015
巨大スライムが霧散し、光の粒が舞い落ちていく。
その中心から――
「いっ……たぁぁぁぁぁぁ……っ!? 何よこれぇぇぇ!?」
光の中から、小柄な少女が転がり出てきた。
見た目は十六歳前後。
白い肌に長い紫銀の髪、身長は僕より少し小さい。160cmくらいだろうか。
だが、その表情は少女らしさとは程遠い。
「ん……? ここ、どこ……って、ちょっとイザーラ!? 何であんたがいるのよ!!」
文句を言いながら立ち上がった瞬間、
イザーラさんが満面の笑みを浮かべた。
「目が覚めましたね、シャニアさん。6年間、お休みなさいでした」
その笑みは、どこか嬉しさと恨みが入り混じったものだった。
「やめてよその笑顔! 絶対何か怒ってるやつでしょう!? ていうか、6年って何よ6年って!!」
シャニアさんは、少女らしい見た目に反して、上司然とふんぞり返る。
だが、イザーラさんの身長は180cmくらい。
シャニアさんは160cmそこそこ。
見上げる形になってしまうシャニアさんは、露骨に悔しそうに顔をゆがめた。
「ちょ、ちょっとは気を遣いなさいよ……背、高いんだから……」
「なんでしょう?」
「なんでもないわよ!!」
バストの差でも負けているのが気に入らないのか、
シャニアさんは腕を組んでぷるぷる震えていた。
◆
シャニアさんは辺りを見回し、ようやく状況を理解したようで僕の方を見た。
「あれ? この子……誰?」
「多紀彰斗さんです」
イザーラさんが答える。
「え、可愛い……女の子じゃないの?」
「男の子です」
「まじで!? ……え、ってか、その持ってる武器…さっきの痛みは?」
僕は少しだけ視線を逸らした。
「……すみません。言われた通りに撃っただけで」
「そういうことなら許すわ。てか、痛くして起こすとかひどいじゃないイザーラ!」
「上司が6年間もサボっていれば当然です」
イザーラさんが淡々と返す。
「サボってない! 寝ただけよ! 仕事は……あんたに任せてたんだから! それからさっきから6年ってなによ!」
「丸投げの言い換えですね」
「うぐっ……!」
痛い所を突かれ、シャニアさんは思わず後ずさる。
「まあ……6年の話は後でしますが、あなたの昼寝のせいで、あなたが管理していたダンジョンはすべて私が見ていました」
「ぐぬぬぬ……!」
シャニアさんは悔しさに震えた。
イザーラさんは僕へ向き直り、表情を静かに戻す。
「さて、多紀さん」
「……はい」
「本来、神器を他者へ渡すという行為は、“眷属にする”という意味を持ちます。
だから私は……慎重に、そして長く待ちました」
銀髪を揺らし、柔らかく微笑む。
「魔眼を持つ、可愛らしい男の子が現れるのを」
シャニアさんが「ちょっと待ってよイザーラ! それセクハラじゃない!?」と割り込んだが、
イザーラさんは完全に無視した。
僕も同意します。
「あなたなら、魔眼で魔核を見抜き、あの武器で届かせられる。
そして――私達の眷属として、守護者の一員にもなれる素質があります」
守護者……眷属……?
初めて聞く言葉が続く。
あれ?
何か思い出しそうになったけど、僕は今言わなけれならない事を言葉にした。
「……すぐに答えは出ません。今は家族のことが大事ですので」
「ええ。分かっています。急かしはしません」
イザーラさんは深く頷いた。
後ろでシャニアさんが「それよりまずご飯にしない? お腹空いたんだけど!」と暴れていた。
イザーラさんは小さくため息をついた。
「……こういう方ですが、どうか見捨てずにいてください」
その声には、上司と部下という枠以外の、また違う感じの絆の気配が見えた。
リネア「シャニアは……変わりませんね」
アステリオン「何かしら問題を起こす、親孝行な娘ですね」
リネア「ふふっ」




