75話
マリリンと二人で冒険者ギルドから町へ繰り出すでござる。
「まずはどこから行きましょうか? タケシさんは朝ごはん食べてきてますか?」
「うん? 宿で食べてきたでござるよ。日課でござるからな。何も考えずに食べていたでござる」
「もう、私は食べずに我慢してたんですよ。一人だけ先に食べてるなて裏切りです。これは奢ってもらわないと気が済みません」
「理不尽でござるが、それくらいならいいでござるよ。好きなものを選ぶといいでござる」
「本当ですか? 行ってみるもんですね。ありがとうございます」
もとから奢る気で来ているでござるから、何ともないでござるな。
祭りに女の子と二人で来ておいて割り勘などと言うつもりは金持ちの拙者にはないでござるよ。もちろん、金を持っていなければ割り勘になっていたでござるがな。マリリンは運がいいでござるよ。
「昨日言っておいてくれていたら拙者も朝飯を宿で食べなかったというのでござるがな」
「すいません、そこまで気が回りませんでした。反省してます。でも、タケシさんも気を使ってくれてもよかったと思いますよ」
そういわれてしまうと返す言葉もないでござるな。自分は気を使えと言っておいてブーメランでござるよ。拙者も気を付けないといけなかったでござるな。次の機会にはもう少し気を使える大人の武士として挑みたいものでござるよ。
大通りを二人で歩いていると、かなりの人数の人とすれ違うでござるな。
冒険者ギルドで少し時間を潰していることもあり、今は早朝というにはいささか遅い時間帯になっているでござるからな。みんなが活動を始める時間でござる。朝から出店は開いていたでござるから、もう祭りを楽しみ始めている人がいたところで驚きはないでざる。ちょっと人が多いでござるが、何とか許容範囲内でござるな。
「マリリンは毎年この祭りに参加しているのでござるか?」
「はい、私は祭りの期間はお休みをいただいていますからね。流石に3日すべてに参加することはできませんが、2日以上は参加しています。私でも入賞できそうな大会が開催されてたらエントリーしてみたりしてるんですよ」
「マリリンが優勝できるような大会なんてあるわけないでござるよ。見栄を張るのはいいでござるが、もう少し頭を使うべきでござるよ」
マリリンで優勝できるのであればすべての大会で拙者が優勝してしまうでござるよ。
あまり大人げないことはできないでござるから、そんなことはしないでござるがな。みんなが楽しんでいるところに水を差すような行いはすべきではないでござる。拙者は既に冒険者の大会にエントリーしているでござるからな。賞金はこれだけで我慢するでござるよ。
「ひどい言われようですね。私にもいくつか特技があるんですよ。こう見えて、大食い大会では準優勝しましたからね。意外でしょう?」
「信じられないでござるな。マリリンの小さい体で大食いなんて物理的におかしいでござる。何かスキルの恩恵でござるか?」
「そういった大会ではスキルの使用は禁止です。スキルの使用何て認めたら大変なことになりますよ」
「余計信じられなくなったでござる。スキルを使ったと言われれば納得するしかなかったでござるが、素の状態で準優勝はおかしいでござろう……わかったでござるよ!! 子供の部に出場したのでござるな。ルール違反でござるよ」
「本気で言っていたら怒りますよ……」
いつもよりも低い声と共に睨まれたでござる。
マリリンに子供というのは地雷でござったか。小さいと言っても気にした様子がなかったでござるから油断したでござる。
「冗談でござるよ。単にそれくらい信じられないと思っただけでござる。折角でござるから、その実力を見せてもらいたいでござるなぁ」
弁明しておくが、相変わらずマリリンの視線は鋭いままでござるな。
そんなに睨まれたら胃が痛くなってしまうでござるよ。勘弁してほしいでござる。
「言い訳して話を逸らすのは見苦しいですよ。おとなしく謝っておいてほうが今後のためです」
「ごめんなさいでござる」
マリリンの言葉にすぐさま反応し頭を下げる。
この間、実にレイコンマ1秒以下。
人間の反射速度をも超えた謝罪でござる。これでマリリンも拙者の誠意がわかるでござろう。
「うーん、追加でお昼も奢ってくれたら許して上げます」
「ありがたき幸せでござる。喜んでマリリンに昼飯を献上するでござる」
「ふふっ、何ですかその言葉遣いは。タケシさんは相変わらず不思議な人ですね。いいでしょう。今回は寛大な私が許して上げます」
ご満悦のようでござる。
これで機嫌が治ったのならばよかったでござる。マリリンの機嫌を損ねたままでござったら今度もクエストを選んでもらうという拙者の目論見が外れてしまうことになるでござるからな。
「それじゃあ、私の朝ごはんを買いに行きましょう。タケシさんも小腹が空いてたら何か食べてみるのもいいと思いますよ。本当にいろいろあって選ぶのに困っちゃうくらいですから」
「期待が膨らむでござるな」
マリリンに手を惹かれながら、出店が並ぶ前へと進んでいった。




