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5話b

 拙者を馬鹿にした神ことじいは死んだ。今しがた授かった能力で一刀両断したでござるよ。


 近づいて生死を確認するが、心臓の鼓動は止まっており、息もしていない。

 これで拙者を侮辱した分は清算したでござるな。まったく、相手を考えて発言するくらいの節度は持ってほしいでござるよ。


「さてと、早速異世界へ転生したいところでござるが……どうすればいいでござるか? まずいでござるよ。拙者は異世界への移動方法なんてしらないでござる。じいは、既に死んだでござるから。これは詰んだでござるか……」


 現状を一度整理するために頭を落ち着かせるでござる。

 第一に、拙者は死んでこの空間へ呼び出されたということでござる。となれば、既に死んでいる身、このままここに滞在しておくのにも限度がありそうでござる。

 次に、案何をしてくれるはずだったじいをこの手で殺してしまったことでござる。これは仕方のないことでござったから後悔などは内でござるが、案内を終えるまでに殺すのはまずかったでござるなぁ。

 最後に今この状況でござる。この空間にはもう拙者以外のものは何も存在していないでござる。これでは、すぐに空腹で死んでしまうでござるよ。それに、トイレもないでござる。死活問題でござる。


「こんなことになるのでござったら転生する間際にことを起こすべきでござったな。一生の不覚でござる」


 いまさら、起きたことについて考えるのは時間の無駄でござるな。じいを屠ったことについては後悔なんてないのでござるから、くよくよする必要なんてないでござるな。何事も前向きに考えるのがいい武士の証でござる。


 現状を打破することのできる材料は何かないでござるか? くまなく探すでござるよ。この空間にヒントは隠されているはずでござる。そうでなければ拙者はここで終了する運命でござる。そんなわけにはいかないでござる。このすべてを一刀両断するスキルには無限の可能性が秘められているのでござるよ。拙者の愛刀さえ戻れば、もはや拙者に斬れないものはこの世に存在しなくなるでござるな。そう、たとえ地球であっても一太刀で一刀両断してしまうでござる。宇宙さえも一刀両断することができるはずでござる。それが、こんな変な空間で餓死してしまうなんて許されていいことではないでござるよ。これもすべてじいのせいでござる。




 この空間を歩き回って探してみたがやはり拙者いがいには何も存在していないでござる。


「思ったよりも狭かったでござるなぁ。精々教室くらいでござろうか。最初は体育館くらいはあると思っていたでござるが。この空間の大きさは見た目ではわからないものになっているようでござるな……そんなことはどうでもいいのでござる。早く脱出する方法を考えないとまずいでござるよ」


 ついつい思考がそれてしまったでござるが、拙者が本気を出すのはまだまだこれからでござる。脳の稼働領域を広げるでござるか。現在はおおよそ、3割といったところでござるかな。これを一気に7割まで持っていくでござる。きっといい解決策が思いつくはずでござる。


 我が家に伝わる脳のリミッター解除法を使い、脳の性能を底上げする。

 これで、少しの間拙者は常人の3倍ほどの思考力を手にすることができるでござる。もはや今の拙者は並みの武士ではござらん。既に大名クラスの武士へと変貌しているのでござる。


「何か手立ては……いっそここで自決してみるのはどうでござろうか? どうせ、拙者の体は一度死んでいるものでござる。もしかすると、死ぬことによってこの場所にとどめられている魂を開放できるのではござらんか?」


 突拍子のないことを思いついたが、とてもではないが、実際に実行してみる気にはなれないでござるな。いくら可能性がゼロではないとはいえ、しぬのはリスクのほうが勝つでござるよ。

 もっと簡単に解決する方法はないでござるか? そうでござるよ、せっかく貰ったスキルを活かさない手はないでござる。このすべてを一刀両断するスキルでこの状況を乗り越えられるはずでござる。何といってもチートスキルでござるからな。困ったときはチートに頼るのが一番でござるよ。


 しかし、このすべてを一刀両断するスキルをどうかつようすればこの空間から出られるでござろうか。この空間を一刀両断するなんてどうでござるか? 我ながらナイスアイデアでござるな。拙者のスキルは一刀両断することしか脳のないスキルでござる。ごちゃごちゃ考えたところでほかの使い道なんてそんざいしなかったのでござるよ。拙者が今いるこの空間を切り裂いて、外へ脱出する、単純でいい方法でござるな。


「早速やってみるでござるか。っせい!!」


 ズバンッ!!


 手刀が空を斬った。

 すると、ゆっくりと拙者の手刀が通ったところに切れ目が入っていく。


「おお、きたでござるか? だんだん広がっていくでござる」


 これなら拙者が通れるくらいまで広がりそうでござるな。最初からこうしていればよかったでござるよ。これで、拙者はようやくこの空間とお別れできるというわけでござるな。

 そう時間は立っていないはずでござるが、妙に長く感じていたでござる。


「行くとするでござるか、いざ!! 異世界へ参る!!」


 空間の裂け目へと飛び込んだ。

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