…こちらの人達は知らない事でしたね。でも遅からず気付く事でしょう。レベルが上がる報酬として、寿命が延びます」

「えっ!?」

「正確には、老化の速度が遅くなります。レベル一つ上がる毎に少しずつ。レベルが50の時で半分の速度、レベル100で10分の1に」

「それって、レベル100になると、10年で1歳の老化って事ですか?」

「その通りです。ちなみに、老化の遅延効果はレベル100で止まります。あまりに長く生きるには、人は脆弱だかららしいです。」

「……僕は?」

「眷属になった事で、取り除かれていますよ。」

「ですよね」


 不老にする位なんだから、そのあたりの事も当然だよね……




 ◆


 衝撃的な事実を聞かされて、僕の思考は現実逃避から現実的な思考へと変わる。


「あれ? もしかして僕って、見た目ずっとこれ?」


 身長も男子としては低い方。顔は童顔で……中性的と言えば聞こえは良いけど、「女装が似合いそう」と言われても嬉しくはない。


「それはもちろん!」


 満面の笑みで微笑むイレーザさん。


(あっ、そうだった。イレーザさんの好みだった……)



「確かに、守護者に選ばれるのって、レベル100が最低基準だから、若くても30は越えているからね。彰斗のような子供は初めてになるわね」

 視界の端で、美味しそうにケーキを次々平らげているシャニアさんが、ここで話に加わってきた。


「そもそも、守護者の覚悟もない子供を、あんたって人は……」

 シャニアさんの呆れた視線に、イレーザさんが顔を背ける。


「それはそれです。彰斗が魔眼を手に入れた対価という事で――そうです。彰斗、何か困った事があれば相談に乗りますよ。貴方は私の眷属なのですからね。」

 イレーザさんの言葉に、僕はついさっきの出来事で思った事を訊ねた。


「スライムをダンジョンに出す事は出来ないのでしょうか? それか、宝箱からホーリーポーションを沢山得られるようにするとかは出来ませんか?」

「……それは、ホーリーポーションが不足している。という認識で合っていますか?」

「はい。そうなんです。」


 僕は、1時間程前の出来事を二人に話した。





「ちょっと待ちなさい。赤い魔石でヒールポーションを作っている?」


 どうしてホーリーポーションだけが足りないのかと、イレーザさんに問われた理由を告げたら、怪訝な顔をした。


「はい。赤い魔石にも使い道があるはずだと、世界中で研究されて、魔石を液体化する事に成功しました。それと同時に、微細な粉末にする事で、ポーションの材料になる事も発見されて、でも作れるのはハイヒールポーションまでです。」

「そう……ですか。それで、ホーリーポーションだけの不足になる訳ですね。」

「はい。」

「シャニアさん、ホーリーポーションのドロップ数を増やして下さい。理由は、私からリネア様にお伝えします。それと彰斗、赤い魔石のポーションを持ってきて下さい。こちらで調べてみたいと思います。」


「はぁ…私よりも立場が上になったからって、そんな直ぐに上司ぶらなくてもいいじゃない。

 彰斗! あなたのお願いでもあるんだから! ケーキ! それ以外にも美味しい物を持って来なさい! 判ったわね!」

「それはもちろん。ありがとうございます、シャニアさん」


 ダンジョンの管理をしていて、今回の事で実際に動いてくれるシャニアさんに差し入れする事は、僕にとっては既に決定事項だった。


 僕は、管理者の業務内容をある程度教えて貰っていて、階層式のダンジョンがシャニアさん達が管理している人工のダンジョンだと聞いていた。

 キューブガーデンのフィールドには自然のダンジョンがあるけど、それを、地球側は『魔物の巣』と認識しているとの事。

 階層式のダンジョンでしか宝箱が出ないのだから、地球人の常識としては、そう認識するのは当然な事だった。



「それと、彰斗。これを身に着けて下さい」


 イレーザさんがテーブルの上に置いたのは、女性が着けるような、細い円環のブレスレット。

 白磁に金の模様が走った――ちょっと僕が着けるには抵抗があるデザインだ。


「僕が……これを? ですか?」

「はい。私との念話が出来る通信機です。眷属としての証明にもなります。右手で良いですか?」


 そう話すイレーザさんの笑顔に、僕に拒否権が無い事が判った。



 継ぎ目の無い円環のブレスレットを手に持ったイレーザさんが、僕の差し出した右手に近付けると、なんの抵抗も無く、腕を突き抜けてブレスレットとしての位置に収まった。

 大きさも手首にピッタリとくっ付いている。というよりも、むしろ張り付いているように見える。


「これ……動きの邪魔にはならないとおもいますけど、明らかにアーティファクトって呼んでいる宝箱産アイテムにしか見えませんけど、大丈夫かな?」


 初心者が着けていていい物ではない。


「手の甲側を撫でるように触って見てください」

「あっ、消えた。」

「はい。もう一度撫でると」

「見えました。」

「彰斗からの通信時には、表示する必要がありますが、私からは念話として届きますので、驚かないでくださいね」

「あっ、はい」


(念話ってあれか……頭に直接聞こえてくるってやつ。)


「ただし、キューブガーデンに彰斗が居る時しかそれは機能しませんから、しっかりと覚えて置いてください」

「はい。判りました」


(ある意味、プライベート時間には干渉されないって事だよね。うん、良い事だ」


「ですから……出来るだけ早く、キューブガーデン内での生活を初めてください」

「えっ!?」

「お願いしますね」


(これって……キューブガーデン内に住めって事だよね?)


 イレーザさんの笑顔に、僕は「はい」としか言えなかった。


イレーザ「リネア様、彰斗からケーキを頂きました。是非一緒にいただきませんか?」

リネア「私が頂いてもいいの?」

イレーザ「はい。そのつもりで持ち帰ってきました」

リネア「ほんとうに貴方は気が利きますね。それで、あの子に渡しましたか?」

イレーザ「はい。これで、こちらの世界に居ても彰斗との繋がりを強く感じられるようになりました」

リネア「よかった」

イレーザ「そうでした。彰斗から少し気になる話を聞きました。その報告をしても良いでしょうか?」

リネア「良いですよ。では、ティータイムの話題にしましょう」


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