第9話 商人ギルドへ
次の日、朝の鐘の音と共に起きる。
今日は何するんだっけ…あぁそうだ、商人ギルドに行くんだっけ。
服を着がえてショッピングモールの扉を出す。
「ゲートオープン」
扉を開け中に入り「ゲートクローズ」と唱える。
今日はちゃんと鍵を閉めてあるから誰かが入ってくることはない。
今日はコメドのモーニングにしよう。
コーヒーにトーストにゆで卵、うん、美味い。
食べ終わったのでショッピングモール内を見回る。
そろそろ風呂にも入りたいよなぁ。
確か温泉が追加施設にあったよな。
「ゼン、温泉ってMPどのくらい使うんだっけ」
《はい、温泉は500万MP使います》
500万かぁ、道のりは長いなぁ。
店内は特に変わりないので「ゲートオープン」で宿の部屋に戻り商人ギルドへ行く準備をする。
「よし、そろそろ行くかな、アリス今何時だ?」
《ただいま朝の9時40分になります》
いい時間だ、10時には商人ギルドに着けるかな?
宿を出て商人ギルドへ向かう。
市場を抜けるときボルクの顔を見た。
「お、ジュンじゃねぇか、串焼き買ってくか?」
「ごめんな、今日はちょっと用事があるから、帰りにまだやってたら来るよ」
「そうか、いつもより服装がしっかりしてると思ったらそういうことか、重要なことなんだろ?頑張れよ」
「ありがとう」
そう言い市場を抜けた。
そして着きました商人ギルド。
ちょっとドキドキするな。
扉を開け中に入る。
受付に向かいマイケルさんがいるか聞く。
「ジュンが来たと言ってくれれば分かるかと思います」
「分かりました、少々お待ちください」
そう言い受付嬢は2階へ上がっていった。
しばらくして受付嬢がマイケルさんを連れて戻ってきた。
「これはこれはジュン様、今回はどのような用件で?まさかあの靴をまた売っていただけるので?」
「んー、まぁ似たようなとこですね、少し相談がありまして」
「相談、ですか?とりあえず部屋へ参りましょう」
マイケルさんに前と同じ部屋に通された。
マイケルさんは奥のソファ、俺は手前のソファだ。
「それではお話を聞きましょう、おっとその前に、売っていただいた靴ですが、5足とも貴族の方に売れましてね、いい商売になりました」
「そうですか、それは良かったです」
「して、相談とは?」
「実は店をやることにしたんですが、場所というか、集客が問題でして」
「場所?ちなみにどんなお店なのでしょうか」
「ショッピングモールですね、商店街、大型複合商業施設とも言います」
「…はい?」
そりゃそういう反応になりますよね、だって規模が違うもん。
「えっとですね、1店舗だけではなく数店舗経営する、ということです」
「あ、あぁそういうことでしたか、何店舗ほど経営されるのですか?」
「アリス、ショッピングモールって最大何店舗入る予定なんだ?」
《800店舗はあるかと》
「最大800店舗以上の経営をします」
「…はい?」
ですよね。
「えーっと、そういうものなのです、ショッピングモールとは」
「ちょ、ちょっと待ってください、それはどういうことです?土地は?どこでやるのです?人は?雇用はしっかり出来ているのでしょうか?費用は?それほどの店舗数となるととんでもない費用がかかると思いますが?」
「見てもらった方が早いですかね」
「そ、それはどういうことですか?」
「驚かないでくださいね、ゲートオープン」
すると部屋の中に木製の扉が現れた。
「こ、これはなんですか?」
「私のギフト、ショッピングモールへ続く扉です。さ、早速中に入りましょう、そうすれば分かります」
俺が先に扉の中に入る。
出た場所は南入口かな?
続いてマイケルさんも入ってきた。
「こ、これは!?」
「これが私のショッピングモールです」
「これは空間魔法ですか?」
「いや、魔法ではないと思います、神様からもらったギフトなので詳しいことは分からないですが、亜空間に出来ているみたいなんです」
「ギフト…こんな力があるとは…して、ここが店ですか?」
「そうですね、それはスーパー、色んなものが売っている市場のようなものですね」
「これで1店舗ですか?」
「そうです」
「これがこの中に800店舗以上…ここは一つの街ですか?」
「まぁ、街と言って差し支えない規模にはなると思います」
「そうですか、見て回っても?」
「はい、ご自由にどうぞ」
その後マイケルさんはいくつかの店舗を見て回った。
飲食店に行けばロボットやタッチパネルに驚き、雑貨屋に行けば種類の多さに驚き、服屋、靴屋に行けばそのデザイン性に驚いていた。
なによりも驚いていたのは安さだった。
「このレベルのものがこんなに安く売られているなんて信じられません」
値段は俺の決めたものではなく、最初から決まっていた値段だからな、もしこの値段でなにか悪いことが起きるのなら値上げすることも考えている。
「どうですか?ショッピングモールは?」
「ここはすごいですね、確かにこれなら人件費はかかりませんし、土地も問題ない、建物を建てる必要もないとなると素晴らしい商店街になると思います。ただ値段のほうが少し問題かと思いますね、私なら2倍ほど値上げして売ると思います。ただそれだと貴族の方は高いものをいいものと捉えている節があるので、そういう考えの貴族は寄り付かず、平民の方も贅沢だと敬遠してしまうかもしれません」
「まぁお金はかかっていないので気楽にやります」
「そうですね、ここまで出来ているのにお金が一切かかっていないのが強みですね、とりあえずジュン様の考えは分かりました、あとはギルドマスターにも相談してみてはいかがでしょうか?」
おぉ、商人ギルドのトップに相談出来るのか、それはいいことだ。
「今からでも大丈夫ですか?」
「はい、ギルドマスターは書類整理をするのに忙しいので部屋にはいるかと思います」
「書類整理の邪魔をしていいので?」
「息抜きも必要でしょう」
マイケルさんが笑う。
そう、かな?まぁそう言うならそうなんだろう。
「ゲートオープン」で元の部屋に戻り「ゲートクローズ」と唱える。
「さて、ではギルドマスターの元へ向かいましょうか」