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二度目の死

 マヤは白鳥に変身したラミの上で、サラマンダーの死骸を写生し終えると地面に降り立った。

 巨大な火球から皆を守り、一撃でサラマンダー仕留めたマヤの元へ、多くの兵士達が集まってきた。


 「す、すげえええ勇者様!」

 「強過ぎるだろ!!!!」 

 「勇者様!ありがとうございます!!! 貴方のおかげで国は救われました…!!!」

 「勇者様萌えええええ」


 マヤは、とめどなく送られる喝采の声に、頬を赤らめた。

 指と指をこねながら、俯きかげんでボソボソと言った。


 「…い、いえそんな……」


 ラミがマヤの耳元で強い口調のウィスパーボイスで言う。


 「おいおい、だらしないなシャキッとしろ」

 「だ、だって褒められるの慣れてないし…」


 はあーとラミのため息が耳元から聞こえた。

 兵士達はなおも口々に称賛の言葉をマヤに浴びせた。

 その度にマヤの口元が緩む。

 負傷者は、魔術師達が介抱していた。

 今回の戦いで、多数の死傷者が出たものの国に敵の魔の手が及ぶことはなかった。


 兵士たちに囲まれ、マヤが戸惑っていると、兵士の群衆のあいだから若い騎士が顔を覗かせた。


 「勇者様! 旅人の少女が勇者様にお会いしたいと言っております!」


 パチクリと目を開くマヤ。


 「た、旅人の少女ですか?」

 「ええ。どうやら今回の闘いに巻き込まれてしまったらしく負傷してしまったみたいで」


 兵士の背中から、ひょっこりと一人の少女が顔を覗かせた。

 フードのようなものを被っていて目元は見えないが、口は笑っている。


 (うわ…なんか可愛い…)


 マヤが心の中でそう呟いていると、いきなりマヤの胸元に少女が飛びついてきた。

 マヤのお腹にギュウっと抱きつくと、スリスリと顔を擦らせた。


 「わ、くすぐったい…」


 驚くマヤ。

 黒いフードを深く被っているため、顔はよく見えない。

 数十秒マヤのお腹に抱きついていたが、いきなり少女は顔を上げ、真っ正面からマヤを見た。

 マヤよりも身長が高く、年上に見える。

 カールがかった薄紫の髪に、赤い瞳。

 色白の肌はほんのり赤らんでおり、ところどころ血に濡れていた。

 表情は、柔らかく笑っている。


 (美人…)


 マヤが魅入っていると、少女が口を開いた。


 「こんにちは。貴女、勇者様なの?」

 「は、はい…一応…そう呼ばれています…」

 「私、カオスって言うの。貴女は?」

 「マヤです…」

 「ふーん」


 カオスは、ポカンと口を開けるマヤの肩を両手でスリスリと撫でた。


 (わ、わ、わ、何…?)


 驚くマヤを尻目に、頬や脇、背中を探るように撫でた。


 「うーん、見るからに普通の女の子。ちょっと華奢すぎるわね。ま、良いわ。凄まじい魔力があるのは分かったから」

 「え…」


 その時だった。

 マヤの肩にいた小猿のラミが大きな声で叫んだ。


 「コイツだ! サラマンダーの正体!」 

 「サ…サラマンダーの正体?」

 「コイツはネクロマンサーだ! サラマンダーが不能になった今、恐らく今度はお前を殺して操り人形にしようとしているんだ!」

 「そんなまさか…」


 戸惑いながらもカオスの顔を見たマヤは、ゾッとした。

 カオスが、口角を片方だけ小さく上げ、冷たい笑みを浮かべていたのだ。

 その目はギラギラと血走っていて、マヤを捉えている。

 マヤが一歩、後ろに下がった瞬間ーー


 グサリ


 背中にじわりと熱いものを感じた。


 ーーえ?


 背中をさすると、何か硬いものに当たった。

 ドロっとした嫌な感触が手を伝う。


 「……これ…」


 はっとした。

 刃物で刺されてるーー

 認識した途端、マヤは膝から崩れ落ちた。

 ずきり、ずきり、と背中が痛み出す。

 傷口からドクドクと生暖かいものが溢れ出すのが分かった。


 (誰が…)


 烈火に焼かれるが如く激しい痛みが襲う。

 マヤが見上げると、一人の兵士がマヤを見下ろしていた。

 ゆらゆらと肩を不気味に揺らし、その目はマヤを見ているが、生気を感じられない。

 まるで、魂のない玩具が動いているようだったーー。

 マヤを刺した兵士は、他の兵士達にすぐに取り押さえられた。


 (なん…で…)


 するとカオスが、倒れ込むマヤの目の前に屈んだ。

 ニヤニヤと嫌な笑いを浮かべながら、マヤの頬を撫でる。


 (…まさかこの人…ラミさんが言っていた通り…本当に………)


 段々意識が遠のいていくマヤの耳元に、カオスがふっくらとした唇を押し付けた。

 声を潜める。


 「これで、貴女の体は私のもの」

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