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31話

「女将よ、冒険者ギルドに向かいたいのでござるが場所を教えてくれでござる」


「あら、この町の冒険者ギルドへは初めてでございますか? わかりました、町の地図をお持ちいたしますので少々お待ちください」


「ああ、頼むでござるよ」


 女将はやはり有能でござるな。

 地図を見れば冒険者ギルドの場所も一発でござるよ。しかし、拙者はまだ金を持っていないでござるからな、冒険者登録に金がかかるなんて言われてしまえば、諦めるほかないでござるよな。


「すいません、お待ちいたしました」


 女将が手に地図を持って帰ってきたでござる。


「よくやったでござる。どれどれ……今いるこの宿は地図のどのあたりになるのでござるか?」


「はい、当旅館はこちらにでございます」


 地図の左の方を女将が指さし、現在地の確認を済ませるでござる。


「今いる場所がここになるということはこっちに行けば冒険者ギルドにつくでござるな。よし、もう覚えたでござる。地図は返すでござるよ」


「え? もう大丈夫なのですか? わかりました。それでは、本日はお代の方をいただきたいと思いますので、頑張ってください」


「心配しなくともがっぽり稼いで来るでござるからな。それではいざ参るでござるよ」


 宿を後にし、冒険者ギルドを目指して出陣する。




「この町もそれなりに人がいて賑わっているでござるなぁ。昨日は宿を探すことばかりに夢中になっていたのと、あの男に意識を割かされていたでござるからちゃんと見て回るのは初めてでござるな」


 道行く人はみな楽しそうな表情で歩いている。

 ここで、いきなりスキルを発動、大量虐殺をしたらどうなるのかなど興味が湧いてきてしまうでござるが、いくら拙者でも無駄な殺生はしないでござるからな。


 そんなことをしてしまえば金を稼ぐどころの話ではなくなってしまうでござる。それくらいのことはもちろん理解しているのでござるよ。理性で衝動を抑えることができるのも武士たる拙者のすごさでござるな。


「こっちに行けば冒険者ギルドにつくでござるが、もう少し寄り道をしてみてもいいのではござらんか? おっと、拙者は金を持っていなかったのでござるな。寄り道は帰りのお楽しみに取っておくとするでござる」


 寄り道をして、食べ歩きなんかをしたい気持ちをグッとこらえ、金を稼ぐために冒険者ギルドへ急ぐ。




「あれでござるな。外から見ただけでござると、少し大きな建物って程度の印象でござるが、でも地図ではこの場所が冒険者ギルドということになっていたでござるから、間違いはないでござろう」


 少し大きめの木造の建物を目の前に冒険者ギルドというくらいだからもっと大きい建物を想像していたでござるな。

 これでも、周囲に比べれば大きいでござるからこんなものでござろうか。ここが、この町の冒険者ギルドというだけで、実際の冒険者ギルドの本部ではないでござるからな。それほど大きくする意味もないのでござろう。


「早速入っていくでござるよ。金がかからないといいでござるが……」


 開放されているドアをくぐり、冒険者ギルドの中へと足を踏み入れる。


「おお、結構いるではござらんか。冒険者も朝が早いということでござるな。もしや、冒険者とは、拙者の世界でいう武士と同じなのではござらんか? ……朝が早いというだけでそう判断してしまうのは早計というものでござるか。思い出してみれば、拙者が出会った冒険者どもは、武士のほこりのかけらすらも持ち合わせていなかったでござったな」


 少しテンションが上がってしまい、意味のわからないことを口にしてしまったでござる。

 まだ朝で脳が完全に活性化していないのかもしれないでござるな。拙者としたことが初めての異世界で浮足立ってしまっていたでござるか。


「おーーい!! 何やってんだよ!! あのクエストは俺様が狙っているって言っただろうが。なんで一番最初にきて確保しておかないんだ!!」


「す、すいません。確実に一番乗りだと思ったのですが、僕が来た時にはすでになくなっていて……申し訳ありません!!」


「一番じゃなかったからなくなってたんだろうが!! しょうもねぇ言い訳してんじぇねぇぞ!! このゴミが!!」


「は、はい!! 僕はゴミです!!」


 なんて頭の悪い会話なのでござろうか。もしかして冒険者とはバカの集団なのではござらんだろうな。昨日拙者に付きまとってきたストーカー男も大概でござったが、こっちもこっちでひどいでござるよ。周囲にはそれなりに人がいるというのに大声を出して喧嘩なんて、大人のすることではないでござるよ。


「ちっ、昨日もう少し早く戻ってきてればクエストを抑えれていたんだがなぁ。まったく、使えねぇ奴をパーティに持つと大変だぜ」


「すいません!! もう二度と同じミスはしないので許してください!!」


「お前!! これで5回目だろうが!! ふざけてんのか!! あれ? いや、4回目だったか?」


 どっちも覚えていないのでござったら、もういいではござらんか。はあ、朝からひどいバカを見させられたでござるよ。


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