012
ロナの木の麓で、僕達はささやかな祝勝会をしていた。
採れたてのロナの実は黒いトマトのような見た目なのに、口に入れると濃厚な葡萄のように甘い。
豊賀さんが「おいしいです」と目を細め、一枝さんが「ね……甘い」と頬をゆるめる。
添嶋さんも珍しく嬉しそうで、鹿屋さんは「……悪くないわね」と素直じゃないが上機嫌に見えた。
強敵との初勝利。
短時間だったけれど、仲間で味わう充実感は悪くなかった。
◆
夕刻が近づき、僕達は活動を終了して車へと戻った。
運転席に大谷さん。
助手席に僕。
2列目に添嶋さん・鹿屋さん・一枝さん。
3列目に大豊さんと豊賀さん。
草原を走る車内で、大谷さんがふいに口を開いた。
「多紀君。今日の戦いぶりを見る限り、添嶋さん達とパーティを組む選択肢もあると思うが……今後はどうする?」
ミラー越しに、後部座席の視線を感じる。
「……僕は、スライム狩りに専念します。最初に決めた通りです」
一瞬、車内が静かになったが、すぐに添嶋さんが口を開いた。
「うん。それでいいと思う。目的があって選んでるんだもんね」
その言葉に、大豊さんは「そっかー……ちょっと残念」と肩を落とし、
豊賀さんは「ですが、素敵なお考えです」と微笑んだ。
一枝さんは「うん……いいと思う」と短く。
鹿屋さんは窓の外を見たまま無言。
大谷さんも納得したようにうなずく。
「意思が固いなら何よりだ」
「……ただ」
僕は続けた。
「パーティは組まなくても、魔石の買い取り相手としてなら今後もお付き合いできると思います。皆さんとの縁も大事にしたいですし」
その瞬間、後部座席がわずかにざわついた。
「それなら……私とSNS、交換しない?」
添嶋さんが柔らかく微笑む。
「それなら私じゃないの?」
一枝さんがぽつりと。声はいつも通りふんわりだが、主張はしっかりしている。
僕はどう言うべきか迷ったが、そこに
「……グループチャットに誘えばいいんじゃないの」
ずっと黙っていた鹿屋さんが、視線を窓の外に向けたまま言った。
言い方は素っ気ない。
でも、その提案は一歩だけ僕に合わせてくれた距離感だった。
「そうですね。それがちょうどいいと思います」
「じゃ、それで決まりね」
添嶋さんが微笑む。
「うん」
一枝さんが頷き、
「いいと思うよ」
豊賀さんが小さく付け加え、
「ありがと、多紀君。これからもよろしくね」
大豊さんが手を挙げた。
大谷(これで……一安心だな)




