016
ハンターギルドの東棟9階
女性ハンター専用フロアの一室には、柔らかいライトが灯り、五人の少女達が思い思いに腰を下ろしていた。
遥はベッドの端でタオルを首に当て、ゆっくりと呼吸を整えている。
魔力消費の疲労はまだ身体に残っているが、表情はどこか満足げだ。
「遥、お疲れさまです」
恵美が穏やかな声で言う。
「うん……ありがと」
遥は短く返す。
「しかし本当に、実際に金額を目にするとすごいですね」
弥生がついさっきに行われていた買い取り風景を思い返していた。
「コボルト10体で1万5千円。リーダーでプラス3千円」
「今回は売らなかったけど、ポーション10個で2万円」
真名はスマホを見つめながら小さく息を漏らした。
「……改めて、多紀君のやってる事が効率いいっていうのがよく分かるな」
「そうだね」
遥は頷く。
「スライム狩り、危険が無くて、安定してて、収入も高い。仮に、私達5人がマナベリーを集めたら1時間で20万円……正直、私達だけで全部揃えるより手堅いよね」
恵美が冷静に締めた。
◆
そんな中で――玲子だけはスマホを閉じたり開いたりを繰り返していた。
「玲子、その……何か気になる事があるのか?」
真名が心配そうに聞く。
「べ、別に何もないわよ……」
玲子はいつもの強気口調を維持しようとするが、語尾が少し震えている。
弥生がにやりと微笑む。
「……ねえ、玲子ちゃん。
さっきの“よろしくお願いします”のメッセージ、何回見返してた?」
「なっ……! 見てないわよそんなの!」
「はい嘘。20回は見てたわよ」
恵美が即答した。
「20回……!?」
真名が絶句する。
「ち、ちがっ……ちがうのよ!
あの……その……あいつが、もっと何か送ってくるかもしれないじゃない……!」
玲子は顔を真っ赤にしながらスマホを抱く。
「でも一目惚れなんでしょ?」
弥生のとどめの一撃。
「はっ!? 違うって言ってるじゃないのよ!!
ただ……その……礼儀正しくて、真面目で、強くて、
えっと……その……一緒にいて嫌じゃないってだけで……!」
「それ、好きって言わないの?」
遥がぽそっと呟く。
「う……ぐっ……!」
玲子は、言葉を失った。
恵美がまとめに入るように口を開く。
「まあ、玲子の気持ちはさておいて……」
「さておいて!?」
「現実的な話をすると、今後は魔石の売買で多紀君とは関わっていく事になる。それは誰にとってもメリットがあると思う」
「だな。安全で、収入も高い」
真名が頷く。
「……でも、多紀君は一緒に冒険するつもりはないんだよね。
“スライム狩りに専念する”って言い切ってたし……」
遥が言う。
「そこは尊重しましょう。
こっちはこっちで強くなるし、彼は彼で目標を持ってるわけだから」
恵美が締めると、皆が自然と頷いた。
「……でもまあ、グループチャットは作ったし」
弥生が微笑む。
「そうだよ。連絡くらいはできるし……
その、仲良くなるチャンスはあるんじゃない?」
遥も小さな声で言う。
「……っ」
玲子は小さく唇を噛んだ。
「……いつか、仲良くなれればいいわよね……」
その小さな声は、皆に届いた。
そして部屋は、再び女子会の明るい空気に包まれていった。
添島恵美(一目惚れだったかぁ~)
大豊真名(彼との連携……楽しかったんだけどな)
豊賀弥生(良いなぁ~玲子。恋愛かぁ~)
一枝遥(玲子が好きになるの分かるかも)
鹿屋玲子(今頃、なにしてるのかな?)




