33話
しかし、この眼鏡の勇気にはあっぱれでござるよ。仕方がないでござるから、コテンパンにされる前に拙者が助けてやろうではござらんか。自分が勝てない相手にも臆せず向かって行くことは簡単にできることではないでござるからな。弱そうなくせしていい度胸でござるな。
「アニキちょっと待ってくださいよ。土下座でも何でもするんで僕のことは許してくださいよぉ……」
反対にこっちはとんだゴミくず野郎でござるよ。
眼鏡を生贄に自分だけ助かろうとしているのではござらんか? 武士の風上にもおけないやつでござる。
「おうおう、心配するなよ。お前たち二人は死刑が決定してるんだ。仲良く、あの世生きにしてやるよ」
「待て!! そこの人に手を出すことはこの僕が許さないぞ!!」
眼鏡君、自分を生贄に差し出そうとしていた奴を守ろうなんて泣かせるでござるな。
そんな奴を守る価値なんてないでござるよ。もうそいつはこのでかいのに殺してもらったほうがいいでござるよ。
でも、さっきまで観戦していた冒険者たちの話ではこれがいつものことだということでござったが、いつもはどうやって収拾しいるのでござるか? どうしても眼鏡君がこの場をおさめれるとは思えないでござるよ。もっと別の誰かが仲裁に入っていたのではござらんか?
「今日はいつも邪魔をしてくるコブソンのくそ野郎も現れねぇしな。もうお前らは終わりだ。ここで死ぬ運命なんだよ」
「コブソンさんはこの町唯一のSランク冒険者だぞ!! お前なんかよりも百倍すごいんだからな。きっと今もどこかで人類の敵となる凶悪なモンスターと戦っているんだ!! バカにするな!!」
「ひぃ、こえぇなぁ。まあ、ここにいない奴のことなんてどうでもいいんだよ。あいつはここにいねぇ。それがすべてだ」
コブソン? ああ、あの拙者に始めに絡んできたおじさんでござるか。覚えているでござるよ、なんか森を破壊したのは拙者だとかどうのこうのいちゃもんをつけてきたから始末してやったでござるな。まさか、それがSランク冒険者とは思わなかったでござるよ。あのストーカー男から聞くまではただの雑魚だと思っていたでござるからな。
これで話は理解できたでござるよ。いつもは、この町で一番強いというコブソンが仲裁に入って喧嘩を止めていたというわけでござろう。そして、今ここにはいない。というか、拙者が殺してしまったからいつまでたっても現れることはないでござるな。もしかすると、この喧嘩がここまで白熱してしまったのは間接的に拙者のせいというわけでござるか?
「コブソンさんがいなくたって関係ない!! 代わりに僕がお前を止めるんだ!!」
「ほんと、度胸だけはあるよなお前。そこだけは感心してるが、無謀だということを理解するんだな。お前には、実力が伴っていない。俺を止めることなんてできやしねぇんだよ」
「そ、そんなことやってみなくちゃわからないだろ!! 僕だって毎日訓練してるんだ。もう、お前何か僕の相手じゃないんだ!!」
残念ながら座眼鏡君……君の肉体は毎日訓練している人のものには到底みえないでござるよ。自分を甘やかしている訓練なんて本当の訓練足り得ないのでござるよ。自分にも厳しく行かないと意味なんてないでござるよ。
「もう、そこら辺にするでござるよ。いい加減見飽きたでござる」
見ていられなくなったので割って入るでござる。
突然の参戦に、三名は一斉に拙者の方へ視線を向けてくる。
眼鏡君の根性と、毎日訓練をしている向上心に免じて今回は拙者がお助けキャラとして眼鏡君を救って上げようではござらんか。
「誰だてめぇ。かんけぇねぇやつはすっこんでろ!! お前も殺されてぇのか!!」
「危ないですよ。こいつは僕が抑えるので、早く逃げてください。僕が時間を稼ぎます、さあ、今のうちに」
「眼鏡君。もう大丈夫でござるよ。拙者も実は静観を決め込むつもりではござったが、眼鏡君の勇気に感化されてしまったでござるよ。勝ち目のない敵に立ち向かっていくのは実に武士らしかったでござる。ここから先は拙者に任せるでござるよ」
「妙な喋り方しやがって、気持ちわりぃんだよ!!」
「今何と言ったでござるか? 拙者の聞き間違いではなかったら、この喋り方が気持ち悪いと申さなかったでござるか?」
「ああ、言ったよ。お前の気持ちのわりぃ喋り方が癇に障るんだ。早くどっか行けよ」
こいつは、拙者の最も大事にしているものを侮辱したでござる。拙者にとって武士とは命よりも大切なもの、それを気持ち悪いだと? もう眼鏡君なんて関係ないでござる。拙者が個人的にこいつを始末しないといけない理由ができてしまったでござるな。しかし、ここで盛大に首を飛ばすわけにも行かないでござるな。冒険者ギルドのど真ん中は少しばかり目立ちすぎるでござる。となると、どこかへ場所を移動したいところではござるが……。
「表に出るでござるよ。お前は今この瞬間、死ぬことが確定したでござる。せめて、人に迷惑をかけない場所で殺してやるでござるからついてくるでござる」
「はあぁ? この俺を殺すだって? お前なんて冒険者ギルドで一度も見たことなんてねぇぞ。どうせ、今日冒険者になりに来たばかりの新人だろうが、調子に乗ってんじゃねぇぞ!!」
「冒険者ランクですべての強さが決まるとでも思っているのでござるか? 浅はかでござるな。その程度のレベルでござるなら、程度が知れるというものでござるよ。拙者手を出すまでもなかったかもしれないでござるな」
「はっ!! 面白れぇなお前。俺を目の前にして、まったく動じることもなくそんな大それたことをいっちまえるんだからよぉ。ここまではコブソン以来だぜ。この場で血祭りにしてやりたいところだが、俺も公衆の面前で殺人を犯す気なんてねぇ。ほら、俺についてきやがれ。お前の死に場所まで案内してやるよ」
その言葉そっくりそのまま返してやるでござるよ。




