40話
「お前もバカだなぁ。ちょっと実力があるからって、Aランク冒険者の俺に勝てるとでも思ってるのか? 始まる前に降参しておけば痛い目を見ずにすんだってのによ、もう後悔してもおせぇぞ」
「うるさいでござるよ。頭が残念なのはわかっていたことでござるがここまでとは思わなかったでござる。拙者に殺されないように気張ってくれでござるよ」
「おいおい、マジで言ってんのか? やっぱりてめぇはここでしめておいたおいたほうがよさそうだな。いくぜ!!」
そういうと、ドデカがこちらに向かって走り出したでござる。
遅いでござるな。こうやって見てみると、森でのモンスターたちはかなりの早さで動いていたことがわかるでござるよ。なにも役に立つことはないと思っていたでござるが、思わぬところで役に立ってきたでござるな。拙者も予想外でござるよ。
「オラァァァァ!!」
大振りな右ストレートを放つがもちろんこんなへなちょこパンチをくらうはずもなく、あえてギリギリでかわすでござる。
「オラッ、オラッ、オラァァァァ!!」
立て続けにパンチを繰り出してくるが、どれも止めって見えるほどに遅いでござる。
喰らってみて、どれほどの威力なのか確かめてみるのもありでござるが、こんな雑魚の攻撃を食らったとなると拙者のプライドが傷ついてしまうでござるからなしでござるな。
「かわすので精一杯か!! まだまだ行くぜぇぇーー!!」
拙者がギリギリでかわしているのを見て、ドデカは何とか避けていると勘違いしているみたいでござるな。拙者にこの程度の攻撃で通じると思っているとは片腹痛いでござるよ。
「オラッ、オラッ、オラァァァァ!! おい!! 避けてばっかりか!? さっきまでの威勢はどうした?」
よく吠える雑魚でござるな。
Aランク冒険者でこれとは、冒険者の質は知れたというものでござるよ。拙者のスキルを使うまでもないどころか力の数パーセントを出すだけで軽く倒せてしまいそうでござるぞ。
まだ、威力はすごいという可能性がほんの少しだけ残されているでござるが、ありえないでござるよな。そろそろ少し反撃してみるでござるか。
「お言葉に甘えて反撃させてもらうでござるよ」
ドデカのパンチにカウンターの要領で軽くパンチを打ち込む。
バゴンッ!!
「げうぇっ!!」
拙者の攻撃にまったく対応できなかったドデカは綺麗に顔面を打ちぬかれゴロゴロと後方へ転がって行ったでござる。
ちょっと力を入れすぎてしまったでござるか? 今の何て、力を入れてるか入れてないかよくわからないようなレベルのパンチでござったというのに、この吹き飛び方は大げさでござるよ。
Aランク冒険者とやらの打たれ強さを見せてもらおうではござらんか。流石にこれくらいの攻撃で終わったりはしないでござろう。
「ゴハッ!! て、てめぇ。一体何をしやがった? ……何も見えなかったぞ……」
すごいきつそうな様子で立ち上がったドデカは自分が拙者に殴られたことにも気が付いていないでござる。まるで話にならないでござるな。
「拙者は軽くパンチをお見舞いしてやっただけでござるよ。拙者はもともとは刀を使い戦う武士。こぶしで戦う何てことは本来はしないでござるが、お前程度であれば刀も必要ないでござるな」
「う、嘘だろ……グガッ」
バタンッ。
限界だったのかドデカはそのまま床へ倒れこんでしまったでござる。
「勝負あり。勝者、タケシ!!」
「え? 何の冗談でござるか? まさか本当に気絶しているのでござるか?」
「うん? そんなに驚いてどうしたんだ? 綺麗にカウンターを決めてドデカをノックアウトしてたじゃないか。見事だったぞ」
「そういうことではござらん。拙者は今のパンチに力なんてほとんどいれていなかったでござる。それでもう勝負がついてしまったことに驚いているのでござるよ」
「ああ、まあ、タケシのステータスを見たときからこうなることは予想できていたからな。ドデカじゃ相手にもならないことくらい俺もわかってたさ。でもなぁ、特別テストは基本的にAランク冒険者かBランク冒険者が相手をする決まりだからな。灸をすえるという意味でもドデカを採用したわけだ」
つまり、ギルドマスターもドデカがてんで話にならないことを知っていたというわけでござるか。手加減とは言っていたでござるが、これはなかなかに衝撃的でござるよ。もうすでに拙者はこの世界で最強の存在になってしまっているくらいなのではござらんか?
「これでテストは終わりだ。ドデカは俺が介抱しておくから、マリリンに手続きをしてもらってくれ。それじゃあ、今度ともよろしく頼む、タケシ」
「わかったでござる。マリリンすぐにお願いするでござるよ。ついでに拙者におすすめの稼げるクエストも紹介してくれでござる」
「かしこまりました。戻って、タケシさんの冒険者ランクの変更と、クエストの受注を行いますね。行きましょうか」
ドデカのもとへ歩いて行っているギルドマスターを背にし、拙者とマリリンは訓練場から出て、冒険者登録を行った受付へと戻ったでござる。




