83話
「あれでござるよな、もうかなり食べた後でござるから、さっきよりは食べられないでござるよな?」
「タケシさんは不思議なことを言いますね。考えてみてください、朝ごはんを食べたから今日は昼ごはんが食べれないってなりますか? なりませんよね。そういうことです」
つまり、あれだけ食べたのはまったく関係ないということでござる。恐ろしい胃袋でござる。出鱈目にもほどがあるでござるよ。
「また、あの量食べられたら拙者の方が気持ち悪くなってしまうでござるよ」
「どういうことですか? 私のこと気持ち悪いって思ってたんですか?」
「すまないでござる。言葉が足りなかったでござるな。拙者が言いたかったのは、自分は満腹なのに信じられない量の食べ物を見ることがでござるよ。マリリンも満腹になった後に、食べ物を見ると気持ち悪くなるでござろう?」
「私にはわからない感情ですね。食べ物を見て、気持ち悪いなんて思ったことは一度もありませんよ。これからもないと断言できます」
マリリンは特殊な例でござったな。
これでは、拙者の気持ちはマリリンには一生伝わることはないということでござるよ。どう説明すればわかってもらえるのやら、考えても答えは出てこないでござるな。
「タケシさんもご飯を食べてからかなり時間もたちましたし、そろそろお腹が空いてきたころじゃないんですか? 私にはわかりますよ。早く行きましょう」
「残念ながらマリリンは拙者のことをまったく理解できていないようでござるな。拙者はまだ腹は空いていないでござる。あれだけの量を食べて、たった3時間やそこらで腹が空かないでござるよ」
「おかしいですね。私だったらもうお腹が空いてくる時間なんですけど……もしや、タケシさんは小食なんですか?」
「おかしいのはマリリンでござる。大食い大会で準優勝したのでござろう? でござったら、一般人の拙者と比べるのはおかしいでござるよな? 胃袋がおかしいのはマリリンでござる」
マリリンは自分で自分の異常さを理解しておいたほうがいいでござるな。大食いで自信があるといっていた割には拙者にも同じことを求めているでござるし、無理に決まっているでござるよ。
このまま食べ歩きに言ったところで、すぐには何も食べる気は起きないでござるよ。前半戦はマリリンが食べる姿を見ているだけになるでござろう。それで、脳が麻痺して満腹になるところまで見えているでござる。
「もう、私は優勝するつもりだったんですよ。でも、優勝したあの人は私よりも体も大きくて、一口のサイズも大きかったんです。そうじゃなかったら、優勝したのは私だったんですから」
「大食いに体の大きさが関係あるのはわかるでござるが、なんで口の大きさが関係してくるのでござるか? 早く食べることに意味なんてないでござろう」
「私が出た大食い大会は早さも重要だったんですよ。決められた量を早く食べ終えた人が優勝という内容でした。もちろん、その量が多いので、ただの早く食べれるだけの人には可能性はありませんでしたが。早さで負けてしまったんです」
純粋な大食い対決ではなく、なぜか早さの要素も求められたということでござるな。 どういう意図があってそのような内容にしたのは謎でござるが、それは悔しかったでござろうな。
「食べれる量だったら負けてなかったということでござるか?」
「当然ですよ。私は完食する前に終わっちゃいましたけど、まだまだ余裕でしたからね。優勝した方でさえ、きつそうにしてたんですから」
「次は、純粋に大食いだけを決める大会が開催されるといいでござるな。その時は頑張ってくれでござるよ」
「もう出ませんよ。よく考えたら自分から食い意地を張っていますっていうカミングアウトをしているようなものだと気が付いちゃいましたからね。私は大人の女性として慎みを持って生活していかないといけないんです」
人の金であれだけ食べていたマリリンが慎みとは笑えるでござるな。一体何を言っているのやらでござるよ。
マリリンに慎みがあるのでござったら拙者にすらあるでござるよ。
「それじゃあ、行きましょうか。ちゃんとどこまで食べたか覚えているんで安心してください。さあ、全店舗制覇しますよ!!」
出発する前に少しぐだってしまったでござるが、時間をかけたことでお腹が少しは楽になってきたでござるよ。別に狙ってやったわけではないでござるが、これなら多少は食べられそうでござるよ。調子に乗って頼みすぎないようにしないと後で地獄を見ることになってしまうでござるな。
「さっき最後に食べたのは、カレーでしたから、その横から行きましょう。こっちです」
「うっ、今カレーはきついでござるな。さっき食べ終えていてよかったでござるよ」
「カレーぐらいで値を上げていてはこの先持ちませんよ。食べ歩きはまだ始まってすらいないんですからね」
マリリンには悪いでござるが、軽く食べて後はデザートくらいが拙者の限界でござるな。これを超えようものなら即リバースでござるな。そんな惨めで汚い真似はできないでござるよ。自分の体は自分が一番よくわかっているでござるからな。気を付けて行かないといけないでござる。




