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スライムを狩る仕事です。  作者: 紅花翁草


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◆多紀彰斗視点◆


 スライムの森での作業は、もう完全に日課になっていた。


 魔眼を使い、魔核を締める。

 倒れたスライムから魔石を回収する。

 それを繰り返すだけ。


 危険は、ほとんどない。

 ……はずだった。


 魔眼の視界に、スライム以外の反応が映る。

 小柄な影。

 コボルトだ。


 僕は討伐に向かった。


(……やっぱり、増えてきてるな)


 でも、それ自体は“異常”じゃない。

 それを、僕は知っている。


 イレーザさんから聞いていた。

 スライムの森は、六年前までは普通の狩場だったと。


 シャニアさんが昼寝をして、巨大スライムが生まれる以前。

 ここは、コボルトも、ゴブリンも、当たり前に徘徊する場所だった。


 巨大スライムが放つ膨大な魔力が、弱い魔物を無意識に遠ざけていただけ。

 だから、スライムしかいない森になっていた。


 つまり――。


(今の状態が、本来の姿)


 数日のうちに、元に戻る。

 それも、聞かされていた。


 でも。


 それを知っているのは、僕だけだ。

 ギルドですら、なぜスライムばかりになったのかを把握していない。


(正しい変化でも……僕が困る)


 大谷さんや、添島さん達の事が頭をよぎる。

 このまま魔物が混じる状態が公になれば、ソロ活動は止められる。

 

 足を止めずに、考える。

 答えは出ないまま、スライムを狩り続ける。


 次に魔眼が捉えたのは、緑色の影だった。


「……ゴブリンも居るのか」


 思わず、溜息が漏れる。

 完全に移行段階だ。


(何か……出来る事は)


 唐突に、あの巨大スライムの姿が浮かんだ。

 シャニアさんの魔力を吸って、膨れ上がったあれ。


(魔力を吸ったから、巨大化した)


(だったら……与えたら?)


 試すしかない。


 周囲を確認して、スライムに魔力を流し込んだ。


 ――破裂した。


「あ……」


 完全にやり過ぎた。

 反省しながら、二度目。


 今度は、細く、慎重に。


 僕の魔力を吸収しているのが視える。

 でも、大きくはならない。


(……時間が必要か)


 そして、すぐに気付く。

 そんな時間は、無い。


 巨大スライムにするには、たぶん魔力を与え続けなけばならない。

 片手間で真似出来るものじゃない。


(無理だな)


 はっきりと諦めた、その時。


 足元に、ぷに、とした感触があった。

 魔力を与えたスライムが、擦り寄ってきている。


(……可愛いな)


 でも、これは収入源だ。


「魔力を食べるなら……赤い魔石も?」


 コボルトの魔石を、そっと頭に乗せる。


 反応は、無かった。


「……分からないな」


 気持ちを切り替える。

 とりあえず、今日の分だ。


 昨日の150個はヒールポーション用。

 今日の150個はマナポーション用。

 一枝さんの負担を減らす為に、今日は一時間早上がりになる。


 それと、小さな怪我も直して欲しくて、ホーリーポーションを彼女達に使って貰ったから、また補充用に30個



 魔眼を使って進んでいると、境界線付近で反応を見つけた。

 ハンターだ。


 その手前、スライムの森の中に魔物。

 もう、討伐に向かっての移動を始めている。


(……もう、隠せないな)


 僕は、隠蔽を諦めた。




 昼休憩。

 SNSで連絡を取り合うのも日課になっていた。


 予定通り、14時までに150個集まる事と。

 大豊さんの大剣の手応えを聞く。


 返ってくるのは、いい報告ばかり。

 少し、安心する。


 続けて、スライムの森にコボルトとゴブリンが侵入している事を伝えた。


 すぐに、心配の返信。


(玲子)『危ないわよ。今日はもうやめたら?』


『大丈夫です。魔眼で接敵しないようにしてますので』


(恵美)『常に魔眼は使えないでしょ。無理しないで』

(遥)『魔力切れを起こす前には、必ず撤退してくださいね』


『了解です』




 180個と、神器の弾丸用の10個を余分に集めたのが13時40分。

 僕は停留所のあるキャンプ地へ向かう途中、空を見上げる。


 ギルドの偵察機が、スライムの森の上空へ入っていくのが見えた。


「……明日から、どうしようかな」


 答えは、まだ出ない。

シャニア「彰斗は、スライムになにやってるのよ」

イレーザ「魔力を与えて大きくしたいみたいですね」

シャニア「で、あなたは休暇中でしょ。彰斗が来る時間は夕方なんだから、早過ぎ!」

イレーザ「休暇ですから、彰斗を眺めに来たのです」

シャニア「あっそ!」

イレーザ「実際に、スライムがあれほど肥大するなんて知りませんでした」

シャニア「私も知ってたら、枕なんかにしないわよ」

イレーザ「あれ、再現できますよね?」

シャニア「出来ると思うけど、私はもう無理よ? リネア様に頼まれても嫌!」

イレーザ「ずっと寝られますよ?」

シャニア「仕事中に寝るから良いのよ! 寝るのが仕事は嫌! 楽しくないでしょ!」

イレーザ「確かに……」

シャニア「試すなら、別の使徒を使えばいいじゃない? あっちでフラフラしているのが多少いるでしょ?」

イレーザ「……そうですね。彰斗はスライムだけの狩場を望んているようですし、リネア様に相談してみます」

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