34話
拙者について来いとはいい度胸でござるな。ついてきてくださいでござろう。
本当に殺す気があるのは拙者だけでござろう。拙者からしてみれば、こいつらの命何てものは拭けば飛ぶほど軽いものでしかないでござるからな。どうせこいつらに人を殺すことなんてできないでござる。しかしまあ、こいつについて行くのが面倒くさくなってきたでござるよ。もういっそここで血祭りに上げてしまったほうがいいのではござらんか? 誰が殺したかバレないようにやってしまえば何の問題もないでござるな。
「どうした? 怖気づいたのか? 早く来いよ、この臆病者が!!」
「やはりやめておくでござるよ。お前らに時間を割けるほど拙者は暇ではござらんかった。今日は、宿代を稼がないといけないでござるからな。すまない眼鏡君。後は君が頑張ってくれでござる」
「はぁ!? お前、俺をおちょくってんのか? ふざけるのもいい加減にしやがれよ。俺を煽ってきておいて時間がないだと? いいだろう今ここで格の違いってやつを見せてやる」
「はて? 公衆の面前で殺人を犯す気はないのではござらんかったか? 拙者は一向にかまわないでござるが、負けて恥をかくのはお前でござるよ。悪いことは言わないでござるから、やめておくでござる」
「ふざけんなよ!! 俺がお前なんかに負けるわけがないだろうが!!」
近くで大声を出されるのはうるさいでござるな。
もうこの町にいられなくなっても構わないでござるから、ここでやってしまうでござるか。
「そこまでだ!! ドデカ、いい加減にしろ。今度問題を起こしたら冒険者カードをはく奪すると言ったばかりだろう。そこの三人もちょっと一緒に来るんだ」
急に話にわって入ってきたおじさんに全員の視線が集まる。
誰でござるか? ドデカ? 知らないやつの名前でござるが、この中の誰かのことでござろうか?
「ち、違うんだよ。ギルドマスター。今回ばかりは理由があるんだ。話を聞いてくれよ」
「どんな理由があっても暴れていいことにはならないだろう。私の部屋で話を聞くから全員ついてくるんだ」
「え? それはもしかして拙者も入っているのでござるか? 今言った通り時間がないのでござるよ」
ここで連れていかれてことの説明をさせられるとなるとかなりの時間、拘束されることになるのではござらんか? そうなれば、必然的にクエストをこなす時間が減ってしまう。あの優しい女将でも今日金を稼ぐことができたかったら拙者のことを追い出すでござろう。
「そう時間は取らせない。ドデカは覚悟してもらうがほかの三人は説明をしてもらうだけだ。これはギルドマスターである私の命令だ、従わないという選択肢はない」
「拙者はまだ冒険者ではござらんから、従う義務もないでござるよな?」
「む、君はまだ冒険者じゃないのかい? もしかして、今日冒険者登録に来たところを巻き込まれたのか。それは災難だったね。わかった、冒険者ではなかったのなら君はいいだろう。しかし、明日以降同じようなことが起きた場合は俺の命令に従ってもらうからな」
「わかったでござるよ。拙者は問題を起こしたりしないから無用な心配でござるがな」
「おい、てめぇ冒険者ですらなかったのかよ。それなのに俺に食ってかかってきやがって」
「これ以上暴れるつもりかい?」
「ち、違うんだ。ついでちまっただけだ。本当だぞ」
さっきまでの威勢はどこに行ったのやら、恥ずかしいやつでござるな。
ギルドマスターが搭乗してくれたことでかなりの時短になったでござるな。あのままこいつの相手をしてたらもっと時間が取られていたことは間違いないでござる。
さっさと冒険者登録をすませて金を稼がないとあの最高の宿に泊まれなくなってしまうでござるよ。時は金でござる。
「ほら、君たち二人も来るんだ。問題を起こしたんだ、それなりの罰はあるから覚悟するんだ」
「ぼ、僕はドデカが暴れるのを止めようとしていただけです。話を聞いてください!!」
「だから、話は俺の部屋で聞くと言ってるだろう。口答えするようなら罰は重くなっていくがいいのかい?」
悲鳴を上げながら、三人はギルドマスターのおじさんと一緒に奥の部屋へと消えていったでござる。
眼鏡君は勇気をふり絞って止めようとしていたのに、哀れでござる。見るからに幸が薄そうな顔でござったからな。こうなるところまでセットだったのでござろう。
「さあて、気を取り直して拙者は金を稼ぐといするでござるかな」
てくてくと冒険者ギルドの中を歩いてみるが、どこが冒険者登録をする場所なのかわからないでござるな。
さっきギルドマスターに聞いておくべきでござったか?
「お困りですか? 会話を聞いていたのですが、まだ冒険者ではないのですよね? 登録でよろしければこちらでご案内できますよ」
「すまないでござるよ。どこに行けばわからず途方に暮れていたところでござった。おぬしは気が利くでござるな」
「いえ、ギルドの職員として当然のことをしているだけですよ。どうぞ、こちらへ」
この子のことは、拙者がこの町を滅ぼすときが来たとしても助けてやるでござるか。




