58話
「いやぁ、今日もうまい飯でござった。これで明日も頑張れそうでござるよ」
部屋に運ばれてきた料理を食べ終わり、改めて飯のうまさを感じるでござるな。拙者が昔の世界で生きていたこところはこんなにうまいものを食べた記憶はないでござる。拙者の食への興味が薄かったというのもあるでござろうが、やはりこの飯はうまいのでござるよ。
腹もいっぱいになって気分もいいでござるし、少しだけ明日の予定でも考えるとするでござるかな。
まずは、明日は冒険者ギルドに行ってクエストを受けるかどうかという問題からでござるな。金を持っている現状から考えると明日は別にクエストを受ける必要はないでござる。今日を入れて、三日分の宿代は先に払ってしまっているでござるし、明日くらいはゆっくり町をぶらぶらしたところで大丈夫そうでござるよな。流石に少し怠惰すぎるでござるか? 武士たるもの毎日精進していかなければならないでござるかな。
困ったでござるよ。最初は毎日クエストをこなして金を稼ごうと思っていたでござが、いざ金を手に入れてしまうとクエストを頑張らなくてもいいのではと考えてしまうでござる。これが人間の悪いところでござるな。
「こんな調子ではダメでござる。拙者はもっと強くなってこの世界に武士の存在を知らしめなくてはいけないのでござるよ。こんなところで甘えていては絶対にダメでござる!!」
妥協することなく努力してこそ道は開けるものでござる。
今がうまくいっているからといってこれから先もずっとこの調子でいけるとは限らないでござる。大体、冒険者どもが雑魚すぎるのがいけないのでござるよ。最初に殺してしまったSランク冒険者すら雑魚でござったからな。この程度であれば今の拙者でも楽勝と思ってしまったでござるよ。このままではダメでござる。まだこの世界には拙者の知らない真の実力者がいるはずでござるからな。拙者も修行を続けて強くなっていかないといけないでござる。
「よし、明日もクエストに行くでござるよ。がっぽり稼いで金の心配をしなくてもいいようにしつつ、レベルアップもしていくでござるよ!! 明日からも頑張るでござるよ」
今日はもう疲れたような気がするでござるから寝るとするでござる。
また明日も頑張って行くでござるかな。
風呂に入っている間に準備されていた布団に入り、目を閉じるでござる。
「ふぁぁ……もう朝でござるか……まだ寝ても大丈夫でござるかな」
眠気に逆らえず、また夢の世界へ帰還してしまいそうになるでござるよ。
「はっ!! 危ないでござる。拙者としたことが二度寝するところでござった。この環境が最高すぎて拙者の気も緩んでしまっているのかもしれないでござるな」
前世では、二度寝など一度もしたことがないというのでざるのに、呆れるほどあっさりもう一度寝てしまいそうになっていたでござる。
いい環境にも思わぬ落とし穴があるものでござるな。今後はもっと気を付けないといけないでござるよ。
「まだちょっと眠たいでござるが、準備して冒険者ギルドに向かうとするでござるかな」
眠気の残る脳にムチをうち、布団から出るでござる。
「おっと、朝飯を食べるのを忘れてしまうところでござったよ。準備を終えたらまずは飯でござるな。冒険者で昼は食べることができないでござるから、朝はしっかり食べておかないといけないでござるよ」
思い返せば、昨日も山にずっといたせいで昼飯を食べていないでござるな。自前でおにぎりでも持っていけば食べることはできるのでござろうが、持っていくのに入れるものもないでござるし、今日は面倒だからいいでござるか。
もろもろ準備を済ませ、食堂へと急ぐ。
「朝の時間も無駄に冒険者が多いでござるからな。増えてくる前にいかないと面倒でござるよ」
「朝からこんなうまい飯を食べてもいいのでござるかな」
手の込んだ料理が朝から出てくるという幸せをかみしめながら料理を食べ終えたでござる。
これで正真正銘準備完了でござるよ。早速冒険者ギルドを目指すでござるよ。
「今日は朝から人通りが多いでござるな。昨日よりも明らかに人が多い気がするでござるよ」
つい二日前にこの町に来たばかりの拙者が何を言っているのだろうという感じではござるが、それでも気になるほどの人通りでござる。
もしや、拙者が寝過ごしていたのでござるか? 確かに、時計で時間を確認したわけではござらんが……拙者の腹時計に乱れがあるなど考えずらいでござるよ。現在の時刻は朝の7時半といったところでござろう。
「今日は何かイベントでもあるのでござるか? それならば拙者も参加したいでござるが」
もしかすると、今日が休日でこの町の人も朝から外出しているのでござるか? それにしてもこんな朝早くから家を出るものでござるか? 謎は深まるばかりでござるよ。イベントがあるならば、拙者も行くでござるが、ちょっと時間が早すぎないでござるか?
「まずいでござるよ。ここでこの人の多さなら、冒険者ギルドも大勢の冒険者で溢れかえっているのではござらんか?」
困るでござるよ、せっかく早く宿を出た意味がないでござる。
なぜか気になるでござるが、今は冒険者ギルドに向かうことのほうが先決でござるな。
「さぁて、少し走るでござるよ」




