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スライムを狩る仕事です。  作者: 紅花翁草


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103

◆添島恵美◆


 生活指導室での話が終わったあと、私達はそのまま学校近くのファミレスに向かった。

 女子バスケ部3年、全員で14人。


 2年の秋、新人戦から始まって、今年の夏の最後の大会まで。

 本当に、ずっと走り続けてきた仲間達だ。


 席に着いて、メニューを開いた瞬間。

 隣に座った逢ちゃん――

 私の代わりにキャプテンを務めてくれた子が、ぎゅっと唇を噛みしめた。


「……決勝、行けなくてごめん」


 泣きそうな顔だった。


 私は、そっと肩を寄せる。


「頑張ってたのは知ってるよ。

 結果に満足できなかった気持ちも、分かる。

 でもさ、もういっぱい悔やんだでしょ?」


 逢ちゃんが、こくりと頷く。


「だから今日は、楽しかった思い出の話をしよ。

 ね?」


 少し間があって、逢ちゃんの表情がゆっくりと和らいだ。


「……うん。ありがと」


 そのやり取りを見ていた真名が、笑いながら言う。


「練習はしんどかったけどさ」

「ほんと、楽しかったよね」


「分かるー!」

「朝練、地獄だったけど!」

「でも試合前とか、ワクワクしてた!」


 次々に漏れる声に、胸の奥がじんわり温かくなる。


 私は、少し声を張った。


「今日はね、誘った私の奢りだから。

 好きなだけ頼んでいいよ」


「えっ!?

 ほんとに!?」


 逢ちゃんが、驚いた顔でこっちを見る。


「いいの?」


「うん」

「最後の試合、見に行く予定だったんだけど……結局、行けなかったから」

「そのお詫びっていうか、罪滅ぼし、かな」


「そんなの気にしてないのに」


「うそ」

 薫が、すかさず口を挟む。


「逢ちゃん、めっちゃ寂しがってたじゃん」


「ちょっと! バラさないでよ!」


 わっと笑い声が広がる。


「でもさ、本当にいいの?

 結構な金額になるよ?」


「うん、大丈夫」

「たぶん……行けなかったその日一日分の収入で、全然足りるから」


「えっ?

 そんなに!?」


「だから気にしないで。

「さっきも言ったけど、罪滅ぼしだから。

 遠慮禁止ね」


 私はメニューを掲げた。


「それじゃ、どんどん頼みましょー!」


 テーブルが一気ににぎやかになる。





 料理が並び始めて、話題は自然とバスケの事以外になっていた。


 チームメイトの誰かの声。


「そういえばさ

 逢、告白されたんでしょ?」


「ちょっ……!」


 逢ちゃんが顔を真っ赤にする。


「大会終わったあとにね……

 男子バスケ部の人から」


「で!?」

「どうしたの!?」


 チームメイトの声に、私も身を乗り出していた。


「今度、デートして、

 その時に、返事する予定」


「きゃー!」

「青春!」


 盛り上がる女子達の中で、誰かがふと訊いた。


「ねえ、恵美達ってさ」

「ハンター講習で、カッコいい人いなかったの?」


 ――その瞬間。


 玲子の動きが、ぴたりと止まった。


 それに気付いた私は、思わず手を止める。

 真名も、遥も、弥生も。


 一瞬だけ。

 本当に一瞬だけ、時間が止まった。


「……え?」

 薫が、不思議そうに私達を見る。


「今の反応」

「5人とも、なにかある感じ?」


「そうなの!?」

 玲子が、必要以上に大きな声を出す。


「ち、違うわよ!

 玲子、な、なに言ってるのよ!」


「え?」

 逆に薫が戸惑う。


「あ……ごめん。

 なんでもないから」


 玲子はそう言って、目を逸らした。


(どうする……

 これ、どう切り抜ける?)


 私が考えていると。


「私、知ってるよ」


 チームメイトの一人が、手を挙げた。


 一斉に視線が集まる。


「恵美達が講習行ってから気になってさ。

『ハンター情報局』って配信、見てたんだよね」


 嫌な予感が、背中を走る。


「新しいダンジョンのライブ配信で、

 有名な人が、私達くらいの男の子と話しててさ。

 そのあと、その男の子が……恵美達の方に走ってく姿、映ってた」


(……え)

(あれ、映ってたの!?)


 私達の表情が、固まるのが分かった。


「あ、あの子は……ほら……」


 私は、そっと玲子を見る。


 つられるように、全員の視線が玲子に集まった。


 ――真っ赤。


 耳まで赤い。


 その瞬間、みんなが察した。


「え、玲子!?」

「もしかして……?」


 質問が一斉に飛ぶ。


 玲子に直接聞く人。

 私達4人に詰め寄る人。


 ファミレスのテーブルは、完全に玲子の恋バナ会場になっていた。


 私は、グラスを手に取りながら思う。


(……まあ、いいか)


 最後くらい。

 こんな時間で終わるのも、悪くない。


 笑い声に包まれたテーブルを見渡しながら、私は小さく微笑んだ。


◆ファミレス解散後◆


恵美「玲子、ごめん」

玲子「ほんとよもう!」

真名「まあ、玲子も顔に出てたからな」

弥生「そうですよ」

遥 「あの不意打ちはダメでしたね」

恵美「皆、変わってなくて、ホッとした」

真名「確かに、教室でも、いつもと変わらない目をしてたね」

玲子「私達が変わらなかったからじゃない?」

恵美「うん。ハンターになっても、環境が変わっても、

   学校に来たら同じだった」

遥 「うん。皆の顔を見たら、ちゃんと中学生に戻ってたよね」

弥生「そうですね」

玲子「うんうん」

恵美「残りの中学校生活をみんなで楽しみましょう!」


「「「「おー!」」」」



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