7話
ああ、こんな森の中で拙者は何をすればいいでござるか? 暇でしょうがないでござるよ。
周囲を探索するためにぐるぐると歩いてはいるのだが、どこへ行っても木ばっかりでござる。これには拙者も困り果てているでござる。こんな調子でござったら、埒が明かないでござる。
「今度は森から脱出しないといけないのでござるか? いい加減にしてほしいでござるな。もういっそ、一本ずつ一刀両断していくでござるか?」
適当に口走ったことではあったでござるが、あながち悪いアイデアではないかもしれないでござるな。拙者のすべてを一刀両断するスキルならば、この程度の木、一撃で切り倒せるでござるよ。もしかすると、一撃で何本も切り倒せるくらいの威力はあるんじゃないでござろうか。このアイデアなら迷わずにまっすぐ進むことができるでござるよ。
「もう歩くのも面倒になってきたでござるし、ただひたすら前に突き進むでござる」
残念ながら愛刀はまだ手に入れられてないので、引き続き手刀で行くことにはなってしまうがこれは仕方のないことでござるな。
「せいっ!! せいっ!! せいっ!!」
スパスパと気持ちよく木が倒れていく。
当然スキルの恩恵がなければこんな頭の悪いことはできなかったでござるが、これも拙者のスキルが最強ゆえ、できる技でござるよ。もうこれはすべて拙者の力ということで判断して問題ないでござるな。
「気持ちいいでござる!! 前世では絶対に経験することができたなかった体験でござるよ。森を好き放題に荒らして、木を切り倒す、こんなにも楽しいことでござったのか」
ひたすら、木を切り倒しながら前進していく。
たまに拙者のほうへ倒れてくる空気の読めない木はさらに切り刻んで、回避する。
「この光景を見た人はどんな反応するでござるかな。昨日までは木が生えていた森が一夜にして消え去るでござるよ。少しこの森の所有者に申し訳に気持ちもないこともないでござるが、拙者の行く手を阻んでしまったのが悪いでござる。つまり拙者は何も悪く無いでござるよ」
誰に対して言い訳をしているのかわからないでござるが、一応人とでくわした時のために言い訳を考えておくのも悪く無いはずでござる。ただ何も考えずに木を斬ってばかりでは時間を有効に活用できているとは言い難いでござるからな。何かをしながらさらに何かをする、これぞ最高の効率で物事を実行していると言えるでござるよ。
ひたすら木を切り倒しながら進んでいくこと、数十分。
「しかし、このスキルを使っている間はまったく疲労感もないでござるな。流石はチートスキルと行ったところでござるよ。恩恵を直に体験してみないとわからないことでござるな」
普通であればただ手を振り回しているだけとは言えども、試行回数が既に千を超えているはずでござる。それで、何ともないなんてことはおかしいでござるよ。拙者も修行で体を鍛えていたでござるが、これは以上でござる。
そこまで急ぐ必要もないので、ここらへんで一回を休憩をはさむとするでござるか。
自分で切り倒した木の切り株に腰かけ、一度スキルの発動をやめる。
「こうして見ると大分進んできているでござるな。拙者が通ってきた道だけ木がまったくないでござるよ。あとどれくらい進めば森をでられるんでござろうか? そろそろ、森以外の景色も見たいでござるよ」
拙者が通ってきた道は、見える範囲では切り株しか残っていないでござる。10メートルくらいの範囲をここまでまっすぐ切り倒してきたでござるからな。拙者に斬れないものはない以上、木が残っていないことも自明の理でござるよ。
ここまで来ると、横の木まですべて切り倒したくなってくるのが人間の性でござるな。嫌に気になってしまうでござる。スキルの出力を上げたらもっと広範囲の木を一気に切り倒せるのではないでござるか? 拙者はまだまだ本気を出していないでござるよ。
そうと決まれば一度試し切りでござる。渾身の力を込め、前方に手刀を放つ。
「オラァァァァーーー!!!!」
ズバァンッ!!!
まるで手刀の斬撃が前に飛んで行ったのではないかと錯覚するほどの広範囲で木が倒れたでござるよ。
見たところ、前方数百メートルに渡って、木が切り倒されているでござる。自分でしたことながら少しやりすぎたのではないかと罪悪感が生まれるでござるな。これもすべてはじいが悪いでござるよ。無駄に拙者を煽って来るのが悪いでござる。それがなければ拙者は今頃、こんな辺鄙な場所ではなく、大きな町の目の前とかから転生ライフを始められていたはずでござるよ。本当に、死んだ後まで拙者のことを不快にするなんてとんでもないじいでござるな。
【レベルアップしました】
脳内に直接語り掛けるかのような音声が聞こえた。
「何事でござるか? どこからこの声が?」
【レベルアップしました】
なおも音声が続く。
「またでござる。レベルアップとは何でござるか? 拙者の前に姿をあらわすでござるよ。一刀両断してやるでござる」




