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スライムを狩る仕事です。  作者: 紅花翁草


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14/27

014

 イザーラと名乗った女性は、ゆっくりとスライムへと手を向けた。


「あなたを呼んだ理由はひとつ。知り合いを救ってほしいのです」


「知り合い……?」


「ええ。管理者である私の上司。彼女は六年以上、あのスライムの中で眠り続けています」


 イザーラさんの声は静かだが、奥底に怒りを押し殺したような響きがあった。


 僕は青い光の揺れる方へ目を向け……息を呑んだ。


 巨大スライムが、部屋いっぱいに膨れ上がっていた。

 小さな家なら丸ごと飲み込みそうな大きさだ。


 これ……魔力反応が強すぎて眩しい。


 そんな状態の僕の魔眼でも、スライム内部の淡く光る“核”をとらえていた。

 だけどその核のすぐ隣。


 そこに、ひとりの女性が眠っていた。


「……あれが?」


「そう、あれが上司のシャニアです。彼女はダンジョンの管理・構築を担う管理者のひとり。彼女も女神の使徒です」


 イザーラさんは静かに続けた。


「六年程前、彼女は新しいダンジョンを形成するため、この地下遺跡を訪れました。そこで……スライムを枕に昼寝をしてしまったのです」


「……は?」


「説明すると長く……はないですね。シャニアさんは膨大な魔力量を持っています。

 スライムはその魔力を“餌”と認識し、吸収し続けた結果、あのように巨大化したのです」


 とんでもない話だった。


「では、シャニアさんは……ずっとあの中で?」


「はい。魔力を吸われ続けていますが、管理者は肉体が強化されているため死にはしません。ただ……ずっと眠ったままです」


 六年も。

 そんなことがあるのか。


「彼女を助けるには、スライムを破壊するしかありません。しかし普通の攻撃では、内部の核にたどり着けません。かと言って私が力を使えば彼女は塵となるでしょう」


 イザーラさんは僕を見つめた。


「だからこそ、あなたが必要なのです。

 “魔眼”で核の位置を正確に捉え、そこへ攻撃を届かせることができる唯一の存在」


 そう言うと、彼女は何も無い空間から白銀に金縁の……そのままの形で言えば大きなライフルのような武器を手にする。


「それは……」


「対物ライフルを模倣した武器です。あのスライムの魔核を破壊させるために私が創製しました」


 差し出されたそれを、僕は慎重に受け取った。

 見た目の重厚さに劣らず、ずしりと手に重みが伝わる。


「で、でも……核は女性の、お腹あたりにありますよ。撃てば……当たります」


「大丈夫」

 イザーラさんは微笑んだ。でもちょっと怖い。


「その程度の武器で、私達使徒には傷は付きません。むしろ、起こすために、その痛みが必要なのです」


 淡々とした声だった。

 嘘をついている気配はない。


(……やるしかない、か)


 僕は巨大スライムへ向き直る。

 魔眼を開き、核の位置を正確に捉える。


 深く息を吸い、ゆっくりと狙いを定める。


(え…ちょっとまって…こういうのって反動で僕が吹っ飛ばないか?)


「あの…これ撃ったら衝撃凄くないですか? 僕の肩とか壊れませんか?」

「心配には及びません。それはもう貴方の神器ですので、傷を付けるという事は起きません。」

「し…」


(いや、考えるのはもう止めよう。)


「……撃ちます」


「ええ」


 引き金を引いた瞬間、洞窟内に乾いた破裂音が響き――


 巨大なスライムの中心に向かって、光が一直線に走った。


 次の瞬間。


 弾け飛ぶようにスライムが夢散し、飛沫が光の粒となって消える。

 そして奥から――


「いっったぁぁぁぁぁぁぁーーー!?!?


 場違いなほど元気な悲鳴が響いた。


 その声は、六年間眠っていたとは思えないほど力強かった。


イレーザ(やっとこの時が来た! さぁ! シャニアさん! リネア様の……いえ私からの鉄槌を喰らいなさい!)

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