55話
これで冒険者ギルドにいる意味もないでござるし、早速宿代を支払いに行くでござるかな。
貸しを作っているのは気持ちが悪いでござるから、一刻も早く返しに行かないといけないでござるよ。残った金は何に使おうでござるかなぁ。特に予定はないでござるが、この世界に来て初めての買い物になるのでござるから、それなりのものを買わないといかないでござるよ。修学旅行に来た時に調子に乗って買う木刀とかみたいなものはダメでござる。
受付に背を向け、冒険者ギルドの入口へ向かって足を進める。
「おい、てめぇなんで帰ろうとしてんだよ。俺との話はまだ終わってねぇだろうが。俺の換金が終わるまでそこでおとなしくしてやがれ!!」
「ああ、忘れていたでござるよ。もう忘れる程度のことでござるから、拙者も帰ってもいいでござるか? 拙者はお前には用はないでござるし」
「ふざけんな!! 俺が用があるんだよ。てめぇだけ先に帰ろうなんて許さねぇぞ!!」
「ドデカさん、並んでないんでしたらそこをどいてください。後ろに並んでいる方々が見えないんですか? 早くしてください」
「ちょっと待て、俺も並んで待ってたんだよ。おい、ちゃんと待ってろよ」
お姉さんにダメだしされているでござるよ。ダサいでござるな。さらに、拙者に向かって強がっているのが余計ダサさを増させているでござるな。しかし、拙者がドデカを待つ意味なんてどこにもないでござるからなぁ。どうしたもんかでござるよ。
はあ、仕方ないでござるな。今は金も貰って気分がいいから少しだけ待ってやるとするでござるかな。拙者も並んでいる退屈な時間はドデカが話し相手になってくれていたでござるからな。当の本人はそんなつもりはまったくなかっただろうでござるが。
「金を入れている袋が意外とかさばるでござるな。拙者のポケットがぱんぱんでござるよ。流石に量が多いでござるから、こうなるのも仕方ないのでごろうな。何か鞄でも持ってれば大分ましになりそうでござるな。今度は用意してくるとするでござるか」
拙者のポケットは、それほど大きくないでござるからな。それに、財布も持っていないでござるから困るのでござるよ。拙者が前世で持っていた財布ではこの大量の硬貨は入らないでござるが、こちらの世界ではこの硬貨を入れる用の財布があるはずでござるよ。冒険者が皆、この量の硬貨を持ち歩いているわけないでござるからな。
「待たせたな。よかったぜ、てめぇのことだから俺のことを放ってそのまま帰るんじゃねぇかと思ってたからな」
「お前が待てって言ったのでござろう。拙者だって早く帰りたかったでござるよ」
「その通りだな。まずは、てめぇの正体を教えてもらおうか? てめぇはどこぞの町から来た、元冒険者だろう? 俺の予想だと、さしずめランクが上がらなくなって別の町へ移動してきたとかそんなところだろう? どうだ? あってるだろ?」
おんなじことを疑われるのは何回目でござろうか。そんなに冒険者登録というものは簡単に消せて、再登録できるようなシステムなのでござるか? これでは、欠陥だらけではござらんか。もちろん、わざわざランクを下げて再登録するようなもの好きはそうそういないのでござろうが。
「残念ながらお前の予想は見当違いもいいところでござるよ。拙者は、今日初めて冒険者になったのでござる。そんな拙者に負けて、プライドが粉々になってしまっているのかもしれないでござるが、これは事実なのでござるよ」
「そんなわけがねぇだろ。レベルなんてモンスターと戦う以外に上げる方法なんてねぇんだよ。それが、最初から高レベルなんて絶対におかしいだろぉが!!」
「まだドデカには説明してなかったでござるか? 拙者は、迷い込んだ森で大量のモンスターを討伐して一気にレベルを上げたのでござるよ。お前のいう通りモンスターと戦ってレベルを上げているのでござるよ」
実際には戦ったというか森で適当にスキルを連発しただけでござるがな。そのおかげで拙者は大量のモンスターを討伐してレベルが上がったのでござるから、スキルは偉大なのでござるよ。
「はぁ!? スキルでモンスターを大量に討伐しただぁ? そんな強力なスキルを持ってたのか? 俺との決闘の時にはそんなスキル使ってねぇだろうが!!」
「拙者がもしスキルを使っていたらお前は確実に死んでいるでござるよ。それでもよかったのでござるか? そもそも、やりすぎるなとギルドマスターに止められていたから使うつもりもなかったでござるよ。拙者が欲しかったのは金だけでござったからな」
「舐めやがって、俺がてめぇごときのスキルで死ぬだぁ? ありえねぇよ。あれは油断してたところにたまたまいいのを貰っただけだって言ってるだろうが!!」
本当にしつこいでござるな。もうドデカは始末したほうがいいでござるか? このままひと気のない場所に移動してサクッと殺してしまったほうがいいのではござらんか? 今後もこの調子で絡まれるのは正直面倒でござるよ。もうどうせ、冒険者を4人も殺しているのでござるから1人くらい増えても変わらないでござるよな。しかし、あの四人はこの町では有名な冒険者なのでござるよな、それなら不審がられるのも時間の問題でござろうな。




