50話
今から町へ帰って、まず冒険者ギルドにより、報酬を受け取る。想像するだけでもワクワクしてきたでござるよ。
もう楽しみすぎてスキップしながら帰っているでござるからな。テンション爆上げの武士はここでござるよ!!
「はあ、これで拙者も無一文を卒業でござる。短いようで長かったでござるな。金さえあれば何でもできるでござるからな。金を持った拙者に死角なしでござるよ。どんな困難に見舞われてももう大丈夫でござる。どうとでもなるでござるよ」
気が付けば、スキップで山を下り終わってしまっているでござる。途中モンスターとは出くわさなかったみたいでござるな。まったく気が付かないかったでござるから、きっとそういうことでござろう。
後は、この平原を進むだけでござる。
視界にはもう町の壁が見えているでござるし、大体2,3キロ位といったところでござるかな。
「ここからはダッシュで帰るでござるか? いやいや、金を目の前にして焦るのは愚の骨頂でござるよ。そんなことでは真の武士にはなれないでござる。真の武士は何事にも冷静に対処できるのでござるよ」
歩くと心に決めたのはいいでござるが、結局このままスキップで帰るのでござろうな。流石に町に近づいたらスキップは控えるようにしておいた方がいいでござるかな。あまり大勢の人に目撃されたら面倒でござる。変人とか噂されても困るでござるからな。
「何に金を使おうでござるか。まずは、おいしいものを食べるって言うのは? 宿で大分ご馳走を食べているから別にって感じでござるな。それならば、何か買い物でも? 武器や防具でござるか? どちらもそんなに欲しくないでござるな。でも愛刀はいずれ確保しなければならないでござるし、下見に行くのは悪く無いかもしれないでござるな」
次々にいろいろな考えを思いついては却下されていくでござる。
拙者は武士でござるし、欲というものが薄いのかも知れないでござるな。心を動かさないよういする修行もしてきたでござるから仕方のないことでござろう。これでもかなりはしゃいでいるつもりではござるが、世間一般から見ればまだまだなのかもしれないでござるな。
「金を使うのはちゃんと宿代を払ってからにするでござる。武士は約束を守るでござるからな。女将につけておいてもらった分をすぐに支払わないといけないでござる。おお、かなり町が近づいてきたでござるな。そろそろ、スキップはやめておくでござる」
何とかスキップをやめ、ゆっくりと歩きにシフトしていくでござる。
自分の欲求を抑えるのは得意でござるからな。これくらいなんてことないでござる。
「気を抜いたらすぐにスキップしてしまいそうでござるよ。危ないでござるな」
日も落ちてきて、町の入口にはぞろぞろと冒険者たちが町へ入っていく姿が見受けられるでござるな。
拙者もこの中の一人ということでござるか。毎日、危険な目にあいながらクエストをクリアして、日銭を稼ぐ。これが冒険者というものでござるか。もちろん、中には高ランクのクエストをクリアして大量に報酬を貰っている奴もいるのでござろうが、低ランクの冒険者であれば、きっと報酬も割のいいものではないでござろう。
「つまらないことを考えてしまったでござるな。所詮、拙者以外はちっぽけな存在でござる。大半はゴミと思っているでござるからな。ゴミがどうなろうと拙者の知ったことではないでござるよ。その中でも努力すれば、拙者が武士見習いに昇格させてやろうでござる」
「なんかあいつ一人でぶつぶつ喋ってねぇか?」
「クエストで頭をやったんだろう。お前も気をつけろよ、明日はわが身かもしれないんだからな」
「俺はそんなへましねぇよ。すぐにBランクに上がって、その次はAランク冒険者だ!! まだまだ俺の成長は止まらないぜ!!」
「ははっ、頼もしい限りだよ。俺も負けないようにしないとな」
急に横に現れたと思えば今のセリフ、まさか拙者に向かって言っているわけではないでござるよな? そんな命知らずなやつがいるわけないでござるよ。拙者の気のせいでござるよ、自意識過剰というやつでござる。
大体、拙者にはこんな雑魚と関わっている暇はないのでござる。
しかしまずいでござるよ、こんなに冒険者が戻ってきているとなると、必然的に冒険者ギルドの受付も混雑しているのではござるよな。せっかくクエストをクリアしてきたというのに、待たされるのは勘弁でござるよ。
「こうしては居られないでござる。冒険者ギルドへ急ぐでござる!!」
「ござるだってよ。変な喋り方だな。まさか頭がおかしくなった影響で口調までおかしくなるなんてな。可愛そうなやつだぜ」
「おい、聞こえるぞ。あまり、知らない人をバカにするのはやめとけ」
これは間違いなく拙者にいっているでござるな。
こいつらをここで血祭りに上げることは簡単なことでござるが、そんなことをしてしまえば、今までの努力は水の泡でござる。人殺しとして指名手配され、クエストの報酬も受けてれないでござろう。
ここでぶち殺したいのは山々でござるが、状況がよくないでござるよ。
運のいい奴らでござる。タイミングは悪ければ確実に死んでいたでござるよ。殺気だけでも飛ばしておくとするでござるか。
殺気を込めた視線を二人の冒険者へ送るでござる。
「ひ、ひぃ!! 何だ? 背筋が!?」
「おい、おかしいって。寒気が止まらない」
効果ありのようでござるな。しっかりと後悔するでござる。
拙者は先を急ぐとするでござるかな。




