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スライムを狩る仕事です。  作者: 紅花翁草


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037

 また絡まれたらどうしよう。

 そんな不安を胸の奥に抱えたまま、僕は昨日と同じケーキ店の前に立っていた。


「あっ、昨日の子」


 声を掛けられて、少しだけ肩の力が抜ける。


「実は……持って行った先で、ここのケーキをすごく喜んでもらえて。今日も持ってきてほしいって頼まれまして。なので、またお薦めのお菓子をお願いできますか?」


 店員さんの表情がぱっと明るくなる。


「嬉しいな。数は、昨日と同じで2セットかな?」


「えっと……昨日と同じ物を1セット。それと、別の種類を6個で、2セットでお願いします」


「そうなんだ?」


 一瞬だけ浮かんだ不思議そうな顔に、僕は苦笑する。


「実は……昨日の2人分を、1人が留守にしてた人の分まで、全部食べちゃったみたいで」


 その説明に、店員さんは吹き出した。


「なるほど! だから昨日の1セットは“食べられなかった人用”なのね」


「はい」




 大きな袋を受け取り、僕は軽く頭を下げた。


 フードコートを抜ける途中、すれ違うハンター達の視線が、袋に集まるのを感じて少しだけ気恥ずかしくなる。

 そのままオベリスクの裏へ回り、人の目がないことを確かめてから、そっと手を触れた。


 浮遊感は一瞬。

 次の瞬間、神域管理室の転移室に立っていた。


「遅かったじゃない」


「待っていましたよ彰斗」


 声のした方を見ると、四人掛けの円卓にシャニアさんとイレーザさんが並んで座っている。


「彰斗、それは?」

 イレーザさんが大きな紙袋へと視線を向ける


 シャニアさんが、机に肘をついてにやりと笑う。

「早く頂戴!」

「シャニアさん?」

 すかさずイレーザさんが眉をひそめる。


「何を言っているのですか。彰斗が来てくれたのは、私に会いに、でしょう?」

「まあ? それはそう。でもほら、その袋」

「……はぁ」

 そこで言葉を切り、イレーザさんが僕を見る。


「……彰斗、昨日来てくれた事は、シャニアさんから聞きました」


 その視線と、妙に落ち着いた声色で、察してしまう。


(あ、これ……黙ってたな)




 僕は一歩前に出て、袋から箱を取り出した。


「昨日、イレーザさんに頂いた神器で、大切な人を守ることができました。これは、そのお礼です」


 種類の違う2箱を、円卓の上に並べる。


「こちらは、イレーザさんに」


 そして、もう1箱をシャニアさんの前へ。


「こっちは、シャニアさんに」


「えっ! なんで私だけ1箱なのよ!」


 即座に声を上げるシャニアさん。


「なっ、なんでって……昨日も――」


 言いかけた瞬間、空気が冷えた。


「……シャニアさん?」


 低く、静かな声。


「あー! 仕方ないじゃない!」


 シャニアさんが勢いよく立ち上がる。


「だってあんた、居なかったんだから! こういうのは日持ちしないの! だから仕方なく、食べてあげただけよ!」


 イレーザさんは一瞬だけ目を閉じ、深く息を吐いた。


「……言い分は、一様、理解しました」


 怒気が引いていく。


「これ以上、時間を使うのも無粋ですね」


 そう言って、イレーザさんは僕に微笑んだ。


「シャニアさん。このケーキに合うお茶を用意してください。昨日食べたあなたなら、分かりますよね?」


「分かったわよ。昨日はね、あまりに美味しくて、一箱食べ終わるまでお茶の存在を忘れてたの」


 呆れたようにイレーザさんが首を振る。


「彰斗、まだ時間はありますか?」


「はい」


「では、私の隣へ。一緒に頂きましょう」


 箱を開けながら、イレーザさんが言う。


「好きな物をどうぞ」


「……ありがとうございます」


「シャニアさん、彰斗のお茶も忘れないでくださいね」


「はいはい」


 そう返事をしながら、シャニアさんはどこか楽しそうに背を向けた。



◆ケーキショップ『十果繚乱』キューブガーデン店◆

店員「店長! また来てくれましたよ! あの子!」

店長「ほんと! 喜んでた?」

店員「はい! ……あれ? あの子は食べてない?」

店長「えっ! そうなの? あんなに買って行ったのに?」

店員「そうだった! 二人用を一人に食べられたみたいでしたよ」

店長「……えっとそれは、喜んでいいのかな?」

店員「もちろん! ん?……ただの大食いさんって事はないよね?」


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