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スライムを狩る仕事です。  作者: 紅花翁草


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◆添島恵美視点◆


 ブラックホーンボアの一件から一夜明けても、私の中の感覚はまだ落ち着ききっていなかった。

 レベルが上がった。確かに、それは嬉しい。けれど、身体がそれに追いついているかと聞かれたら、正直に頷けない。


 そんな私達の様子を見ていたのだろう。

 朝の打ち合わせで、大谷さんは少しだけ言葉を選びながら話を切り出した。


「レベルは上がったがな。だからって、いきなり無茶をする必要はない」


 私達全員を見回し、大谷さんは続ける。


「講習はまだ残り3日ある。この3日は、格下のゴブリン相手に、連携と戦闘感覚を固めるのはどうだ?」


 その言葉を聞いた瞬間、胸の奥で何かがすっと収まった気がした。

 真名も、迷うことなく頷く。


「うん。私も、それがいいと思う」


「私も賛成です」


 声に出してそう言いながら、私は内心でほっとしていた。

 強くなった、というより――変わってしまった。

 その感覚を、ちゃんと確かめる時間が欲しかったから。


「それとだ」


 大谷さんが真名の方を見る。


「大豊。大剣を試してみないか?」


「……え?」


 一瞬、真名は目を丸くした。でも次の瞬間、その表情がぱっと明るくなる。


「試したい!」


 即答だった。

 真名らしい、と私は思う。確かに大剣の方が彼女の動きに合っている。




 狩場はスライムの森の東側。

 いつも通り、多紀君を誘って車に乗り込む。


 移動中、大谷さんは多紀君に、昨日の件と私達のレベルが上がっていた事、今日はゴブリン狩りで調整をする事を説明した。


「いきなりの大剣ですか?」


 多紀君は少し心配そうだった。


「ああ。力が付いたからレイピアじゃ役不足だ。そして剣と盾はな、大豊の性格的に難しい。

 それで、受けも出来る大剣だ」


 その説明に、多紀君も納得した様子で頷く。

 真名は、前向きな笑顔を浮かべていた。




 スライムの森で多紀君を降ろし、そこから車で少し東へ。

 開けた草原で車が止まる。


 大谷さんが真名に渡したのは、黒一色のクレイモアと呼んでいる剣だった。

 長い刀身と、重厚な造り。


「……黒」


 真名が小さく呟く。


「ああ。切れ味が一番落ちない色だ。サイズも、これが一番合ってる」


「……それなら」


 真名はそう言って、剣を構えた。

 次の瞬間、大剣が滑らかに振るわれる。


 重さを感じさせない、流れるような動き。

 私は思わず、見惚れていた。


「急激なレベルアップは感覚を狂わせる」


 大谷さんの声で、我に返る。


「今日は、それを克服するぞ」


「「「「「はい」」」」」


 自然と、背筋が伸びた。




◆大豊真名視点◆


 ゴブリンを見た瞬間、正直に言えば少しだけ身構えた。

 レッサーゴブリンより一回り大きい。


 でも――。


(……怖くない)


 ブラックボーンボアの、あの圧倒的な威圧感。

 それに比べたら、目の前のゴブリンはずっと軽い存在だった。


 大剣を振り下ろす。


 重い。けど、思ったほどじゃない。

 刃が当たった感触は――あっけないほどだった。


 一振り。


 ゴブリンは、真っ二つに倒れた。


「……え」


 思わず声が漏れる。

 自分がやった事なのに、実感が追いつかない。


 次も、その次も。

 同じだった。


(ステータスって……こんなに違うんだ)


 高揚が、胸の奥から湧き上がる。


「過信はするなよ」


 大谷さんの声で、頭が冷えた。


「……はい」


 そうだ。

 調子に乗ったら、きっと足元をすくわれる。


「それじゃあ今日は、ロレの実とロナの実を集めるぞ。それぞれ150個だ」


 その言葉を聞いて、ふと、多紀君の事を思い出す。

 彼は、いつも通りだった。

 何があっても、変わらない。


 それが、なんだか可笑しくて。


 私は、少しだけ笑った。



鹿屋玲子「威力が凄いんですけど!?」

大谷「だろ。だから空撃ちさせたんだ。命中率が安定するまで後方からの援護射撃は禁止」

豊賀弥生「私の強化魔法は?」

大谷「これだからな。まずは全員が素の力に慣れてからにしてくれ。危ないからな」

一枝遥「先生、何故か……ゴブリンの動きが遅く見えます」

大谷「あー。視覚や聴覚も上がるからな。特に集中している時にそう感じる。だから、集中して感覚を覚えろよ」

添島恵美「真名が一人で全部倒してますけど……」

大谷「今日は大豊と添島を交互にメインアタッカーを変えて訓練。鹿屋も初撃アタックを今日から覚えるぞ」


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