64話
拙者にはわかるでござる、この雰囲気の変化は明らかにおかしいでござる。ここより先は生息しているモンスターのレベルは変わってくるはずでござるな。
「これなら、適当なモンスターを討伐するだけで昨日とは段違いの報酬の量になるのではござらんか? 一段階以上強さが上がるでござろうしな」
こう言う説明をしてくれていたら一目散に上を目指して上がって行っていたでござるのにな。途中で山の雰囲気が変わってそれよりも上でリザードマンは生息していますとか教えておいてほしかったでござるよ。もしかすると、ここは登りすぎかもしれないでござるがな。ロックスネークよりも強いという情報だけではどれくらいの強さかはっきりわからないでござるからな。
「これ以上登って行っても意味はなさそうでござるし、とりあえず、モンスターを探してみるとするでござるかな」
この近辺を歩いていればモンスターの方から勝手に現れてくれるでござろう。
拙者が放っていた殺気をひっこめれば、近づいてくるモンスターもいるでござるよ。さっきまでは殺気で追い払っていたでござるからな。今はその必要もないでござる。
サッと、放っていた殺気をひっこめるでござる。
ザザッ。
すぐに茂みが揺れるような音が聞こえてきたでござるよ。
これは早速リザードマンが現れたでござるか? 今日の拙者はついているようでござるな。
「来るなら来いでござるよ。拙者が相手になるでござる!!」
ヌルっと茂みから体を出してきたモンスターは……サルでござった。
「おい、もうお前には用はないでござるよ。拙者のことを追ってここまで来てしまったのでござるか? 早く麓に帰るでござるよ」
まさかのここにきてもサルでござるか……いい加減にしてほしいでござるよ。拙者はいつまでこのサルの相手をしないといけないのでござるか? 今日は殺気で寄ってこなくて楽だと思ってでござるのに、まさかずっと追っかけてきているとは思わないでござる。
「ギャギャ!!」
「うるさいでござる。お前は早く帰るでござる」
一度はひっこめていた殺気をサルに向かって放つでござる。
「ギャ!? ギャギャギャ!!」
力の差を悟ったのか拙者に背を向けてものすごいスピードで茂みへ消えて行ってしまったでござる。
何ともあっけないものでござるな。しかし、今のサルは麓で見かけた個体よりも体が大きかったような気がするでござるな。もっと近づいていれば確実にわかっていたでござるが、拙者の勘違いでござろう。
「これは殺気をひっこめて歩くか悩むでござるなぁ。サルがもう寄ってこないという確証が持てればいいのでござるが……」
少し考えてみるでござるが、あのサルが殺気を放っている拙者のことを追ってくるとは考えにくいでござる。となれば、この辺りにも奴らは生息しているのかもしれないでござるな。めんどくさいことになってきたでござるな。サルがここもいるなんて聞いていないでござるよ。いや、待つでござるよ。拙者が狩りまくったのは麓のサルでこのあたりのサルは別に一匹も狩っていないでござる。ならば、拙者がまたサルを狩ろうが、問題ないのではござらんか? 狩れないサルに価値はないでござるが、報酬として金になるのであれば話は変わってくるでござるよ。めんどくさいなんてことはないでござる。むしろ大歓迎でござるな。
「よし、殺気はひっこめて寄ってくるサルは容赦なく狩っていくでござるよ。拙者に近づいたのが運の尽きでござる」
方針は決まったでござる。
このあたりでリザードマンを探しつつ、出くわしたモンスターはすべて討伐するでござるよ。これで今日もがっぽり稼ぐことは確定したでござるな。冒険者は強さがあれば最高の職業でござるな。拙者にも武士の次くらいにあっている職業かもしれないでござるな。
「さあ、どんどん狩るでござるよ。出てこいでござる!!」
殺気を放っていない今の拙者をモンスターが見逃すわけはないでござる。見つけたらすぐによってくるでござるよ。
自分が獲物だということを理解もせずに、拙者に近づいてくる哀れなモンスターには同情を禁じ得ないでござるな。これも弱肉強食の世界でござるから、仕方のないことでござるよ。
ザザッ、ザザッ。
茂みを揺らす音が聞こえてきたでござる。
今度は一匹ではなく、複数音が聞こえたでござるよ。拙者の耳は誤魔化せないでござる。
「グゥガガァァーー!!」
「サルではないでござるな。二足歩行のでっかいトカゲのような風貌でござる……もしかしてリザードマンでござるか?」
「ガガガァァァ!!!」
鳴き声で返事をされるが拙者には何といっているかは見当もつかないでござるな。
しかし、外見から予測するにこいつらはリザードマンで間違いないでござろう。まさかサルを討伐することに決めた途端に本命が現れてくるとは驚いたでござるよ。好都合でござる、先にこいつらを討伐してから時間の許す限りサルを狩りまくる作戦に変更するでござるよ。二匹で現れたのも今日の拙者がついているおかげでござるな。




