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92話

「今日の大会のためだけにこれだけの冒険者が集まるなんて本当に凄いですよね。この町では見たことない方たちも大勢いますよ」


 マリリンは冒険者ギルドの職員ということもあり、冒険者たちの顔も覚えているのでござるな。職業的には当然のことなのでござろうが、拙者には興味のない奴らの顔を覚えるなんて到底無理でござるよ。


「マリリンの見たところAランク冒険者以上の冒険者はいるでござるか? 拙者にはわからないのでござるよ」


「ああ、それもそうですね。私もこの町の冒険者の方しかわかりませんが……あそこにいるのはAランク冒険者のセルモントスさんですね。このあたりにいるのはセルモントスさんですかね」


「強いのでござるか?」


「それはもちろんですよ。Aランク冒険者なんですよ。相当な実力者です。この町でも名の通った冒険者の一人ですね。もし対戦することがあれば十分気を付けてください」


 所詮はAランク冒険者でござるが、拙者のような実力とランクが見合っていない冒険者もいるかもしれないでござるからな。負けるつもりは微塵もないでござるが、油断はしないようにしておくのがいいでござるかな。


「大会に出場される冒険者の方はコロシアムの中へ移動お願いします!!」


 突然、大きな声で案内が開始されたでござるぞ。

 声のしたほうを見ると、メガホンのような物を片手に呼びかけている女性が立っているでござる。係員のはずでござるし、もう後は指示に従うだけで問題はなさそうでござるな。


「よかったですね。どうやら、ここで待機しておいて正解だったみたいですよ」


「ありがとうでござるよ。これで、拙者が優勝するための最大の難関でござった大会へ出場することが無事に達成されるでござるよ。後は、軽く勝ってくるだけでござるな。ああ、それとこの前ギルドのお姉さんに拙者にかけるよう約束をしたでござるから、きっと見に来るはずでござるよ。マリリンからしたら先輩に当たるのでござるよな。賭けもしているでござるし来るでござろう」


「え? 誰とそんな約束したんですか? 私が知らない間に先輩と仲良くなっているなんてタケシさんも隅に置けないですね」


「拙者もクエストの追加報酬を制限されるわけにはいかにでござるからな。やむを得なかったのでござるよ」


 この大会で優勝すれば、あの山に限っては追加報酬の文句を受けることがなくなるでござるからな。安心して狩りまくれるということでござるよ。それにプラスで優勝賞金までゲットしてしまえば当分の間は安泰でござるよ。


「へぇー、それじゃあ今日先輩に出くわしたら誰がタケシさんと約束したか大体予想がつきますね。ちょっと観客席にも注意を向けないといけなくなりました」


「頑張って探してみるといいでござるよ。仕事の都合で来られるかわからないと言っていたでござるが、金と拙者との賭けもあるでござるしな。まあ来るでござろう」


 そういえば、クエストの報告を担当する職員と伝えればマリリンも誰かわかるでござろうな。まあ、こっちから言う必要もないでござるし、追加報酬のことをちょっと考えれば拙者がどの職員と賭けをしたかわかるはずでござろう。頭を使わせるために拙者からは言わないようにするでござるよ。


「それでは、行ってくるでござるよ。マリリンも大会を楽しんでくれでござる」


「頑張ってくださいね。しっかり応援してますからね」


「決勝トーナメントとの間には休憩もあるでござろうし、その時はお昼を一緒に食べに行くとするでござるかな」


「いいですね。まだ、全部の出店を食べきれていませんからね。ご飯食べられるのは大歓迎です」


「今回は奢るのにも限界があるでござるからな。少しは遠慮するのでござるよ」


「わかってますよ。それに、休憩時間も限られていますからね。そんなに長時間食べ歩くことがそもそも不可能ですよ」


 それもそうでござるな。

 また昨日みたいにマリリンに食べられたら拙者の懐事情もピンチへ陥ってしまうでござるからな。いくら、今日まとまったお金が入ってくるとは言え、宿代もまたおさめておきたいでござるしあまり金を使うわけには行かないでござるよ。


 マリリンと一時別れを告げ、冒険者がぞろぞろと入口から中へ入っていく列に並んだ。


「予選の組みわけを行いますので入場の際に、箱からくじを一枚引いてください!! そこに書いてある数字でグループを決めます!!」


 箱を持った職員たちがずらりと並んでおり、そこから一枚紙を引くということらしいでござるな。

 この組み合わせ次第では、いきなり決勝トーナメント出場が絶望的になったりするでござるからな、拙者以外は。特に、どのグループでも変わりはないでござるし、適当に引いてしまって構わないでござるな。


「こちらからどうぞ!! どこで引いても同じなので空いている場所にお願いします!!」


 案内にしたがって進み、一番手前の職員が持つ箱から紙を一枚引いた。

 半分におられたその紙を開くと、


「お、1でござるか。ということはいきなり出番でござるな。腕が鳴るでござるよ」


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