56話
「聞いてんのか!! ぼぉっとしてんじゃねぇぞ!!」
「もううるさいでござるよ。いい加減にするでござる。リベンジがしたいというのでござるならいつでも相手になると最初に言ったでござろう」
そろそろ我慢の限界がきそうでござるよ。流石にここでやるのはまずいでござるし、そうそうに場所を移さないといけないでござるな。
「そうだ、今度リベンジしてやるから絶対に逃げるんじゃねぇぞ!! わかったな。今日のところはこれくらいで許してやるが、今度はそうはいかねぇからな!!」
最後に大声で叫び、ドデカは冒険者ギルドから出て行ってしまったでござる。
「最後までダサかったでござるなぁ。あれでAランク冒険者とは笑えて来るでござるよ。もう少し自覚を持って行動したほうがいいと思うのでござるがな。拙者のように、立ち振る舞いにも気を付けるべきでござるよ。さてと、拙者も用事は終わったでござるから宿に帰るとするでござるかな。またうまい飯が待っているでござる」
拙者はドデカのように余裕なく、ギルドを出ていくのではなく、ゆっくりと歩いて出ていくでござるよ。スマートにいかないといけないでござるからな。
冒険者ギルドの外へ出ると、周囲は薄暗くなっていたでござる。
人通りも減り始めているでござるな。きっと飲食店が並ぶ通りに行けば、賑わっているのでござろうな。
「拙者も腹が減っているでござるが、宿に帰れば最高の飯を堪能できるでござるからな。そこまでは我慢しないといけないでござるよ」
飲食店に寄り道したいという欲求を抑え込み、帰り道を急ぐ。
ここで、飲食店によるような真似はできないでござる。拙者には約束されたうまい飯があるのでござる。
「ダメでござる。まだ飲食店の並ぶ通りですらないでござるというに、こんな調子ではいざ飲食店が目に入ったらすぐに立ち寄ってしまうでござる。それはダメでござるよ」
なんとか自分自身に言い聞かせるでござる。ここで飯を食べて帰って、宿代が足りないとか言われたら一大事でござるからな。外食は次の機会にお預けでござるよ。
「ふぅ、危なかったでござる。やっとここまで帰ってこれたでござるよ……」
途中、何度も飲食店が目に入ったでござるが、そのたびに自分自身へ言い聞かせ、やっとの思いで宿まで帰ってくることに成功したでござるよ。もうここまで来てしまえば、後は宿に入るだけでござる。拙者は己の欲望に打ち勝ったのでござる!!
「さてと、それでは宿へ入るでござるかな」
ガラガラガラ。
入口を開け、玄関へ入る。
朝この宿を出てから本当にいろいろなことがあったでござるよ。まだ一日も経っていないことが信じられないでござる。体感的には数日を過ごしたような気分でござるよ。
まずは、ドデカが起こした問題に巻き込まれ、そのあとは冒険者登録のテスト、さらに今日はクエストまでこなしてきたのでござるよ。相当頑張ってきたでござるなぁ。
「あら、お戻りになられたのですね。お帰りなさいませ」
玄関へ入ると、女将が立っていた。
すぐに拙者に気が付き、こちらへ向かって挨拶をしてきたでござるな。やはり、この女将はやるでござるよ。
「約束通り冒険者になって金を稼いできたでござるよ。昨日の宿代も払えるでござる」
「本当に一日で登録してクエストをクリアしてきてしまったのですか? お客様は本当にお強いのですね。ありがとうございます。私はもう少し気長に待つつもりでしたが」
「拙者に二言はないでござるよ。昨日、宣言していたでござろう? ならば、稼いでくるのは当然のことでござるよ。それで? 昨日の宿代はいくらになるのでござるか?」
ここからが重要なのでござるよ。流石に払えないということはないと思いたいでござるが、百パーセントないとも言い切れないのが怖いところでござる。部屋も飯も温泉もとてもいいものでござったからな。それなりのお代を求められることくらいは覚悟しているでござるよ。
「はい、昨日の宿泊費が4万ゴールドです。初心者の冒険者の方のクエスト報酬の相場は5千ゴールドと言ったところでしょうから、無理に今日お支払いいただかなくてもよろしいですよ?」
「女将が心配する必要はないでござるよ。4万ゴールドでござるな。拙者はその辺の初心者冒険者と一緒にしないでほしいでござるよ」
4万ゴールドとは余裕で足りるでござるな。
小さいほうの袋に5万ゴールド入っているでござるから、これを出せばお釣りが来るでござるよ。
カウンターに報酬の入った袋をことっとおく。
「これには5万ゴールド入っているでござるよ。これでたりるでござろう?」
「もちろんです。一日で5万ゴールドも稼いでしまうとは、本当にすごいですね。お客様は今日冒険者になられたばかりなのですよね?」
「間違いないでござるよ。拙者は今日冒険者登録を済ませたばかりでござる。しかし、拙者は特別テストを受けて、Bランク冒険者からスタートしたのでござるよ。より高難易度のクエストを受注できたというわけでござる」
拙者が得意げに語ったでござるが、女将の表情はかなり驚いているように見えるでござるな。
冒険者のことを知っているようでござるし、拙者のすごさが伝わったのでござろうな。まあ、わかれば良いのでござるよ。




