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スライムを狩る仕事です。  作者: 紅花翁草


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11/31

011

 「撤退が正解だな」と言った大谷さんが、僕達の顔色をひと通り見てから静かに続けた。


「……だが、今回は経験しておくのも悪くない。多紀君が参加すれば問題なくいける」


「僕もですか?」


「あのスピードがあれば余裕で避けられるだろう。まあ、なにかあれば俺がすぐ入るから、いい経験になる」


 そう言われてしまえば、断る理由はなかった。

 一度目の見学で、コボルト自体にそこまで恐怖を感じていなかったのも大きい。


「まあ、それなら……はい。参加します」


「よし。じゃあ全員、気持ちを切り替えるぞ」


 大谷さんの声に、添島さん達は緊張で肩をすくめている。

 けど、さっきよりは“怖いけど行けるかもしれない”という空気に変わっていた。


「大豊さん。今回、多紀君は君と同じ前衛のアタッカーに入る。二人で前を受け持ってくれ」

「……はい! お願いします、多紀君」

「お手柔らかにお願いします」


 最前列へ並び、僕と大豊さんは視線を合わせる。

 大豊さんの剣がわずかに震えているのは、緊張のせいだろうか?


「行くぞ」


 大谷さんの指示で、僕達は“コボルトリーダー率いる群れ”へとゆっくり距離を詰めていった。





 結果は……最初は、正直かなりぎこちない連携になった。


 僕が踏み込むと、大豊さんも同じタイミングで前へ出てきて、互いに軌道が被る。

 逆に僕が下がった瞬間、大豊さんも同時に下がってしまい、間合いが取れなくなる。


 コボルトの爪が交差し、土が跳ねる。


「えぃ!」


 鹿屋さんのウィンドショットが、僕達の隙を狙ってきたコボルトの側頭部を撃ち抜いた。

 突風のような魔力弾がコボルトの体勢を弾き飛ばし、その隙に僕と大豊さんが一歩引いて立て直す。


「助かった……!」

「鹿屋さん、ありがとう!」


「べ、別に。前衛が詰まってるから撃っただけよ……!」


 鹿屋さんはそっぽを向きながらも、その仕草で照れているのが判る。



 そして一度の、呼吸を合わせるポイントが掴めた途端、お互いの動きが急に噛み合い始めた。


 僕が横へ誘導するように一歩踏み込めば、大豊さんがその軌道の裏を突く。

 逆に大豊さんが強気に前へ出れば、その死角を僕が埋める。


 コボルト達の攻撃は単調。

 動きが分かれば怖くない。


 斬り払い、かわし、突き……気づけば三匹、四匹と倒していき、最後に残ったのは


「コボルトリーダーには気を付けろよ!」


 大谷さんの声で、僕は一歩前へ出た。


「多紀君、牽制だ!」


「はい!」


 コボルトリーダーは通常の個体より頭ひとつ分大きく、赤黒い魔力を纏っている。

 僕は踏み込み、フェイントを混ぜた突きで意識を完全にこっちへ向けさせる。


「今!」


 振り上げられた爪が僕へ迫った瞬間、背中側から鋭い気配。


 大豊さんの剣が、コボルトリーダーの胸部へ一直線に突き刺さった。


 光が弾け、リーダーが霧散する。


「やった……!」

「よし!」


 自然と大豊さんとハイタッチをしていた。

 大豊さんは満面の笑みで、緊張の汗を拭いながら息を弾ませている。


「すごいじゃない、真名!」

 添島さんが走ってきて肩を叩く。


 後ろの方で、鹿屋さんがじっとこちらを見ていた。

 表情はつとめて無表情。

 なのにほんの一瞬、視線にチクリと刺さるような視線が混ざった。


(……え?)


鹿屋玲子「……ずるい」


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