9話
ものすごい轟音を立てて、放った斬撃がまっすぐ飛んでいく。
バキバキバキバキバキ!!!!!
遠くのほうで生き残っていた木も根こそぎ切り倒してしまった。
流石は強化された拙者の本気でござるな。さっきの倍くらいの飛距離が出ているのではござらんか? 拙者も進化しているということでござるな。これほどまでの威力ならば、もう文字通りすべてを一刀両断するスキルとして使えるでござろう。
「今回はなかなか声が聞こえてこないでござるな。もしかすると、拙者が思い込んでいただけで、これが要因ではなかったということでござろうか?」
目論見が外れてしまったかと思われたが、
【レベルアップしました】
【レベルアップしました】
【レベルアップしました】
聞こえてきたでござるよ。やはり拙者の予想はあたっていたでござるな。これがレベルアップを起こしていたということで確定でござるよ。しかし、この渾身の一刀両断がレベルアップにつながっているかは以前謎のままでござる。
「木を切り倒すことがレベルアップにつながっていることがないということはもうわかっているでござるから、それ以外に何かが起きているはずでござる。拙者の目にはただ斬撃が木をなぎ倒していくのが見えていただけでござるというのに……あれ? もう声が聞こえなくなったでござるな、今回はやけにレベルアップが少なかったでござるよ」
今回は3回レベルアップをしたという声が聞こえてきたので、おそらくレベルが3アップしているのだろうが、前回はこれとは比べものにならないほどのレベルアップをしていたはずでござる。なぜ、今回は3しか上がっていないでござるか? もしや、同じ方向に打ったことで斬撃が一刀両断したものがすくなくなっているという可能性はござらんか?
前回は、目の前に木が生えまくっている状況で放ったが、今回は既に切り倒された後の場所に斬撃を放っている。これにより、スキルで一刀両断したものの数は格段に減っているはずだ。でもおかしいな、それでも強化されて被っている場所もあったでござるが、それ以上に広範囲に斬撃が飛んで行ったはずでござる。
「わからないでござるよ。誰か説明してくれる心優しきものはいないのでござるか!?」
こんな森の中で人と出会うことなんてそうそうないとはわかっているでござるが、心の嘆きをどうしても声に出さないと気が済まなかったでござるよ。
大体、人がいたら今の拙者の斬撃で死んで……まずいでござるよ、拙者は危害を加えてくるものには容赦はしないでござるが、無関係のものまで殺そうなんて野蛮なことはするつもりはないでござる。もしも、人がこの森の中を歩いていたらさっきの斬撃で上半身と下半身がさよならしてしまっているはずでござる。生半可な防御ではもちろん無意味でござるし、どんなに硬く防御しようがそれを貫通してしまうのが拙者のすべてを一刀両断するスキルでござる。つまり、この場にいたものは既に死んでしまっているということでござるな。まあ、大丈夫でござるよ。そう都合よく森の中を歩いているものなどおらぬでござろう。
ガサガサッ。
拙者のすべてを一刀両断するスキルからわずかに免れた右側の茂みから何かが動くような音が聞こえてきたでござる。
「むっ、何やつ?」
とっさに右側へ振り向き、何が現れても対応できるよう体勢を整える。
すると、茂みから黒い影が飛び出してきた。
「ガウッ!! ガウガウ!!」
黒い毛並みの犬、いや狼でござるか? まさかこのような動物が異世界にも生息しているとは、驚きでござるな。それも、日本では絶滅してしまっている狼でござるよ。是非、拙者のペットにして連れていきたいところでござるな。おとなしくいうことを聞いてくれる賢い狼でござればよいが……。
「ほら、ゴエモンこっちへ来るでござる」
「ガウッ? ガウッ!! ワォォォーーーン!!」
「こら、吠えるんじゃないでござる。おとなしくいうことを聞けば拙者のペットにしてやるでござるよ? 光栄でござろう?」
今のは威嚇のつもりだったのでござろうか。その後も拙者に向かって何度か吠え、遠吠えを繰り返しているでござるよ。まさか、仲間をここへ呼んでいるというわけではござらんな? あまり数が多いと連れて帰れなくなるでござるよ。
「ワォォォーーーン!! ワォォォーーーン!! ワォォォーーーン!! ガウ?」
遠吠えを繰り返すも、一向に仲間の狼が集まってくる様子はないでござる。まさか、こいつは群れからはぐれてしまった残念な狼なのではござらんか? 拙者は落ちこぼれでも面倒を見てやるでござるよ。人間も動物も同じでござる。優秀なものとどうでないものが存在してしまうのでござるよ。
「お前も不憫でござるな。よし、わかったでござる。拙者がお前の新たな群れのボスになってやるでござるよ。そうすればお前も晴れて副ボスというわけでござるよ」
狼が何かに気が付いたかのように、拙者が切り倒した木のほうへ走っていくでござる。
「どうしたでござるか? そっちは危ないでござるよ。倒れた気に挟まると危険でござる。戻ってくるでござる」
「ガウッ!! ガウッ!!」
少し追いかけてみると、倒れた木の間にこいつと同じ狼が頭部を失った状態で倒れていたでござる。
よく見ると、こいつの首のラインが拙者が放った斬撃とラインとちょうど同じ高さでござるよ。もしや、こいつは群れからはぐれたわけではなく、拙者の斬撃で群れを失ったのではないでござるか? これは申し訳ないことをしてしまったでござるよ。拙者も反省でござる……。




