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◆多紀彰斗◆
「ただいま」
「お兄ちゃん、おかえり」
小学校の日葵も始業式だけなので、既に帰宅していた。
「おじゃまします」
「美奈お姉ちゃんも、おかえり」
「ただいま、日葵ちゃん」
美奈と、久しぶりに下校も一緒なので、家に寄っていく事を事前に家族に伝えてある。
母さんは、寝室で寝ている時間なので、僕達の会話は小声になっている。
ダイニングへと静かに移動すると、日葵が冷蔵庫から麦茶を持って来る。
「お兄ちゃん」
「待ってて」
3人分のガラスコップを僕を取りに、台所へと向かった。
「お兄ちゃんの学校、どうだった?」
日葵が、テーブル席に座った美奈へと話しかける。
「ん~……全然普通だったよ。頑張れって、応援されてた」
「そっかぁ」
日葵は、僕が妬まれるんじゃないかと、不安に思っていたから、美奈の言葉で笑顔になる。
僕も、多少の変化があるかも。って身構えてたけど――
思っていたよりも、周囲の反応が普通だった。
僕の私生活を知っている人達ばかりだった。
だからこそ、「良かったな」っていう応援だったのが、素直に嬉しかった。
朝倉圭太の事だけは、想定外だったけど……
たぶん、美奈が最初に気にしていたのは、朝倉のことだと思う。
まあ、それを日葵に伝えても、意味がないことだしな。
僕はコップをテーブルに並べて、麦茶を注ぐ。
「日葵のほうはどうだった?」
「ん~嫌な子の目が変だった。」
日葵の顔が、ゴキブリを見つけた時のような顔になる。
「なにか言われたのか?」
「ううん。なんか、睨んでただけ。いつもはニヤって顔だったのに、今日はムーって感じ」
「そっか」
うん。分かりやすいな。
僕と美奈の視線が合う。
「もしかして、僕が覚醒者になった事、小学校にも広まっている?」
「たぶん。そしてその子の目は嫉妬でしょうね」
「僕も同じ意見」
日葵に対して、何かされる前になんとかしないとなぁ……
もう、前倒しで転校は――
それは、まだ早い
僕は美奈の顔を見て、それは最終手段だと決めた。
◆
「それじゃあ、また明日ね」
「うん。また明日」
美奈とは1時間ほど、ハンターの事や進学の事を話し合った。
母さんが起きて来る時間なので、僕は夕飯を作り始めようとした時、
スマホのメッセージを知らせるアラームが鳴る。
(玲子)『彰斗も、ハンター養成学校の特別推薦の話ってきてた?』
そっか。鹿屋さん達にも来てたのか。
『はい。来てました。でも断りました。』
(恵美)『私達は保留』
(玲子)『断ったの? なんで?』
『妹の為に、寮生活が出来ないのと、
授業での討伐報酬は学校側のものになること。
夏休みなどの合宿期間も、その対象に含まれます。
それと、ハンターランクを上げる授業を、魔眼が受ける意味がないんです。
それに加えて、僕自身も意味がないので』
(玲子)『そうだった』
(恵美)『高校は鈴鹿周辺ですか?』
『いえ。桑名周辺で、普通科のある高校を探します』
(玲子)『普通科ね!』
(恵美)『詳しい話は週末にしましょう』
『はい。』
僕はスマホを置いて夕飯の支度へと向かった。
◆鹿屋玲子◆
「やった! 彰斗も桑名だった!
まあ、特別推薦も魅力的だったんだけど――
受験勉強かぁ……」
私は新たに作った、女子5人のみのグループメッセージ『女子会』へ切り替える。
『桑名の高校調べないと!』
(恵美)『気が早い』
(遥) 『多紀君も桑名なら、一緒の学校行けるね』
(弥生)『本格的に、みんなで住む所探さないと』
『それ!』
(真名)『それも気が早くないか?』
(恵美)『住む場所に関しては、今から押さえた方が良いかも』
(遥) 『でも、多紀君って鈴鹿から通学するのかな?
もしかして、引っ越してこない?』
『日葵ちゃんは?』
(遥) 『家庭の事情で転校なんて普通だし、それに日葵ちゃんって
4月から中学だよね? 転校するにはいいタイミングだとおもう』
『確かに!』
『彰斗に聞いてみようよ!』
(恵美)『落ち着きなさい
そういうのは顔を合わせて聞いた方が良いとおもう』
恵美の言葉に、私はゆっくりと深呼吸をする。
『たしかに』
(真名)『皆は、桑名の高校に行く事、親に話したのか?』
あっ……言ってない。
(恵美)『私は言ってある。承諾も得ています』
(真名)『もちろん、私も承諾済みだ』
『まだ、言ってなかった
今日話す』
(遥) 『私は必要ないから』
(弥生)『遥とおなじ』
『そっか。反対されても、自立できるんだった』
(恵美)『それは最後の手段に』
『うん。分かってる
じゃあ、また夜に結果報告するね』
(真名)『了解』
(遥) 『うん』
(弥生)『はい』
(恵美)『私達と一緒に暮らして、学校行って、ハンター活動をする
私以外はもう決定事項になってる
そう説明しなさいよ』
『了解!』
◆多紀家◆
日葵「お兄ちゃんどうしたの?」
彰斗「ん~。もしかしたら、鹿屋さん達と一緒の高校になりそう?」
日葵「玲子お姉ちゃん達?」
彰斗「うん。なんかそんな雰囲気だった」
日葵「良かったね」
彰斗「どうなんだろう?」
日葵「ダメなの?」
彰斗「いや……ん~。学校行事が一緒だと予定も合わせやすいか。
いいかも」
日葵「うん! 一緒になれるといいね!」




