36話
「実は、Sランク冒険者でしたとか言いませんよね?」
「そんなことをする必要があると思うのでござるか? 正真正銘拙者は今来たばかりでござるよ。確かに普通の人間よりは強いかもしれないでござるが、それは武士だからでござって、冒険者だからではござらんよ」
「そういうものなんですね。わかりました……ですが、このまま通常通りFランク冒険者から始めさせるわけにはいきません。こちらの方でテストをしますので少しだけよろしいですか?」
「嫌でござる。拙者には時間がないと言っているでござろう。邪魔するようなことをしないでほしいでござる」
「タケシさん、このテストを受けることで特例でFランク冒険者からではなく、成績に応じたランクからスタートできるのですよ。まだ説明していませんが、低ランクの冒険者では、受けるクエストに制限がかかってしまいます。もちろん、簡単なものばかりになるので報酬もそれに見合ったものになってしまうのです。そうなれば、タケシさんの目標額を今日一日で稼ぐことは難しいかもしれませんよ」
テストを受けなければFランク冒険者からのスタートとなって、一番下の冒険者に見合ったクエストしか受けられないということでござるよな。そうなれば、報酬なんて少ないに決まっているでござる。拙者の実力はSランク冒険者を軽くひねって殺したくらいでござるからSSSランク冒険者くらいになるはずでござるな。テストを受ければ、どのクエストでも自由に受けることができるようになるということでござるな。
「それはどれくらいの時間がかかるのでござるか?」
「そうですね、一時間もかからないと思います。あくまでも、タケシさんの実力を測ることが目的ですので。模擬戦をしてもらい、その結果でランクを決まるという流れになります」
「模擬戦でござるか? それならすぐに終わるでござるから問題ないでござるよ。要するにすぐに倒してしまえば終わりでござるよな」
「まあ、理論的にはそうなりますが、もちろん相手の方も相当強い冒険者を選びますから、そう簡単には行かないと思いますよ」
「拙者のステータスとレベルはSランク冒険者並みなのでござろう? 誰が来ようと楽勝でござるよ。それとも、拙者の相手はSランク冒険者なのでござるか?」
「いえ、流石にSランク冒険者が相手とまではしませんよ。タケシさんは冒険者としては初心者ですからね。しかし、Bランク冒険者程度であれば相手にならない可能性もありますから、おそらくAランク冒険者の方に相手を頼む形になると思います」
Aランク冒険者というと、あの三人組と同じくらいの実力というわけでござるか。
朝の運動にもなりそうにないでござるな。三人を相手にしても楽勝でござったからな。一対一の勝負となると一瞬でかたが付いてしまうでござるよ。
「その冒険者を倒せば拙者はSランク冒険者として登録できるのでござるか?」
「いきなりSランク冒険者は無理ですね。一番良くてもAランク冒険者かと思います。そのあたりの判断をするのは私ではなく、ギルドマスターになります。Aランク冒険者でも破格のスタートなので、よほどいい内容でもない限りはCランク冒険者くらいからのスタートになるはずです。私が3年間働いてきてこの制度を使用するのはタケシさんが初めてですから、私もそこまで詳しくは離せません」
「というと、冒険者は基本的に最低ランクのFランク冒険者からスタートするって言うことでござるか? 中には実力があるものもいるのではござらんか?」
「もちろん、少しステータスが高い程度の人であれば何人かいましたが、冒険者でもない限りはモンスターとの戦闘経験がありませんので、レベルが1の状態なのですよ。それでは、上のランクからスタートすることはできません」
最初に言っていたでござるな。拙者の場合は森でモンスターを狩っているからレベルが上がっているでござるが、普通に生活をしていればモンスターとの戦闘する機会なんてあるわけないでござる。
しかし、ギルドマスターが判断するとなると、さっきの話が終わるまで待たないといけないのではござらんか? それはちょっと時間がかかりそうでござるよ。
「大体わかったでござるが、すぐに準備は整うのでござるか? ギルドマスターといえば、さっき問題を起こした連中を事情聴取しているのではござらんか?」
「私も初めてのことなのでそのあたりのことは何とも言えませんが、一度ギルドマスターに報告してきますので、ここでお待ちください。できるだけ早くしてもらえるよう交渉してきますね」
「頼むでござるよ。クエストを受けれるようになったところで、受ける時間がなければ意味はないでござるからな」
拙者を残し、マリリンはギルドマスターが消えて言った奥の部屋へ入っていった。
さっきの件を話しているのでござるから、それなりに時間はかかりそうでござるよな。どう考えてもすぐにテストを行えるなんて思えないでござるよ。しかし、Fランク冒険者からスタートするというのは厳しいでござるし、困ったものでござるよ。




