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6話

「おわわわぁぁぁぁーーー!!!!」


 空間の裂け目に飛び込んだ拙者は、薄暗い洞窟のような空間を浮遊しながら飛び回っているでござる。


 予想外でござるよ。まさか、こんな自由の効かない空間に放り出されるとは思わなかったでござる。これは非常にまずいでござるよ。どこに向かって飛んで行ってるか見当もつかないでござる。


「ひえぇぇぇぇぇーーーー!!!!」


 尚も空間を飛び回り、一向に落ち着く気配がないでござる。


 驚きのあまりたびたび叫んでしまっているでござるが、これは拙者が臆病だからとかではないでござるよ。ジェットコースターと一緒でござる。雰囲気に合わせて叫んでいるだけでござるからな。


 ピカッ。

 

 空間に一筋の光が指した。


「あれは!? 行くしかないでござるよ!!」


 意気込んだものの、進行方向は完全に意思とは無関係なもので、無情にも光とは真反対の方向へ体は流れていくでござる。


「それはないでござるよぉーー!! そっちじゃないでござる!!」


 悲痛の叫びがこぼれる中、目まぐるしく空間を行ったり来たりと常に動き回っている体に精神が悲鳴を上げ始めているでござる。


 日頃から精神の修行を欠かさない拙者でこの疲労感、並みの人間には耐えられないでござろうな。これも拙者が常日頃から修行をしている成果でござる。武士にはこの程度の揺さぶり利きはしないでござるよ。どこのだれかはわからないでござるが、拙者も舐められたものでござる。


 ピカッ、ピカッ、ピカッ。


 新たに何か所かで光が指した。


 これは千載一遇の大チャンスでござる!! これだけ光があればきっと拙者の体も空気を読んでどこかへ向かってくれるはずでござる。


「ちがう、ちがーう!! そこは何もないでござるぅぅぅーー!!」


 誰かに操作されているのではないかと錯覚するほどに、綺麗に光と光の真ん中へ体は進路をとった。


「これではずっとこのままこの空間を漂うことになってしまうでござる。なにか、起死回生の手立てはないでござるか? 光が増えるのを待つしかないのでござるか?」


 ちらほらと空間に光はさしているのだが、ずっとそこだけ避けるように体はゆらゆらと進んでいく。これはまさか光は危険だと判断されているのではないでござるか? 拙者が思い込んでいるだけで、この光は飛び込んではいけないものなのでござるか? しかし、拙者にはこの光に飛び込む以外選択肢は残されていないでござるよ。


 時間が経過するごとに、光がぽつぽつと数を増している。


 もう光を避けて漂うのが難しいくらいには光の指している箇所があるのでござるが、どういうわけか光へは一向に向かってくれないでござる。


「あぁぁぁぁーーーー!!!! いつまでこれを繰り返す気でござるかぁぁぁぁーーーー!!!! 体さえ自由に動けばすぐにでも光に飛び込むでござるというのに、何をためらっているというのでござるか!?」


 自由の効かない自分自身の体に苛立ちが抑えられないでござる。常人であれば気がくるって発狂しているでござるが、流石の拙者でもかなり来ているでござるな。この調子では時間の問題かもしれないでござるよ。






「……もう許してくれでござる……ああ、拙者はいつまでここにいれば……」


 いつまで経ってもこの空間からの脱出は叶わず、辺りは光に包まれかけている。


「この光に完全に包まれてしまえばここから出られるでござるか? ……ハハハハハ!!!」


 どれくらいの時間が経ったのでござるか……拙者ももう気が狂いそうでござるよ。何も考えたくないでござる。いっそ消えてなくなりたいとすら思うでござるな。あとどれくらいこの空間にいればいいでござるか?






「光が……」


 どれほどの時間が経ったでござろうか? ようやく、空間に光が満ちた。


「ああ、これで……」


 突然目の前が激しく発光し、視界が白く染まった。


「な、なにも見えないでござるぅぅーー!!」


 体に負荷がかかり、視界は遮られている。

 激しい不安感に襲われるが、ここから出られるという安堵と混ざりあい混乱してしまうでござる。

 これで外へ出られるでござるか? 




「ぺぎゃっ!!」


 突然何かに激突した。


「痛いでござるよ。何でござるか?」


 目を開けると、地面に顔を押し付けるような形で寝転がっていた。


 あまりに無様な格好に急いで立ち上がる。


「ここは一体どこでござるか?」


 周囲は一面木ばかりの光景が広がっているでござる。


「やったぁぁぁーー!!! でござるぅぅーー!! あの忌々しい空間からやっと抜け出せたでござるぅぅーー!!」


 歓喜のあまり叫んでしまったでござる。武士は本来感情をあまり出さないものでござるが、これほどの喜びは生まれて初めてかもしれないでござるな。歓喜のあまり叫ぶことが自分の人生で起こりえるなど夢にも思わなかったでござる。


 しかし、ここはここで見覚えのない場所でござるな。

 森だということ以外情報がないでござる。


「空間を一刀両断することで何とかあの空間から脱出できたのはいいのでござるが、うまく異世界へこれたのかが謎でござるな」


 ここでとどまっていても埒が明かないでござるから、ひとまずは周囲を探索するでござるかな。


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