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スライムを狩る仕事です。  作者: 紅花翁草


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002

 覚醒者となってもハンターギルドで登録を済ませないとハンターにはなれない。

 そのハンターギルドがある場所が、出現した巨大な扉の先。

 一辺が110kmある巨大な立方体の世界。国連はその構造から『キューブガーデン』と名付けた場所。

 そして扉の数は世界で7カ所。その一つが日本の三重県桑名市にある。

 世界で7つ、日本で一つという希少なキューブガーデンが、僕の住む場所から電車で30分と直通の専用バスで30分で辿りつける距離に住んでいる事も僕にとってすごく幸運だった。

 そしてハンターの新規登録を行っているのが毎週の土曜日。

 僕が15歳の誕生日を迎えた今日だった。


「お母さん、行ってきます。日葵まだ寝てるから。」

「そう。わかったわ。彰斗、気を付けていってらっしゃいね」

「はい!」


 夜勤パートから帰って来たお母さんとほぼ入れ違いでアパートを出た僕の足取りは少しだけ軽い。



 桑名駅からの直通バスには、僕と同じような年代の子供が多く乗っていた。

 彼らもハンターの新規登録に来た人達だろう。

 動きやすいスポーツウェアの上下で揃えている。もちろん僕もその一人だ。




 突然、車内が一瞬だけトンネルに入ったように暗くなり、それと同時に僕は少しだけ体が軽くなったような感じを体感する。

 直ぐに外からの光が戻り、そして窓の外を見るとそこには、真っ白な四角い巨塔が聳え立つのが見えた。

 公式でオベリスクと呼んでいるこの建造物が、周囲1kmの範囲に結界を張り、魔物の侵入を塞いでいる。らしい。

 それはこのオベリクスとオベリクスを中心に四方を囲む石の城壁が他のキューブガーデンでも同じようにある事に加え、地球からの出口がオベリクス前。その結果、城壁の内側がいわゆる『安地』なのでは?という見解から、数年の観察で『安地』だと確付けされた経緯がある。

 それともう一つ。オベリクスには特別な機能が確認されている。

 覚醒者がある一部に右手で触れると、その者だけが見れるステータスボートが出現する。

 この結果から、国連から独立した組織『国際ダンジョンハンター機構(IDHO)』が、オベリクスをキューブガーデンの最重要建造物だと認定。

 それと同時に、ハンターギルドを創立。それから7つのキューブガーデンを一つの国家として管理・運営する組織となった。




 バスから降りた僕は、小学校の社会見学以来の『国際ハンターギルド本部』の建物を見上げる。

 そして変わらず、その大きさに圧倒される。

「ぼけっとすんな!」

 僕の横を通りながら睨め付けて来た男性は金属のプロテクターを手足に着けていたので、現役のハンターだと認識。

「す……」

 すみませんと謝ろうかとしたけど、既に距離が離れていた為、僕は軽く頭を下げておいた。

(そうだな。受付に向かわないと)


『ハンター登録をご希望の方は、こちらにお並びください』

 という看板の隣には既に長い列が出来ていた。




 列に並んでから30分程の時間をかけてようやく受付に辿り着く。

「ハンター登録で間違いありませんね?」

「はい」

「では、こちらの用紙に記入後、隣の窓口へ個人証明カードと証明写真を一緒に提出してください。写真がなければ、あちらの撮影機をご利用いただけます」

「はい」


 用紙を受け取り、記入台で必要項目をすべて埋める。

 証明写真は高校入試用の余りを使うことにした——六枚セットで一枚しか使わないのに千円は高い。


「よろしくお願いします」

「確認いたします……えっ、魔眼ですか……」


受付のお姉さんは一瞬だけ残念そうに僕を見たが、すぐに書類へ視線を戻した。


「はい、記入に問題はありません。このあと11時から新規登録者講習がありますので、必ず受講してください。受けないとハンターカードが発行できません」

「はい」

「では1時間ほど館内でお待ちください。10時50分になりましたら、二階第一講義室前の受付へお越しください」

「分かりました。ありがとうございます」


 僕は受付所から見えるフードコートへ向かい、無料の飲料水をコップに入れ、誰もいないカウンター席に腰を下ろした。


 受付のお姉さんの反応は、まあ当然だ。

13年前の黎明期、発現率一%だったギフト『魔眼』は、魔物の位置だけでなく急所である魔核の場所まで視認でき、最前線パーティーでは欠かせない存在だった。


だが数年後、魔核位置のデータがすべて教本化され、さらに魔獣が“座標固定リポップ”する仕様まで判明したことで魔眼の価値はすっかり落ち込み、今では「外れレアギフト」とまで言われている。


だけど。


僕にとっては、最高の“当たりレアギフト”だ。


「スライム100匹で日給数10万だぞ。最高じゃないか」

「まったく、その通りだな」

「えっ!?」


振り向くと、中年の先輩ハンターらしき男性が立っていた。


「まずは自己紹介だな。俺の名は大谷修司。“魔眼”持ち。ハンターランクはCだ」

そう言って、右手の紋章を見せて僕の左隣に腰を下ろす。


「僕は多紀彰斗。ギフトは魔眼です。さっき登録したばかりです」


 僕も右手の甲を見せる。


「ああ、見ていたぞ。受付嬢のひと言も聞こえてな。気になって近づいたってわけだ」

「そうなんですか。じゃあ?」

「おうよ。スライム狩りの先輩として、アドバイスに来たってわけだ。……まあ、さっきの言葉を知ってるあたり、教えることはそんなに多くなさそうだが」

「いえ、ルールやマナーは一般常識程度ですし、魔眼の実用例を詳しく知れたら心強いです」

「そうだな。ハンターの基礎は講習で教わるが、魔眼を使ったスライム狩りには少しコツがある。それを教えてやろう」

「ありがとうございます!」


大谷さんは名刺を差し出してきた。名前と連絡先、SNS登録用のQRコードが記されている。

(ああ、僕も名刺とか作ったほうがいいのかな?)


「昼から狩りに行く時間はあるか? 講習が終わらないと街の外に出られんが」

「はい。もともと講習後から15時まで少しだけ狩場へ行くつもりでした。ゴム手袋と金串で試そうと思って」

リュックからバーベキュー用のステンレス金串を取り出して見せる。


「なるほど、事前学習はしっかりしてるな。それなら効率の良い狩り方ってやつを伝授してやろう」

「はい!」

「集合はここでいいな。午後1時に」

「分かりました。よろしくお願いします!」


言いたいことだけ言うと、大谷さんは颯爽と受付ロビーへ戻っていった。

(あれが大人の対応ってやつかぁ)



リネア「来ましたね」

イレーザ「それでは、シャニアさんの所へ向かいます」

    

リネア「ちょっと待ちなさい。確認、確認忘れてますよ……イレーザ、彼は通り過ぎました」

イレーザ「えっ?」


 

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