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スライムを狩る仕事です。  作者: 紅花翁草


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003

 新規登録者講習の受付を済ませ、講義室で講習が始まるのを外の景色を眺めながら待っていると


「すみません。隣の席、良いですか?」


ん?


 六人掛けの長テーブルの窓際端に座っていた僕の席には、あと五席空いている。

 声をかけてきたのは、ちょうど五人の女性グループだった。ざっと見て、5人並んで座れそうな場所は他に無かった。


「あっ、はい。僕ひとりなので大丈夫です」

「ありがとうございます」


 講義室に、音量低めのブザー音が鳴り響き、壇上にいた教官らしい男性が静かに僕達を見渡している。


「それでは新規登録者講習を始めます。が、その前に少し忠告を。この夏休み時期に合わせ、皆さんのほとんどは7日間の初心者合宿に参加されています。しかし、合宿中に他者とのトラブルを起こした場合は即退所です。当然、ハンターとしての評価も下がります。くれぐれも、馬鹿な行動は控えるように」


 まあ、日本ハンターギルドのホームページを見ていれば分かることだ。

けど、たまにいるんだよなぁ……脳筋イキリハンターの身内が、その人の武勇伝を鵜呑みにしてイキるパターン。あと動画配信者の謎テンションをそのまま再現しようとする人とか。


「それでは、今から映像を流します。静かに観るように。その後、テキストとハンターカード、そして個人情報を登録済みの端末機を配布します。紛失時の再発行は、カードが1万円、端末が20万円です。なるべく肌身離さず持っていてください」


 前半の忠告は僕には関係ないけど、後半の金額に身が引き締まる。


 今の僕に20万は無理!


 場の空気が締まり、教官はテキパキと照明を消し、プロジェクターを操作して映像を再生。

映像が無事に流れ始めるのを確認すると、教官は部屋の後方へ移動して、僕の視界から消えていった。





「俺の名前は日谷潘太にちや はんた。今日も仲間と一緒にゴブリン狩りに向かうぜ」


 唐突に始まったドラマ仕立ての映像。二十歳ぐらいの青年の朝の支度から始まった。


 ……えっ、なにこれ?


「おっと! ハンターカードは忘れずにな! これが無いと俺の相棒を取り出せない! それにGPSとバイタルチェックを常時送信する腕時計型端末! こいつが無いと防壁の外には出られない! 緊急時はエマージェンシーコールも出来るぜ!」


 これでもかというほど、ハンターカードと端末がドアップで映される。

 青年が満足そうにそれを見て部屋を出ると、映像は町の上空へと切り替わり、一つの四角い町を映している。


『ここはキューブガーデンの中心地。人類の活動拠点であり、女神の加護により魔物が侵入できない聖域だ』


 渋いナレーションが入り、カメラは中心地へズーム。

 そこには白銀のオベリクスが聳えている。


『祝福を受けし者よ。女神の意思へと手を差し出せ。さすれば己の力を知るだろう。それは汝にしか見えない啓示である』


 賢そうな女性が台座に手を当てた瞬間、カメラ視点が女性の主観に切り替わり、前方に広がるホログラムへステータスが映し出される。


 おお、これはCGで再現してるのか。凝っているなぁ。

 あ、そういえば僕、これ試すの忘れてたな。帰りにやってみようかな。


 カメラは一周回ってギルド内に入り、受付の一つ「武器庫受付」へ。


 ここが武器預かり所か。

 武器の地上持ち出しは禁止、キューブガーデン内でも活動時間外の所持は禁止だ。

 だから狩りから戻ったらすぐ預けないといけない。


「相棒を寄こしてくれ」

「武器の引き出しですね。カードをセンサーに翳してください」


 ウザ絡みする青年を、受付のお姉さんは表情ひとつ変えず処理している。


 ……なるほど。ここでは「武器の引き出しをお願いします」と言うのか。

 なんだこの引っ掛け問題みたいなやつ。


 青年がカードを翳すと、映像は多数並ぶ扉の一つへ。扉が開き、アルミの棺みたいな箱が迫り出し、配送ロボットが受け取っている。


 あ、これ倉庫でよく見るやつだ。

 こういう仕組みなのか。そうだよな。ハンターの数って今50万人位いるんだった。


 ロボットは箱を受付カウンター横へ運ぶ。


「待ってたぜ相棒! 今日も頼む!」


 青年が箱を開け、鋼の剣と盾を取り出してそそくさと立ち去る。


 まあ……朝は混むしな。

 武器を受け取ったら素早く離れろと。装着は別の場所でやれと。分かる。


 分かるんだけど……このドラマ仕立ての意味が分からない。


 装備を整えた青年が向かった先には、男女四人。


「悪い、待たせたな!」

「はいはい、いつもギリギリなの知ってるから」

「ははっ、そうだな!」


 ホント……なにこれ。


 場面は変わり、パーティーがフードコートで朝食を済ませる映像から『討伐受注受付』へ。


「お待たせしました。討伐対象をお伺いします」

「Dランクチーム、リーダーの佐伯です。今日はゴブリンの巣を予定してたんだけど」


 ……まあ、リーダーはあの青年ではないよな。


 イケメンが先頭、その後ろに綺麗な女性がぴったり。

 そのさらに後ろでくっついてる男女……

 そして最後尾にあれが暇そうに……


 くっそ!


「はい。現在、6の四にあるゴブリンの集落でゴブリンキングの出現が確認されています」


 受付の言葉と同時に、背後のホログラム地図が該当区画をオレンジ色にしている。


 おお、危ない危ない、集中しないと。

 将棋の読み上げみたいな方式なんだな。危険区域がすぐ分かって便利だ。


「参加チームは?」

「Bランク3、Cランク4、Dランク15です。佐伯様はDランクチームですので、周囲の殲滅の担当になりますが、どういたします?」

「俺達も参加しよう。いいよな?」

「もちろん」「あぁ」「当然よ」「だな!」


 受付のテーブルに5枚のギルドカードが並ぶ。


 アニメならチーム名で受注だけど、ここは現代日本。

 そんな曖昧な仕組みは採用されない。

 チーム名は代表者の苗字か名前で十分。意味の無い名称をこちらが覚える必要はない。というのがギルドの回答だ。

 そりゃそうだよな。


 全員が揃って受付する理由は、カードと端末情報の一致確認、

 そして端末機は、上部のタブレット部分とベルト部分に分離する事が出来、

 ベルトを受付係が外れないようにロックする。

 このベルト部分に、GPS機能とバイタルサイン発信の機能があり、

 これで不正や犯罪を防ぎ、移動履歴も把握する。

 

「ゴブリン緊急討伐、Dランクチーム『佐伯』様、受理しました」

「了解。」

「臨時バスが十五分後に出発します」

「バスで行こうか」

「分かった」「あぁ」「了解」「先に行っててくれ、ポーション買っていく」

「遅れるなよ!」

「任せろ!」


 ここまでのやり取りだけで、情報がぎっしりだ。

 予習してなかったらまず分からない。

 配布テキストに細かく載ってるのかな。


 潘太が売店へ向かったところで映像が転換。


 部屋中央の大きなテーブルは、キューブガーデン地図のホログラム。

壁にはモニターが並び、集落の映像が映っている。


 おお、統括指令室だ!


「司令、ハンターを乗せたバスが予定通り到着します」

「偵察機から通信! 映像を出します!」


自分がそこにいるようなカメラワークでモニターへ映る。


「6の四。1時方向、8キロ地点。現在集落を出てゆっくりと南下中」


 モニターにはゴブリンキング。

現場の人達は冷静で、中央の地図へ映像が移っている。


「Bチーム全てでキングを討伐。Cは規定通り巣の中の駆除。Dも規定通り巣から溢れ出たゴブリンを殲滅。」


 司令と呼ばれた人が指揮棒で地図の一点を指している。


「3時方向6キロ地点にBチームを配置。迎え撃つ」


 映像はハンター達が森を駆け抜け魔物を倒している光景へ。

 ゴブリンの一集団に対してチーム単位で行動しているのは、経験値が魔物が消滅した場所から半径20メートル以内に均等分配されるためだ。



 迎え討つBランク3チームがゴブリンキングと対峙する映像に変わる。

 ここでは安全策を取り、3チームが同時に討伐に当たる。

 当然一人当たりの経験値は下がるけど、ギルドからの依頼なので、参加するチームも了承している。



 場面は祝勝会ムードのフードコートへ。


「みんなお疲れ。魔石換金とクエスト報酬で、1人35万だ」

「良い稼ぎね」

「普段の3倍か」

「日谷さんが頑張ってくれたからね」

「ポーション切れてなかったらもっと行けたな!」

「いや、俺達のマナがもたない。前衛をこれからも頼んだ」

「あぁ! 任せろ!」

「頼りになります」

「今日はリーダーの奢りだ! 好きな物頼め!」

「ありがとう」「あぁ」「最高!」「よっしゃ!」


 和やかに締め括られた映像はスタッフロールへ。

 そのまま映像が切れ、教官が壇の横に立っているのに気づく。


 スタッフロールまであるのか……

 あぁー、めっちゃ気になる。

 誰だよ、この脚本書いたの!


イレーザ「出てきませんね」

リネア「あちら側のルールに従っているのでしょう」

イレーザ「そのようです。こちらに向かって来たら、また連絡します」

リネア「半年以上も待ったのですから、ここで焦る必要はないですよ」

イレーザ「そうですね」

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