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スライムを狩る仕事です。  作者: 紅花翁草


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◆多紀彰斗視点◆


 ポーション作りに向かう一枝さん立を見送って、僕は武器庫受付でトングと端末機を預けた。

 この後はフードコートでケーキを買って、神域管理室へ――そのつもりだった。


「少し良いか?」


 声を掛けられて足を止める。

 振り返ると、三十代後半くらいの、がっしりした体格の男が立っていた。


「すみません、急いでいるので」


 そう答えて歩き出そうとした瞬間、進路が塞がれた。

 一人ではない。左右にも、背後にも。

 視線を上げると、知らない大人が四人。全員、僕よりずっと大きい。


(あ、これ……囲まれてる)


 逃げ道がない距離感。

 でも、殺気はない。

 代わりにあるのは――値踏みするような目。


「安心してくれ。脅すつもりはない」


 最初に口を開いた男は、妙に丁寧だった。


「我々はクラン〈白律〉。君に、正式な契約の話を持ってきた」


 続いて、別の男が被せる。


「〈金環〉だ。報酬は弾む。成果に応じてな」


 さらに、静かな声。


「〈蒼鴉〉。今日は話を聞きに来ただけです」


 最後に、距離を詰めてくる男。


「〈黒脈〉だ。ウチに来りゃ、全部楽になる」


 ……一気に来たな。


 どの言葉にも共通しているのは、

 断らせる気がないという前提。


 空気が重くなる。


 その時だった。


「てめぇら、回りくどいんだよ」


 割り込むように前へ出てきた男がいた。

 唾を吐き捨て、荒れた目をした中年。


「ガキ。魔石集めてんだろ?」


 ぞっとする言い方だった。


「それ、俺に寄こせ」


 周囲が一瞬、静まる。


「……なに、言ってるんですか」


 声が、少しだけ震えた。


「聞こえなかったか?」

 男が、唾を吐くように笑う。


「お前らみたいな自己中クランが独占してるから、

 俺らみてぇなクランにホーリーポーションが回ってこねぇんだ。このガキは俺らに寄こせ!」


 周囲の数人が、同調するように声を上げた。


「そうだそうだ」

「俺らだって苦労してんだ」

「薬が足りねぇんだよ」


 ……違う。

 この人達は、“足りない”んじゃない。

 取り上げたいだけだ。


「魔石出せ。

 嫌なら……どうなるか、分かるよな?」


 脅し。

 はっきりした、暴力の匂い。


(……これが、ハンター?)


 その瞬間だった。




「――なんだ、この騒ぎは」


 低く、よく通る声。

 金属が触れ合う音がして、空気が変わった。


 振り返ると、武器庫受付の方から数人が歩いてきていた。


 先頭にいるのは、背が高く、体格のいい中年の男。

 堂々とした歩みに周囲のハンター達が道を開ける。


 その後ろに、穏やかな雰囲気の女性。

 無口そうな大男。

 冷静そうな女性。

 笑顔なのに、なぜか近づきたくない女性。

 そして――鋭い目をした、若い女性。


 周囲の空気が、目に見えて引き締まった。


(……誰だ)


 けど、クランの人達の反応で察する。


 誰も、逆らえない人だ。


「ここはギルド本部だぞ」


 男がそう言っただけで、

 さっきまで強気だった人が黙った。


「ルールとマナー。守ってください。」


 後ろの女性が、穏やかに言う。

 それだけで、場の緊張が一段落ちた。


 視線が、自然と僕に集まる。


「……すまない。最近モラルを欠いた者達が増えてな、災難だったな。

 お前達! 過度の勧誘は禁止事項だろ! それと場を煽るのも同じだ! 次は無いと思え。」


 最後の低い声で、さっきまで僕を勧誘しようよしていたクランの人達が波を引いたように離れていった。



「ありがとうございました。おかげで助かりました。」

 僕は男の人に頭を下げる。



「名前は?」


 視線を上げると男の人が、僕を見た。


「え、あ……多紀、彰斗です」


 一瞬、考えるような間。


「そうか」


 その短い声だけで、背筋が伸びた。


 その時、横から声がした。


「あなたが……魔眼なの?」


 振り向くと、さっき鋭い目をしていた女性が、じっと僕を見ていた。

 でも、威圧感はない。

 むしろ――今は綺麗な女性らしい顔立ちだ。


(……あ)


 言い合いの中で出ていた言葉。

 “魔眼”。

 それを聞いて、推測したんだ。


「えっと……はい」


 そう答えると、その女性は少し目を丸くした。


「……そう」


 それだけ。

 でも、その視線に、妙な庇護欲のようなものを感じて、戸惑う。


「名前は覚えたぞ」


 先頭の男の人が、そう言って笑った。


「多紀彰斗、だな」


 それだけで、なぜか胸がざわついた。


(……この人に名前を覚えられたの、まずいんじゃ)


 そんな予感を抱きながら、僕はもう一度頭を下げた。


「ありがとうございました」

「少年、励めよ」


 そう言って、僕を助けてくれた人達は、ロビーの2階へと上がっていった。







神崎千景「隊長、見せしめに処罰を与えても良かったんじゃ?」

東円寺「そうだとしても、戻って早々面倒事を処理したくないだろ。それに今から飯だ」

北条紗耶香「そうですよ千景。あんな小物の処分など、いつでも出来ます」

岩瀬太陽「相変わらず、言う事が怖い聖女様だな。いや、光女だったか今は」

東雲沙耶「あの魔眼の子……可愛かったなぁ」

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