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52話

 拙者はなんて間の悪い男なのでござろうか。悔やんでも悔やみきれないでござるよ。もう少し早く帰ってきていればこの列には並ばずに済んだかもしれないのでござるよ? 列に並びながらこんなことを考えている時点であほでござるか……。


「マリリンは20分から30分くらいで順番が回ってくるとか言っていたでござるが、怪しいでござるな。拙者の目には、そんなに早く順番が回ってくるようにはとても見えないでござるなぁ」


 はあ、金を手に入れるためとはいえ、面倒でござるよ。

 誰か代行で並んでくれないでござるかな。それこそ、マリリンに頼めばよかったでござる。いまさら列を離れたら拙者の後ろに並んでいる冒険者どもにも抜かされてしまうでござるからな。この作戦は次に活かすでござる。拙者はただでは起きないのでござるよ。


「ひ、お、お前……タケシじゃねぇか。なんでお前がこんなところにいるんだよ」


 後ろから突然声をかけられ振り向くと、朝にボコしたドデカが怯えた表情で立っているではないでござるか。


「おお、ドデカでござるか。朝はすまなかったでござるなぁ。あれでもかなり加減をしたつもりでござったが、まだ足りていなかったようでござるよ。拙者の落ち度でござる」


「う、うるせぇ!! あれは俺が油断してただけだ!! お、お前なんかにやられるなんておかしいだろ!!」


「納得いかないのでござるか? それは大変でござるな。拙者は構わないでござるよ。また決闘をするでござるか? なんならクエストの達成報告を終わらせた後でよければ付き合うでござるよ」


「じょ、冗談じゃねぇよ。またお前なんかと戦える訳ねぇだろうが」


「はて? 先ほどまでとはいっていることが異なるようでござるが……どうしたのでござるか? 拙者の強さに怖気づいてしったでござるか?」


 拙者に一度ぼこぼこにされているのでドデカがこうなってしまうのも無理はないでござるよな。圧倒的な力の差の前に敗北したのでござるから、当然恐怖を覚えるものでござる。


 しかし、拙者も間が悪いとは思っていたでござるが、ドデカはそれ以上でござるな。ここで拙者と出くわしてしまう不運はなかなかのものでござるよ。絶対に会いたくなかったでござろうしな。


「な、何だ。今日はちょっと調子が悪いんだよ。そ、そうだ!! お前に負けたのも調子が悪かったせいだ。きっとそうだ、絶対にそうに違いないぜ!!」


「わかるでござるよ。調子が悪いときは何をしてもうまくいかないでござる。その気持ちは拙者にも痛いほどわかるでござるよ。拙者の気が利かなかったようでござるな。ドデカには、しっかりと調子を整えてから再戦するべきでござるよな。拙者のほうはいつでも構わないでござる、いつでもかかってくるでござるよ」


 ドデカの顔が何を言ってるんだという表情で埋め尽くされているでござるな。

 拙者の気遣いに声も出ないようでござるよ。まあ、ドデカと再戦したころで瞬殺するのは決まっているでござるが。


「わりぃな。俺にはお前へのリベンジよりも大事なことがあるんだよ。それが片付いたらにしてくれ」


「まさか、尻尾を巻いて逃げ出す気でござるか? ドデカは一応Aランク冒険者なのでござるよな?」


「おお、そうだがそれがどうしたんだよ? 今そんなことが何に関係あるって言うんだよ?」


「いやいや、大事なことというのはSランク冒険者になることなのかと思っただけでござるよ。でもドデカの実力でSランク冒険者になれるものなのでござるか? それほどSランク冒険者とは簡単になれてしまうものなのでござるか?」


「舐めやがって!! 俺はAランク冒険者でも相当上位なはずだ!! この町で一番Sランク冒険者に近いのはこの俺様なんだよ!!」


 ドデカ曰く、そういうことらしいでござるがこの程度のレベルでこの町最強のAランク冒険者とは残念過ぎるでござるよ。まだあの三人組のほうが光るものがあったように感じるでござるよ? まあ、ちゃんと戦ったわけではござらんから、はっきりと言えるわけではござらんが。


「それに、ドデカよりも拙者のほうが強いのでござるからSランク冒険者に近いのはドデカではなく拙者のほうでござろう? そこは勘違いしないでほしいでござるよ」


「ちっ、だからてめぇが俺に勝ったのはまぐれだって言ってるだろうが!! ムカつく野郎だぜ」


 興奮しすぎて声が大きくなっているでござるな。

 これでは、周りの冒険者にも聞こえているでござろうな。ドデカも墓穴を掘ったでござるよ。


「おい、今、ドデカのやつこっちの新人冒険者に負けたって言ってなかったか?」


「俺にも聞こえたぞ。はっきりとそう言ってた」


「何よ、ドデカも新人に負けるなんて大したことないじゃない。今まで威張っていたくせに恥ずかしいわね」


 こいつらは朝の時も周りからごちゃごちゃ言っていた奴らではござらんか。

 ドデカに睨まれただけで逃げ出していたような奴らがドデカが負けたという話を聞いてまた調子に乗っているのでござるな。これは拙者としても少し腹が立つでござるな。

 それに、どさくさにまぎれて拙者のことも貶めるような発言をしているでござるよ。


「聞こえてんぞお前ら!!」


 ドデカが叫ぶ。


 途端に周囲の冒険者は散らばって行ってしまったでござる。

 見ていて惨めな気持ちになってくるでござるな。

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