44話
「やっと町から出れたでござるよ。まさか、目的地に着くよりも町から出るほうが大変だとは思わなかったでござるな。道なんて直線に作っておけばいいものを、なんでこんなに入り組ませるのでござるかな」
目視で山を確認できた時点ですぐにつくかと思っていた拙者でござったが、町から出る道がまっすぐではないとは思わなかったでござるよ。思わぬ伏兵でござる。少し時間をかけてしまったでござるな。
結局町からでる道はよくわからなかったでござるから、壁をジャンプで超えたのでござるよ。最初からこうすればよかったでござるな。壁にたどり着いてしまったときはどうしようか本気で悩んだでござる。
「外へ出てさえしまえばこちらのものでござるよ。あとは、一直線に進むだけでござる」
道に迷って抜けかけてしまっていた気合いを再度入れ直し、ダッシュで山へと向かった。
「目の前まで来ると案外高い山でござるな。町から見えるだけはあるでござるよ」
ものの数分で山の麓へついた拙者は山の標高が意外に高かったことに少し驚いてしまったでござるよ。
「この山を登ろうと思ったら一日では帰れないのではござらんか? 町から近いというだけでクエストの報酬を少し安くしてはござらんか? 拙者であれば、何の問題もないでござるが、凡人では到底無理でござるよ」
マリリンもこの山の標高は知っているはずでござるのに、もし拙者が一日で帰ってくれなかったらどうする気でござったか、不思議でござるな。それとも、ロックスネークとやらは山の下のほうに生息しているのでござるか?
「ここで、悩んでいても仕方がないでござるな。目についたモンスターは全部討伐で進んでいくとするでござるか」
登山スタートでござる。
「モンスターの一匹すら見当たらないでござるが、一体これはどういうことでござるか? もしかして、拙者の強さにモンスターが怖気づいてし待っているのではござらんか?」
いくら何でもこれはおかしいでござるよ。想像していた状況とは真反対でござる。
なんでモンスターが一匹も現れないのでござるか? これでは、追加報酬なんて無理でござるよ。それ以前にクエストの達成も怪しくなってくるでござる。
「いやいや考えすぎでござるよな。きっとこの山も麓のほうはモンスターが生息していないだけでござるよ」
マリリンもモンスターが生息していないのは町だけとか言っていたでござるが、山にモンスターがいるといってもその全部にいるとは限らないでござるよ。上のほうに行けばモンスターも出てくるはずでござる。
「まだ時間はあるでござるし、少し気長に行くとするでござるかな。山で走りまわるのも疲れるでござるし、早歩き程度で登っていくとするでござる。
「大分登ってきたでござるな。遠くに町が見えるでござるが、ちっさいでござるよ」
山登りも中腹くらいに差し掛かったでござろうか。いまだにモンスターとは出くわしていないでござる。
もう山頂まで登る覚悟はできているでござるし、今さら何も感じないでござるがいくら何でも……何でもないでござる。
これは多分、調子に乗った冒険者どもが、雑魚モンスターを狩りつくしてしまっただけでござるよ。追加報酬目当てで狩りまくったのでござろう。拙者もそのつもりでござったし、そういう輩がいてもおかしくないでござるよ。
ガサガサ。
「お? 今何か動いたでござるか?」
前方で何か音がしたような気がするでござる。
ついに念願の初モンスターでござるか?
音のしたほうへすぐに移動する。
いつモンスターが出てきても対応できるよう、軽く膝をまげ準備完了でござるよ。
「さあ来るでござる。拙者はいつでもいいでござるよ」
「ギャギャァァーー!!」
茂みから飛び出してきたそれはどこかで見たことがあるような風貌でござるな。
「なんだ、サルでござるか。まあ、山にサルはつきものでござろう。拙者の期待を返してほしいでござるよ。おっと」
サルが急に拙者に飛びかかってきたでござるよ。
「落ち着くでござるよ。拙者は敵ではないでござる。むしろお前の山のモンスターの狩りに来た味方でござるよ。お前もモンスターが居たら住みづらいのではござらんか?」
「ギャッ、ギャギャァァーー!!」
まるで聞く耳を持たないでござるな。
まったく面倒なサルでござるよ。動き自体はそれほど早くないでござるからかわすのは容易でござるな。しかし、この長い爪で引っかかれれば普通の人間はただではすまないでござるよ。
「じゃれつきではすまないでござるよ。もうやめるでござる」
尚も拙者に向かい爪を振るサルに少し違和感を覚えるでござる。
拙者の知るサルはこんなに凶暴でしかも爪が伸びていたでござるか? もしかすると、こいつはサルではなく、サルっぽいモンスターなのではござらんか? 動物で許される範囲を超えているでござるよ。危険な存在でござる。
「こいつはモンスターだと信じて討伐してしまうでござるか。違っていたら後で謝るから許してくれでござる」
久々の戦闘開始でござるな。
腕がなるでござるよ。




