57話
「はい、確かに4万ゴールドです。こちらがお釣りになります」
「おお、ありがとうでござるよ」
先ほど女将に渡した袋は、かなり中身の硬貨が減って戻ってきたでござる。当然のことでござるが、何とも悲しい気分になってしまうでござるな。まだまだ金は持っているでござるから切り替えていくでござるよ。
「お客様、もちろん本日も泊っていかれますよね? 部屋はまだ抑えてありますよ」
「当たり前でござるよ。4万ゴールドというのは一泊の値段なのでござるよな?」
「お客様をご案内させていただいたお部屋は一泊ご飯付きで4万ゴールドになります。ほかの宿に比べたら割高に感じるかもしれませんが、それだけ我が旅館はサービスも充実していると自負しております。値段のことを忘れて楽しんでもらうことが私たちの目指すところですので」
「いい心がけでござるな。拙者も女将の目論見通り値段何て気にならなくなってしまっているでござるよ。今日も、いやこれからも当面の間はここに泊らせてもらうつもりでござる」
一泊4万ゴールドということは、まったく金を使わなければ5泊分、少し使うと考えても4泊分の金を持っているでござるから安心して泊ることができるでござるな。それに、クエストは毎日受けてこなしていくつもりでござるよ。毎日の修行の代わりになって最高でござるし、報酬まで貰えてしまうのでござるよ。
「ありがとうございます。気に入ってもらえて本当に嬉しいです。これからも変わらぬサービスを提供していきますのでどうぞ、よろしくお願いいたします」
「こちらこそ、よろしく頼むでござるよ。おっと、今日は先に金を払えるでござるから……いや、もうまとめて払っておくでござるよ。こっちの袋には15万ゴールド入っているでござる。3泊分先に支払っていても構わないでござるか?」
「もちろんです。それでは確認させていただきます」
ずっしりと硬貨の入った袋を女将に渡すでござる。
これは拙者が今日追加でモンスターを討伐して手に入れた報酬でござるからな。これがなかったら拙者は1泊分の金しか稼げていないのでござるよ。恐ろしいものでござる。もし、Fランク冒険者からなんて始めていればもっと悲惨な目にあっていたことでござろうな。
「これでちょうど12万ゴールドです。こちらはお釣りですが、先ほどお返した袋と一緒にしなくてもよろしいでしょうか?」
「気が利くでござるな。それでは、これと一緒にしておいてくれでござるよ」
「かしこまりました。はい、これで一つの袋にまとまりました。それでは、昨日と同じ部屋になりますので、どうぞごゆっくりお過ごしください。お食事はお風呂の後に致しますか? それとも先に済ませますか?」
今日は一日外で活動してきたでござるからな。一度風呂に入っておいたほうがいいかもしれないでござる。
ここは先に風呂に入るべきでござるな。
「今日は、クエストで山登りをしてきて汚れていると思うでござるから、先に風呂に入ることにするでござる。また飯の時はこちらに言いにくればいいでござるか?」
「お風呂からでて、部屋に戻る帰りにでも受付に寄られてください。すぐにお食事をお持ちいたします」
「わかったでござるよ。また後でお願いするでござる」
拙者は、女将に挨拶を済ませ、一度部屋に戻るでござる。
あの部屋は武士を感じて最高でござるからな。部屋に戻るだけでも心がはしゃいでしまうでござるよ。
「今日も一日頑張ったでござるなぁ。これだけ活動しても身体的な疲労は感じないのでござるから驚きでござるよ。いくら拙者でもこれだけ動けば、疲労してしまっていたのでござるがな。これもレベルアップの効果ということでござろう」
部屋に戻り、椅子に据わってくつろぐ。
この椅子も木でできており、いい雰囲気を醸し出しているでござるよ。この部屋は家具に至るまですべてが素晴らしいでござる。
「先にお代を払って買い物にでも出かけるつもりでござったが、一度部屋に戻るとそんな気なんて一切起きないでござるな。気持ちい空間から出ていくのはなかなか難しいでござるよ」
本当は修行の道具なんかも買いに行きたかったのでござるが、もう今日はモンスターとの戦闘で修行をしているようなものでござる。それも、ただの修行ではなく、完全に実戦でござるから、効果もより大きいでござる。
「今日のところは風呂に入って飯を食べたら寝るとするでござるかな。明日もがっぽり稼ぐために、細かい疲労も残しておくのは得策ではござらんからな。休めるときには休んでおくのが定石でござるよ。さぁて、風呂に行くでござるかな」
風呂に入り、気も心も休ませた後、受付により女将に食事の手配を依頼したでござる。
「そういえば、風呂に水死体がなかったでござるし、女将も何も言っていなかったところを見ると、昨日のストーカー男は生きているようでござるな。また出くわしそうでござるから、できれば死んでいてほしかったでござるな」
また絡まれても面倒でござるよ。次はしっかり釘を指しておくとするでござる。




