61話
「拙者はこの宿に満足しているのでござるよ。ほかの宿が安いからという理由だけで今さら帰るつもりはござらんよ」
「うう、すごいです。私の家賃と変わらないような金額の宿に毎日泊っているなんて少し羨ましいですね」
「マリリンも一度体験してみるといいでござるよ。虜になること間違いなしでござる。拙者が女将に代わって保証するでござるよ」
現在の宿の素晴らしい箇所を上げていけばきりがないでござる。
それほどまでに素晴らしい宿なのでござる。
しかし、マリリンの家賃と変わらないというのはちょっと高い気もするでござるな。拙者が今のように、クエストで稼げていなければ毎日泊まるのは不可能でござったよ。何から何までラッキーでござる。
「私の給料だと手が出ませんね。残念ですけど、無理そうです」
「マリリンも仕事を頑張ってギルドマスターになるといいでござるよ。そうしたら、給料も上がるでござろう?」
「それこそ無理です。ギルドマスターは基本的に元冒険者ですから。よっぽどの特例でもない限りは例外はありえません。現在のギルドマスターも元Sランク冒険者何ですからね」
ほう、ギルドマスターが元Sランク冒険者でござるか。それは初耳でござるよ。記憶が正しければ聞いたことがないはずでござる。それならば、ドデカがおとなしくいうことを聞くのも納得できるでござるな。ドデカ? そうでござるよ。ドデカといえば、なぜこんな絶好のリベンジの機会があるでござったのに、昨日何も言わなかったのでござるか? 実は、もう戦意喪失しているとかでござるかな。
「この大会にドデカはエントリーしているのでござるか? 昨日拙者にリベンジがどうとか言っていたでござるからもしかしたらと思ったでござるよ」
「ドデカさんの性格ならエントリーしてそうですけど、私は名簿を見ることはできませんのでわかりません。お役に立てずすいません」
「別に位でござるよ。拙者もドデカならエントリーしていると思っているでござるからな。まあ、ドデカの実力だと勝ち残ってくるのは難しいでござろうな」
「タケシさんに比べれば劣るかもしれませんが、実際にドデカさんはこの町では有数の実力者なんですよ。よっぽど運がないとかじゃなければ決勝トーナメント進出は確実だと思います」
腐ってもAランク冒険者というわけでござるか。
マリリンがそういうのならば間違いないのでござろう。拙者からすれば、ドデカなんてそこら辺の冒険者と違いなんてないでござるが。
「まあ、ドデカも拙者とあたってしまえばそれまででござるし、Sランク冒険者とあたった場合も同様でござろうな」
「Sランク冒険者とあたってしまうのはもう事故みたいなものですからね。普通の人手は勝ち目がありませんから。そう考えると今回の大会でのタケシさんは初の快挙になるかもしれませんね。Bランク冒険者が優勝したことなんて過去にないはずです」
「冒険者になって数日ということも追加してアピールしておくでござるよ。武士を世界に広めるために利用できるものはすべて利用しなければならないでござるからな」
正直、Sランク冒険者が相手だろうが拙者が優勝するつもりでござるが、マリリンはまだ完全にそうは思えていないようでござるな。それほどまでにSランク冒険者という存在は強大なものなのでござろう。
「では、そろそろクエストを見繕ってもらってもいいでござるか? 今日と明日はがっぽり稼いでおかないといかないでござるからな」
「また私が選ぶんですか? 毎回ギルドの職員にクエストを選んでもらう冒険者何て他では絶対に居ませんよ。皆さん、自分の実力にあった受けたいものを選んで受注するんです。タケシさんもちゃんと自分で探したほうがいいですよ」
「めんどくさいでござるし、わけのわからない拙者が選んでいたら時間がかかるでござろう? それよりも、マリリンに選んでもらったほうが効率がいいのは明白でござる。頼むでござるよ」
こう見えても拙者は効率を重視するのでござるよ。
「ひとまず、クエストボードの方へ移動しましょうか。今回は私がクエストの選び方について教えてあげますからね」
「そんなのはいいでござるよ。早くクエストを選んでくれでござる」
「ダメです。そんなことじゃ、今後タケシさんが困ることになってしまいます。いつまでも私にクエストを選ばせるつもりですか? そうはいかないですよね?」
「何ででござるか? 拙者はずっとそのつもりでござるよ……もしかしてマリリンもただでは働けないということでござるか? わかったでござるよ。いくら渡せばいいでござるか?」
マリリンも案外がめついのでござるな。人は見かけに寄らないというでござるが、驚きでござる。
「ち、違いますよ。私はお金が欲しくて断っているわけじゃありません!! タケシさんのことを思って助言しているんです。冒険者として独り立ちしていかないといけないんですよ? クエストも一人で選べないようじゃほかの人にも舐められてしまいます」
そんな奴らは拙者が実力で黙らせるでござるから問題はないのでござるよな。




