4話
「ほう、すべてを一刀両断するスキルとは自称武士のおぬしにはかなり適したスキルではないか。じゃが、本当にそれでよいのか? まだ時間は十分にあるのじゃぞ?」
「じいよ、拙者は一度決めたことを絶対に曲げないと言ったばかりでござろう。拙者は武士。二言はないでござる」
自称武士とは拙者も舐められたものでござるな。既に決まっていることではござるが、スキルを貰ったらまず一番に一刀両断するのはこのじいでござるな。拙者にスキルを与えたことを後悔する間も与えるつもりはないでござるよ。
しかし、すべてを一刀両断するスキルは少しばかりやりすぎている気もするでござるな。ここは、大抵ものとかにしておくべきでござろうか? いや、それではこのじいを一刀両断できなくなるかもしれないでござる。妥協はよくないでござるな。
「おぬしがよいのじゃったらよかろう。わしが口を出すところではないじゃろう。わかったぞい、おぬしにはすべてを一刀両断できるスキルを授けることにしよう。スキルはわしが授けたその瞬間からおぬしのものとなるからの。タイムラグなんぞはないぞい」
「それはありがたいでござるよ。拙者も早く試し切りをしてみたいでござるからな」
「試し切りは異世界に行ってからにしてくれるとありがたいのぉ。なにせ、ここにはおぬしの試し切りになるようなものは何一つ存在しないのじゃからな。しばし辛抱じゃな」
何をとぼけたことを言っているのでござろうな。目の前に絶好の試し切りじいがいるではござらんか。いくら神とは言えど、真っ二つになれば死ぬのは自明の理。拙者はまず最初に神殺しの異名を手に入れることになるでござるな。本当はラスボス的な存在でござろうが、そんなことは拙者には関係ないでござる。
「それでは、スキルを授けるぞい。ちょっとこっちへ寄るのじゃ」
じいが手招きしてくるのでしょうがなく近づく。
ここで無視してみるのも面白いかと思ったでござるが、後々面倒なことになるような気配を感じ取ったのでやめておいたでござる。拙者は危機管理能力にも長けておるのでござるよ。
「行くぞい。カァァァーーー!!!」
「な、何事でござるか!?」
突然、近づいて目の前にいるじいが、大声で叫んだ。
流石にこれには拙者もビックリ仰天。思わず、無様に驚いてしまったでござる。
「これでしまいじゃ。無事におぬしへすべてを一刀両断するスキルを授けることに成功じゃ」
「かたじけない、じいよ。これで拙者も正真正銘武士でござるな。大儀でござるよ」
「おぬしのそのキャラ作りは何とかならんのかのぉ。まったく、これもすべておぬしの武士と書いてタケシと読む名前のせいじゃろうなぁ。おぬしはタケシであって、武士ではないのじゃぞ。山本武士よ」
「拙者の名前なんてどうでもいいことでござるよ。それに拙者のこれは断じてキャラ作りなどではござらん。心の奥底に潜む、拙者のなかの武士魂がそうさせているのでござる」
「そうじゃの。すまぬな。余計なことを言ったようじゃ。おぬしがそう生きたいと思うのであれば、好きにするべきじゃの。おぬしの人生じゃ、誰に何を言われようが気にする必要なんぞないぞい」
いきなりそんなこと言われてもさっきまで拙者の武士口調をやめろって言ってきた張本人でござるよ。
じいが最後に評価を上げようなんて考えてももう遅いでござる。度重なる拙者への侮辱はもう我慢できるラインをとっくに超えているのでござる。最後に少し話をして唐突に一刀両断するでござるか。
「じいよ、そういえばじいの名は聞いていなかったでござるな。これも何かの縁、名を聞いておくでござるよ」
「わしは神じゃよ。名なんぞない。この世界のすべてを司る神じゃ。わしのことは尊敬の念を込めて神様と呼ぶのじゃな」
「名もないじいでござるか……仕方ないでござるな。ここは拙者が一肌脱ぐ場面でござるな。じいに名を考えてやるでござるよ」
「ほう、このわしにおぬしが名じゃと。おもしろいのぉ、せっかくじゃ、きいておくとするかの」
まるで踏ん反り返るような態度が気に入らないでござるが、拙者のネーミングセンスを見せつける最初の機会が訪れたでござる。どうせ、もうすぐ死ぬ運命にあるじいではござるが、最後に名くらいは与えてやるのが武士の情けというものでござるか。
「決めたでござる。今日からじいの名は……」
ズバンッ!!
拙者の手刀がじいを真っ二つに一刀両断した。
「お、おぬし一体なんのつもりじゃ……ゴバハッ!! ……ガク……」
右肩から腰にかけて真っ二つにしたというのに、まさか喋ってくるとは恐ろしい生命力でござったな。流石は神と言ったところでござるな。
決して、いい名を思いつかなかったからこのタイミングで一刀両断したわけではござらんぞ。じいと喋るのにも飽きてきていたところでござったから、このタイミングになっただけでござる。
武士として手刀を使うなどプライドが邪魔したでござるが、愛刀が行方不明の今、これが拙者の持てる最高の刀でござったからな。まずは、異世界へ行って愛刀を見つけるでござる。




