86話
「それでは明日は頑張ってくださいね。今日と同じ時間に冒険者ギルドに集合で行きましょう」
「そうでござるな。拙者は大会の会場がわからないでござるからな、マリリンに案内してもらわないと優勝候補が会場につけないという大惨事になってしまうでござるよ。拙者が出場しない大会なんて何の意味もないでござるからな」
「言いすぎですが、タケシさんの実力ならいいところまで行くのは間違いないと私も思っていますよ。組み合わせ次第では優勝なんてことも……いや、流石にSランク冒険者の方たちには勝てないでしょうか」
そのSランク冒険者の方を軽く殺してしまっているのでござるよな。言うわけには行かないので拙者だけの秘密でござるが、この実績だけでもSランク冒険者に引けを取らないと証明されているようなのでござる。
「まあ、明日を楽しみしておくといいでござる。拙者が圧倒的な力を持って優勝するだけでござるからな。心配なのは死者を出さないように手加減することでござるな。周囲の被害も考えるとかなり力を抑えておかないと会場ごと破壊してしまうでござるよ」
「会場には障壁が張ってあるので滅多なことでは観客に被害が出るなんてことにはなりませんよ。安心して戦ってもらって大丈夫です。万が一、障壁が破壊されるような自体になっても……まぁ、きっと大丈夫ですよ。会場にはたくさんの冒険者が居ますからな。障壁くらい張ってくれるでしょう」
随分と楽天的でござるな。
その障壁とやらの耐久性を試合の前に確かめて起きたいでござるな。拙者のすべてを一刀両断するスキルを防ぐことができるのかどうか、防ぐのは無理にしても出力を落とせば、守り切れるかもしれないでござるからな。
「その辺りは明日会場で確かめるとするでござる。明日は案内頼むでござるよ」
「任されました。私がタケシさんを責任を持って会場まで連れていきますね。それじゃあ、おやすみなさい」
「お休みでござる」
マリリンは建物の中へと消えていったでござる。
このアパートのような建物に住んでいるとは拙者には耐えられないかもしれないでござるよ。
「非常にまずいでござる……帰り道がわからないでござる」
マリリンの家から、意気揚々と宿を目指した拙者でござったが、いつの間にまったく見覚えのない場所を歩いていたでござる。
「どういうことでござるか? 拙者はマリリンと来た道をそのまま戻っていたはずでござるよ。なんで、こんなわけのわからない場所についているのでござるか? それに、人も全然いないでござるよ」
これは正直かなり困ったでござる。明日は大会でござるし、今日のところは早めに寝て、精神的な疲れを残さないようにするつもりでござったというのに。最悪でござる。早速、町の地図を覚えておかないで困ったことになったでござるよ。こんなにすぐフラグ回収するとは拙者もなかなかやるでござるな。
しかし、ここがどこなのかがまったくわからないのでどうしようもないのでござるよ。
周囲は薄暗く、祭りの気配が微塵も感じられないでござる。
おそらく、この通りでは祭りの出店は出ていないのでござろう。余計に困ったでござるよ。出店さえ出ていれば、恥を忍んで道を聞けば済むだけの話でござったのに、これでは道を尋ねる相手もいないでござるよ。
「なんで拙者はマリリンの家から自力で帰れるとか思っていたのでござるか? 自分自身が憎いでござるよ。そもそも、帰りのことなんて考えていなかったでござる。不覚でござる」
ここでじっとしているのが、一番時間の無駄な行為でござるので、とりあえず当てもなくさまようことにしたでござる。
拙者の強化された視力であれば、この薄暗い中でも周囲の状況は見通すことができるでござる。しっかり見えているのにも関わらず迷ったのがまた悔しいでござるな。
「まずは、誰かいないか探すでござるか。人さえ見つければこっちのもでござるよ。大体、町の中で迷うなんてこと自体おかしなことなのでござる。異常でござる」
言い訳をしながら、拙者は何とか知っている道に出ないか、通行人はいないかと気を配って歩くでござる。
ずっと進んでいれば、きっとここから出られるでござるし、人とも出くわすはずでござる。何と言っても今日は祭りでござるからな。少し遅い時間でも祭りであれば、外をうろついている人はいるでござろう。
「なんで誰もいないのでござるか? 拙者はここまで方向音痴でござったのか? そもそも、ずっと薄暗い路地を抜けられないのはおかしいでござるよ。あれ? あの建物さっきも見たような気がするでござる」
もう完全に迷ってしまったでござる。
この調子では明るくなるまで宿に帰れない未来まで見えるでござるよ。それは断じて許されないでござる。
少々目立つことになるでござるが、上空へジャンプして現在地を把握するのが最良なのではござらんか? 拙者がジャンプするときと着地するときに爆音がなる鳴り響いてしまうのと、周囲の建物に被害が出るかもしれないでござるが、拙者が宿に戻れないことが一番重大でござるよな。きっと、周辺の住民もわかってくれることでござろう。




