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スライムを狩る仕事です。  作者: 紅花翁草


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◆ 一枝遥視点◆


 車内には、朝のひんやりした空気と、少しの緊張が混じっていた。

 講習は今日で4日目。あと3日あるとはいえ、内容は日ごとに難しくなっている。


 わたしは昨日の夕方に皆で確認したことを思い出しながら、そっと口を開いた。


「……あの、大谷さん。昨日のレベル確認のことなんですけど……」


 大谷さんがミラー越しにこちらを見る。


「ん、どうだった?」


「わたし、レベル……15でした。

 で、みんなはレベル……8で……」


 車内の空気がわずかに揺れた。


「大谷さん、この差って、大丈夫ですか?」


 大谷さんは当然だという顔で言った。


「問題ない。

 いいか、お前ら。レベル差は“20を超えた辺り”から急激に近づく。

 極端な例を言えばだな……」


 指を一本立てた。


「レベル19とレベル1が、一緒に狩りを続けたとする。

 ——レベル22ぐらいで並ぶ」


「「「「えっ!?」」」」


 一斉に声が上がり、車が揺れた気がした。


「だから心配するな。誤差みたいなもんだ」


「よかった……」とわたしが息をつくと、


 真名が笑った。

「遥の努力した結果だし、全然気にすることじゃない」


 恵美も続く。

「そうそう!」



 話がまとまったタイミングで、今日の予定を告げる。


「今日はコボルトじゃない。レッサーゴブリンに行くぞ」


「え……っ」


 恵美が目を丸くする。

 真名も眉を寄せる。

 弥生は小さく肩をすくめ、

 玲子はわずかに震えたあと、すぐ胸を張った。


「べ、別に……怖くないし……!」


 いや怖いんだろうけど……かわいい。


 わたしは不安を押し出すように聞く。


「……わたし達、できますか?」


「ああ。問題ない」

 大谷さんは即答した。


「昨日の動きなら十分いける。それに——」


 バックミラー越しに、わたしたちを順番に見た。


「ハイヒール1本にホーリーポーション1本があるだろ。」


 そう、昨日作った【全166個】のうち、【160個】は売った。

 残った6個はわたしたち5人+多紀君の分。

 そこにさっき、大谷さんからホーリーポーションを1本貰った。

 詳細を聞いた時、私達は驚いていた。

 166個の魔石で驚いていたのに、実はもう30個持っていた事や、それを高価なポーションにしてサプライズでくれるなんて――


 ポーション専用の、ウエストポーチの中の小瓶に触れる。


 多紀君は助手席の横顔のまま、静かに聞いていた。

 わたしと目が合い、ほんの少し微笑む。


(……ほんと優しいな……ありがとう多紀君)





 しばらくして、車がスライムの森の入口に停まった。


「多紀君、無理はするなよ。帰りはいつもの停留所でな」


「はい。ありがとうございます。皆さんも、無理はしないでくださいね」


 多紀君が降りると、全員が手を振った。


「気を付けてね!」

「無理しちゃダメだよ!」

「水分補給しなよ!」

「……また連絡して」

「……が、頑張って……!」


 多紀君は一人ずつ視線を返し、笑って手を振った。


(……行ってらっしゃい、多紀君)


 車のドアが閉まり、

 今度はわたしたちだけの時間が始まった。




 レッサーゴブリンのいるエリアは、空気からして違って見えた。


 木々の隙間から濁った気配が漂い、動物の鳴き声も少ない。


 そして、初めて見る姿に全員が一瞬固まる。


「う……」

「これ……けっこう……」


 緑灰色の皮膚。

 ぎょろぎょろした目。

 短い手足のくせに爪は鋭く、動きだけは軽い。


(見た目が無理……でも……大丈夫……!)

 

 大谷さんの声が飛ぶ。


「豊賀。ステータス強化だ」


「は、はいっ……! 《ステータス強化》!」


 ふわっと身体が軽くなる。

 視界がクリアになり、呼吸が楽になった。


(こんなに違うんだ……これが弥生の聖女スキル……)


 真名が前に出る。


「みんな、行くよ!」


「「「はい!」」」




戦闘は驚くほどスムーズで

 3匹。

 5匹。

 また3匹。


 真名と恵美の連携は本当に見事で、

 玲子の魔法は正確で、

 弥生も時々前に出てフォローし、

 わたしも昨日よりいっぱい動けてる。


(……なんか……みんなも、昨日よりずっと強い……)


 戦闘の合間には、ロレの実の採取。


「ここにもある〜!」と真名。


「多紀君が言ってた150個までもうすぐかな」と恵美。


「ついでにお土産も採ろ。ねっ! 玲子」と弥生。


 玲子は顔を少し染めながら、


「べ、別に……あいつが喜ぶからとかじゃないし……!」


 と、また強がっていた。


(いや、絶対そう……)





 昼休憩、みんなで簡易ベンチに座り、水を飲んで息を整える。


 わたしはスマホを開き、多紀君へメッセージを送った。


『順調です。レッサーゴブリン、倒せています』


 返ってきた返事はすぐだった。


(多紀)『良かったです。皆さんの動きなら大丈夫だと思っていました』


「……っ……」


 胸の奥がじんわり温かくなる。


 グループチャットなので当然皆も見ている訳で――


 恵美達も多紀君へとメッセージを送り出していた。





 夕方 ― 停留所へ向かう途中

 私達は結果に大満足していた。


 ロレの実:150個

 お土産:10個

 レッサーゴブリン:25匹討伐


「よくやったな、お前ら」

 大谷さんの声に、わたしたちは少し誇らしくなった。


 あとは多紀君を迎えに行くだけだ。


 玲子がスマホを開き、

「今向かってるよ」

 と送信。


 ……その直後。


 ――ピュイイイイイイイッ!!!


 車内に鋭いアラームが響く。

 端末画面が赤く点滅した。


「えっ……?」


「な、なに……?」


 大谷さんの表情が強張り、低く言った。


「俺は運転中で確認出来ない。添島、端末機のメッセージを読んでくれ」


「3の九にブラックホーンボアの出現を確認。周囲で活動中の者は直ちに避難」


 それは私達が居た場所のすぐ南の地区だった。



多紀彰斗(あれ……なんか上から目線で答えてないかこれ? えっ……皆の返信が嬉しそう……いや、気を付けないとな)

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