79話
「次はあっちのやきそばはどうですか?」
マリリンが指さしたほうに確かに焼きそばの屋台があるでござるが……え? 唐揚げ二人前の後に焼きそば? 正気でござるか? 相当食べれると言っていたでござるから、これくらいで驚いていたら体が持たないのでござるか?
「焼きそばは少し重いのではござらんか?」
「重いというのはどういうことですか? 多少量があるので重さはあると思いますけど」
「物理的な重さではござらん。唐揚げを食べた後に焼きそばはきつくないかということでござるよ」
「ああ、そういうことですか。私最初に言いましたよね。これくらいはまだまだ序の口ですから。これからもっと食べるんですよ」
ははは、マリリンは胃袋がブラックホールだったということでござるな。
どこにそんな量の食べ物が入っていくというのでござるか? マリリンは女の子にしても小柄な方でござるよ。意味がわからないでござる。
「早く買いに行きましょう。今ならあまり並んでいないので、すぐに買えますよ」
「わかったでござる。拙者もこれ以上驚かないように気持ちを固めるでござる。どんと来るでござるよ」
「なんですかそれ。まあ、頑張ってくださいね」
マリリンの食欲には驚かされているが、もうそれも終わりでござる。これ以上、拙者の心が揺さぶられることはないでござるからな。
「まだ食べるのでござるか?」
「はい。やっぱりお祭りは最高ですね。こんなに美味しい食べ物ばかりでとても一日では回り切れませんよ」
拙者が甘かったでござる。マリリンの食欲に果てはないのでござるな。終わりの見えない戦いに疲れていまったでござるよ……。
マリリンは何食わぬ顔でござるが、既に10件以上の店を回っては食べ物ばかり食べているでござるよ。拙者も4件目くらいまでは一緒になって食べていたでござるが、もう満腹でござる。食べ物を見るだけで億劫になるでござるよ。
マリリンハといえば目につくものすべてに引き寄せられていくでござる。そのたび、買い物をしてはすぐに食べてしまうのでござる。ありえないことが目の前で起きているでござる。自分自身の目で見ても信じられない光景が広がっているのでござるよ。
「タケシさん? 疲れが表情にまで出てきていますが大丈夫ですか?」
「拙者のことは気にする必要はないでござるよ。今日は一日マリリンに付き合うと言ったでござるからな。とことんまで付き合ってやるでござる。武士に二言はないのでござるよ」
「頼もしいですね。しかし、奢ってもらうのにも額が行き過ぎてしまっている気が……」
マリリンのために支払った金は一体いくらくらいでござろうか? これも途中から覚えていないでござるな。一件辺り千ゴールドと考えても1万ゴールドは軽く超えてしまっているでござるな。
金の価値はよくわからないでござるが、拙者が一日で稼ぐ金額の10分の1にも満たない額でござるからそれほど気にはしていないでござるかな。それよりも無限に食べ物が吸い込まれていく光景のほうが衝撃でござるよ。
「それも同じでござるよ。拙者は奢ると言ったでござるから、気にする必要はないでござるよ。好きなだけ食べるといいでござる」
「ありがとうございます。うーん、でもずっと食べてばかりですし、ちょっと違うところでも見に行ってみますか? 広場に行けば何かの大会をしていると思いますし、きっと楽しいですよ」
「拙者は別に構わないでござるが、マリリンの方こそもう食べなくていいのでござるか?」
「はい、ずっと食べてばかりではダメですからね。まあ、後でまた食べるのでお楽しみは後に取っておくことにします」
休憩をはさんでまだ食べるということでござるな。
マリリンがどんどん食べているとは言え、時間のほうは昼を余裕で過ぎてしまっているでござるからな。朝飯を食べに来たのにそのままはしごで昼飯に突入するとか本当に意味不明でござる。
「わかったでござる。それでは、その広場とやらに案内してもらってもいいでござるか? まだ拙者はこの町の地理には疎いでござるからな。場所がわからないでござる」
「しょうがありませんね。こっちですので私についてきてください」
マリリンの後ろをついて歩き、出店が並ぶ通りから移動を開始でござる。
「あ、ちょうど今から何か始まるみたいですよ」
広場に到着した拙者たちは大きな歓声が聞こえるステージへと向かった。
開けた場所に、設置されたステージに大勢の人たちが集まっているでござる。この町には大量の人がすんでいることがよくわかるでござるな。あれだけ大通りに人がいてもこれだけの人が集まる……とんでもないでござるよ。
「こんな場所があったのでござるな。それにしても凄い人でござるな。少々来たことに後悔しているでござるよ」
「あまり人ごみは得意じゃないんですね。まあ、メイン会場のようなものなので人が集まるのも無理はありません。どうしても無理なようでしたら場所を変えますか?」
「大丈夫でござる。これくらい訳ないでござるよ」
疲れている状態でこれはきついでござるな。
顔に出ないように気を付けないといけないでござる。




