21話
はあ、宿が見つからないでござる。もしかして見当違いの場所をさまよっているのではござらんか? さっきから飲食店ばかり目につくでござる。確かにお腹は空いているでござるが、今は金を持ち合わせていないでござるから食べようにも食べれないでござるよ。
この男に聞きたいところではあるが、ここまで来て最終的に聞いてしまうなんてダサすぎるでござる。もうこうなったらやけでござるよ。絶対に自分で見つけるでござる!!
「よーし、このあたりにはないでござるな。次は、あっちに行ってみるとするでござるよ」
「もうそろそろ諦めませんか? かれこれ1時間以上町を歩いてますよ。俺に聞いたらすぐに宿なんて見つかるのに非効率ですって。ほら、これだけ食べ物ばかり見てたらお腹も空いてきたんじゃないですか? 諦めて俺に頼りましょうよ」
少し静かになったと思っていたらこれでござるよ。この調子ならば、もっと時間がかかるのだと思っているはずでござる。甘いでござるよ、拙者にそのような常識は通用しないでござる。いざとなれば、本気ダッシュで駆け抜けて宿を見つかるでござるよ。その際にちょっと周囲に被害が出てしまうかもしれないでござるが、それはご愛敬でござるな。
むきになっている拙者は男に頼る気なんて微塵も湧いていないでござる。
むしろこれはチャンスなのではござらんか? この男も拙者が無駄な時間を使っていることにイライラし始める時間帯でござろう。これならば、男のほうが先に諦めてどこかへ行ってしまうんじゃないでござるか? そうなれば、宿の場所は聞くことはできなくはなるでござるが、結果的に勝ちと言ってもいいでござろう。いつまでも付きまとってくる邪魔な男を排除できるのでござるから、これくらいの手間は仕方がないでござるよ。
「あっちから宿がありそうな気配を感じるでござる。いざ、向かうでござるよ」
「え? ああ……待ってくださいよぉ」
とことん根競べに付き合うでござるよ。拙者の精神力を見せつけるときがきたでござるな。この男も限界は近いでござる。これは楽勝でござるな。すぐに勝負を決めてしまうのも味気ないので、もう少し宿を見つけれずにさまようことにするでござる。
今度拙者がやってきた場所は、武器屋、防具屋が並ぶ通りでござった。
これは、宿がありそうな気配がまったくしないでござるよ。適当に気配がとか言ってこっちへ向かってきたのはいいでござるが、またもや見当違いの方向へ向かっていたということでござるな。やらかしでござるよ。
大体なんで拙者は馬鹿正直にこいつを伴って歩いているのでござるか? 拙者のスピードならこんな雑魚すぐにまくことができるはずでござるよ。なんでこんな簡単なことに今まで気が付かなかったのでござるか……つくづく大事なところで役に立たない頭でござるよ。
「ああーー!! あんなところに何かが!!」
「え? 急に大声を出してどうしたんですか? はい? 特に変わったものなんてないですけど? え? 師匠? どこ行ったんですか? 師匠ーーー!!」
叫んだ瞬間に身を隠すように路地裏へと滑り込んだでござる。
ここまでかかった時間はゼロコンマ1秒以下、常人では目で追うことすら不可能な超スピードでござる。当然、この男も拙者のフェイクに騙されて一度視線を外してしまっているでござる。もう視線を戻すころには拙者は消えているでござるよ。一瞬の油断がすべてを終わらせてしまうのでござるよ。これで、学ぶといいでござる。おっと、近くにいては見つかってしまう可能性があるでござるな、どうせこのあたりに宿は何でござるから、すぐに移動するでござる。
「本当に無駄な時間を過ごしてしまったでござる。早く宿を見つけるでござるかな」
周囲に被害が出ない程度のスピードで路地裏をかける。
これくらいのスピードであれば、周囲への被害は出ないでござろう。壁を風圧で破壊して回ったりしたらどうなってしまうことか、この町が崩壊してしまって次の町を探す羽目になるでござるな。それはちょっと勘弁でござる。今から新しい町を探して宿を見つけるとなると、どうしても時間がかかってしまうでござるよ。そんなことをするほど拙者には余力は残されていないでござる。実際には、肉体的な疲れなどはあまりないのでござるが、謎の空間に閉じ込められたりと、精神的に消耗することばかり起きているので、一刻も早く横になって眠りたいでござる。
「はぁ、もう疲れてきたでござるな。こんなに精神的に疲れたのはいつぶりでござろうか? 修行をしている時ですらここまでの疲労感はなかなかなかったでござるよ」
これも全部あのじいのせいでござるよ。謎の空間で精神をすり減らされていなかったら拙者もピンピンしているところでござるが、流石にそうもいかないでござるよ。疲労が来ているでござる。
「路地裏を進んでいても仕方がないでござるな。早く、通りに出るでござる」
路地裏から、メインの通りに出る通路を探していると、すぐに見つかった。




